88 / 249
第3章 領地の防御
88ー高級品
しおりを挟む
「えッ!? 何あれ!?」
「魔物だ! 木に擬態してるんだ! トレントだ!」
霧島に言われ、周りの木を見る。なんだ? 葉が不自然な位青々としている。その一帯がやけに目につく。そして、その不自然な木々に目を凝らす。
「ココ、分かるか?」
「ええ、不自然だわ」
「そこ目掛けてウインドカッターしてみ?」
「分かった。ウインドカッター!」
風の刃が、不自然に見える木々目掛けて飛ぶ。同行していた魔術師団もウインドカッターを飛ばす。領主隊も他の不自然な木々に目掛けて矢を射る。
すると、その瞬間に変化が起こった。幹が撓み、枝を振り乱し葉を散らせながら動き始めた。幹の柄だと思っていたものに、不気味な顔が浮かび上がっていく。つり上がった目の奥に鈍い光が灯り、こちらを睨みつけている。口と思われる部分は大きく裂け、人を飲み込もうとしている。
いつの間にかそのおぞましい木々に囲まれていた。盗賊団は散らばって逃げようと走る。だが、クネクネと動く枝に絡め取られ宙吊りにされている。
「ぅげッ!! こわっ! 初めて見た!」
「あいつら蜂蜜やメープルシロップを落とすんだ!」
「えッ!? ラッキーじゃない!」
「ココ、だから燃やしたら駄目だぞ!」
「お嬢! 近寄ったらいかん! 不用意に近寄ると枝に絡め取られるぞ!」
「分かった! ウインドカッター!」
風の刃が複数飛ぶが傷もついていない。恐ろしく堅いんだ。ウインドカッターじゃ埒が明かない。
次から次へと叩きつけてくる鞭の様な枝や根の攻撃を領主隊は軽々と躱しながら斬りつけている。普段から魔物と対峙しているから、慣れているんだ。だが、盗賊団はそうはいかない。次々と枝に捕らえられ裂けた大きな口へと吸いこまれていく。人を食っているのか!?
霧島が魔法を飛ばし、枝を切る。
「ココ、ボーッとしてんじゃねーぞ! 威力が足りねー!」
「分かった! サキ、リュウ、いくぞッ!」
「はいぃ!」
「おうッス!」
この種類の魔物には火属性魔法が有効だ。だが、森の中では避けたい。森を焼いてしまってはダメだ。
風属性魔法なら咲や隆も使える。3人でタイミングを合わせ、風属性魔法の上級魔法で攻撃だ。
「いくぞッ! せぇーのッ!」
「「「ウインドインパルス!!!」」」
風の衝撃波が飛んだ。普通は吹き飛ぶんだが、根を張っているのか吹き飛ばず、そのままトレントはブルブルと震え出し気絶状態になり動かなくなった。
「おしッ! お嬢! よくやったぜッ!」
と、シゲ爺が先頭切って走って行く。動かなくなったらこっちのもんだ。隊員達もそれに続き、皆でトレントに斬り付ける。
すると、聞くに堪えない叫び声をあげながらシナシナと木全体が枯れていき動かなくなった。
トレントの枝に捕らわれていた男達も気絶している。隊員達が素早く捕縛していく。
そして、トレントが絶命した後には……
「やだッ! 本当に落ちてる!」
「だから言ったじゃねーか!」
「ねえ、サキ。拾っていきましょう!」
「はいぃ!」
そうさ、霧島が言っていた通り、蜂蜜やメープルシロップが彼方此方に落ちていたんだ。
やったよ! この世界はまだ蜂蜜やメープルシロップて高級品なんだよ。
「お嬢さまぁ、戻ったらパンケーキが食べたいですぅ」
「いいわね! メープルシロップをたっぷりとかけて食べましょう」
「はいぃ!」
しかし、魔物からのドロップ品なのに、ちゃんとガラス容器に入っているのは何ともご都合主義だな。
「なあなあ、ココ。それ美味いのか?」
霧島がふわりふわりと浮きながら聞いてきた。
「え? キリシマ、何の事?」
「だからさぁ、パンケーキだよ」
「美味しいわよ。バターを塗ってメープルシロップをかけて食べるの」
「おぉ! 俺も食べたいぞ!」
「ふふふ。戻ったら焼いてもらいましょう」
「おう!」
なんだ? 他にも落ちているぞ。
「メープルシロップを落とすのが、メープルトレント。蜂蜜を落とすのが、ハニートレント。キノコを落とすのが、マッシュトレントだ。そのキノコは回復薬になるんだ。しかも上位回復薬になるぞ」
「え!? 凄いじゃん!」
全部拾おう。拾って帰ろう!
隊員達は盗賊団を縛りあげている。俺達はしっかりと蜂蜜とメープルシロップ、回復薬になるキノコを拾う。さあ、帰ろうか。
「お嬢、このトレント材も高級品なんだぞ!」
と言いながら、両手いっぱいにトレントの枝を抱えて引き摺っている。
「シゲ爺、そうなの?」
「ああ、こいつは捨てるところがないんだ。滅多にお目に掛かれないから、なかなか手に入らねーんだ。堅くて強いんだぞ。ワシの杖もトレント材だ」
「へぇ~、そうなの?」
それでガンガン魔物を殴っても平気なんだ。
「ココ。俺が全部持って帰ってやるぜ!」
そう言って、キリシマが倒れたトレントに手を翳した。
すると、あら不思議。シュンッと消えちゃったよ。ああそうか、これはアレだ。忘れてたよ。普段使わないからさぁ。
「俺はさぁ、これでもドラゴンだぜ。ココ達より魔力量は多いんだ」
それは小さくなる前だろうよ? 今は小さいトカゲさんだ。
「魔物だ! 木に擬態してるんだ! トレントだ!」
霧島に言われ、周りの木を見る。なんだ? 葉が不自然な位青々としている。その一帯がやけに目につく。そして、その不自然な木々に目を凝らす。
「ココ、分かるか?」
「ええ、不自然だわ」
「そこ目掛けてウインドカッターしてみ?」
「分かった。ウインドカッター!」
風の刃が、不自然に見える木々目掛けて飛ぶ。同行していた魔術師団もウインドカッターを飛ばす。領主隊も他の不自然な木々に目掛けて矢を射る。
すると、その瞬間に変化が起こった。幹が撓み、枝を振り乱し葉を散らせながら動き始めた。幹の柄だと思っていたものに、不気味な顔が浮かび上がっていく。つり上がった目の奥に鈍い光が灯り、こちらを睨みつけている。口と思われる部分は大きく裂け、人を飲み込もうとしている。
いつの間にかそのおぞましい木々に囲まれていた。盗賊団は散らばって逃げようと走る。だが、クネクネと動く枝に絡め取られ宙吊りにされている。
「ぅげッ!! こわっ! 初めて見た!」
「あいつら蜂蜜やメープルシロップを落とすんだ!」
「えッ!? ラッキーじゃない!」
「ココ、だから燃やしたら駄目だぞ!」
「お嬢! 近寄ったらいかん! 不用意に近寄ると枝に絡め取られるぞ!」
「分かった! ウインドカッター!」
風の刃が複数飛ぶが傷もついていない。恐ろしく堅いんだ。ウインドカッターじゃ埒が明かない。
次から次へと叩きつけてくる鞭の様な枝や根の攻撃を領主隊は軽々と躱しながら斬りつけている。普段から魔物と対峙しているから、慣れているんだ。だが、盗賊団はそうはいかない。次々と枝に捕らえられ裂けた大きな口へと吸いこまれていく。人を食っているのか!?
霧島が魔法を飛ばし、枝を切る。
「ココ、ボーッとしてんじゃねーぞ! 威力が足りねー!」
「分かった! サキ、リュウ、いくぞッ!」
「はいぃ!」
「おうッス!」
この種類の魔物には火属性魔法が有効だ。だが、森の中では避けたい。森を焼いてしまってはダメだ。
風属性魔法なら咲や隆も使える。3人でタイミングを合わせ、風属性魔法の上級魔法で攻撃だ。
「いくぞッ! せぇーのッ!」
「「「ウインドインパルス!!!」」」
風の衝撃波が飛んだ。普通は吹き飛ぶんだが、根を張っているのか吹き飛ばず、そのままトレントはブルブルと震え出し気絶状態になり動かなくなった。
「おしッ! お嬢! よくやったぜッ!」
と、シゲ爺が先頭切って走って行く。動かなくなったらこっちのもんだ。隊員達もそれに続き、皆でトレントに斬り付ける。
すると、聞くに堪えない叫び声をあげながらシナシナと木全体が枯れていき動かなくなった。
トレントの枝に捕らわれていた男達も気絶している。隊員達が素早く捕縛していく。
そして、トレントが絶命した後には……
「やだッ! 本当に落ちてる!」
「だから言ったじゃねーか!」
「ねえ、サキ。拾っていきましょう!」
「はいぃ!」
そうさ、霧島が言っていた通り、蜂蜜やメープルシロップが彼方此方に落ちていたんだ。
やったよ! この世界はまだ蜂蜜やメープルシロップて高級品なんだよ。
「お嬢さまぁ、戻ったらパンケーキが食べたいですぅ」
「いいわね! メープルシロップをたっぷりとかけて食べましょう」
「はいぃ!」
しかし、魔物からのドロップ品なのに、ちゃんとガラス容器に入っているのは何ともご都合主義だな。
「なあなあ、ココ。それ美味いのか?」
霧島がふわりふわりと浮きながら聞いてきた。
「え? キリシマ、何の事?」
「だからさぁ、パンケーキだよ」
「美味しいわよ。バターを塗ってメープルシロップをかけて食べるの」
「おぉ! 俺も食べたいぞ!」
「ふふふ。戻ったら焼いてもらいましょう」
「おう!」
なんだ? 他にも落ちているぞ。
「メープルシロップを落とすのが、メープルトレント。蜂蜜を落とすのが、ハニートレント。キノコを落とすのが、マッシュトレントだ。そのキノコは回復薬になるんだ。しかも上位回復薬になるぞ」
「え!? 凄いじゃん!」
全部拾おう。拾って帰ろう!
隊員達は盗賊団を縛りあげている。俺達はしっかりと蜂蜜とメープルシロップ、回復薬になるキノコを拾う。さあ、帰ろうか。
「お嬢、このトレント材も高級品なんだぞ!」
と言いながら、両手いっぱいにトレントの枝を抱えて引き摺っている。
「シゲ爺、そうなの?」
「ああ、こいつは捨てるところがないんだ。滅多にお目に掛かれないから、なかなか手に入らねーんだ。堅くて強いんだぞ。ワシの杖もトレント材だ」
「へぇ~、そうなの?」
それでガンガン魔物を殴っても平気なんだ。
「ココ。俺が全部持って帰ってやるぜ!」
そう言って、キリシマが倒れたトレントに手を翳した。
すると、あら不思議。シュンッと消えちゃったよ。ああそうか、これはアレだ。忘れてたよ。普段使わないからさぁ。
「俺はさぁ、これでもドラゴンだぜ。ココ達より魔力量は多いんだ」
それは小さくなる前だろうよ? 今は小さいトカゲさんだ。
81
お気に入りに追加
2,978
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる