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第3章 領地の防御
76ー文字の一覧表
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先ずは、女性陣が使えるように大人が文字を覚える為のものだ。前世、俺は日本人だった。日本語、それは特殊なんだ。ひらがな、カタカナ、漢字と3種類を使い分けている。
この世界、それはない。日本人には馴染のあるローマ字の様な感じだ。母音と子音からなっていて、それを組み合わせる。だから、一覧表を作ってみた。
これを貼っておくのも良いな。
「ココ様、子供達にはこれの大きいものが良いですね。お教室に貼っておきたいでっす」
「先生、それなら言葉に関係する絵も一緒に描いてあると覚えやすくないですか?」
「なるほど、絵ですか。それは考えつきませんでした」
「子供なら絵の方が先に覚えてしまうでしょうけど」
「ですね。しかし、関連付けて覚えるのは良い事でっす」
と、言う事で子供用の一覧表も作った。咲に紙を何枚か糊付けして大きなものを作ってもらった。そこに、親方が作ってくれた鉛筆で下書きをし、その上から絵具で色をつけていく。水彩画はまた温かい感じがして良いんじゃないか? 可愛らしく、花の絵や兎の絵等を描いていく。
素朴な鉛筆に水彩絵の具が馴染んで良い感じだ。
「ココ様、お上手ですね~」
「ふふふ、ありがとうございます」
「ココ様にこの様な特技があるとは思いませんでした」
「特技って程ではありませんよ」
「いえ、本当にお上手でっす」
だって前世は絵本作家だからね。物語からイラストまで全部自分で考えて描いていたんだ。その頃の、経験が役に立った。
「ねえ、サキ。ちょっと大きめでしっかりした紙ってないかしら?」
「お嬢さまぁ、紙芝居ですねぇ」
「そうよ、いいアイデアでしょう?」
「はいぃ。探してきますぅ」
「ココ様、何です?」
「はい、大きな紙に物語の1シーンを絵で何枚か描くのです。その絵を見せながら、物語を読み聞かせてお話を進めるのですよ」
「それは斬新ですね!」
いや、斬新でも何でもないんだけど。
「複数の子供達みんなに同じ物語を話して聞かせられるのですね。それも、絵付きで」
「そうです。楽しそうでしょう?」
「ええ、とっても! 子供達が喜びそうでっす」
その後、咲が手ごろな紙を見つけてきたので、紙芝居も作った。子供の頃に話して聞かされる定番の物語を選んだ。この世界の創世記の様なものだ。内容はとっても簡単なものだけど。
子供達が楽しみながら覚えられる様に、絵の多い文字の本も作った。これで、覚えてくれると良いんだけどね。
作業場の女性陣には問答無用で覚えてもらう。大きめの一覧表を作業部屋に貼り、それの小さい物も渡して勉強してもらおう。
「これで、領地の識字率が上がりますよ」
「大人も覚えてくれると良いのですけど」
「そうですね。一覧表にすると分かり易いでっす。子供用は絵付きですね。とっても可愛らしいでっす」
結局、その日ずっと描いていた。ガラスペンが良い仕事をしてくれた。普通の黒いインクだけでなく、絵具でも使えるんだ。ペン先を水に浸すと直ぐに綺麗になる。そして、違う色が使える。これは便利だ。
クリスティー先生が何枚か持って帰った。どうするんだろう?
「お嬢さまぁ、クリスティー先生は孤児達にお勉強を教えているんですよぅ。ボランティアでぇ」
「そうなの? 知らなかった」
「だから、子供達に教えるのに使うんじゃないでしょうかぁ」
「なら、もっと色々渡したのに」
「ですよねぇ」
「先生、何も言わないから」
「ふふふぅ」
少し休憩だ、と思っていると母からお茶に誘われた。
「ココちゃん、あれは素敵だわ」
「母さま、あれって何ですか?」
「ペンよ、ガラスペン」
庭にある花に囲まれた四阿で母が優雅にお茶を飲みながら言った。なんだよ、母はもう知っているのか。
「私もロディにお願いして1本もらったの。とっても書きやすいわ」
「そうでしょう?」
「ええ、それにとっても綺麗」
「あれは職人さんのお陰です」
「ふふふ。ココちゃんは色んな事を考えているのね」
「母さま、そんな事ないです」
「あら、だって文字を覚える為の教材も作ったのでしょう?」
「教材という程のものではないです。作業場に来てくれている人達の中で文字の読めない人がいるんです。それで、困った事があったそうなんです。だからです」
「まあ、そうだったのね」
「失礼、僕もご一緒しても良いですか?」
「まあ、殿下。勿論ですわ」
おや、珍しく王子が自分からやって来た。控えていた咲が王子にお茶を出す。
「ココ嬢、驚いたよ」
「え? 何ですか?」
「ペンだよ」
もう王子まで知っているのかよ。
「ロディに頼んで僕ももらったんだ。とっても書きやすいね」
「ふふふ、今丁度その話をしていたところなんですよ」
「では、夫人も?」
「ええ。私も1本もらいましたわ」
「よく、ガラスでペンを作ろうと思いついたね」
「でも、良いでしょう?」
「ああ、今まで使っていたものよりずっと良いよ」
「あら? 殿下それよりキリシマはどうしました?」
「ああ、領主隊の人達と一緒にいるよ。裏の鍛練場じゃないかな?」
もう、霧島は何をやってんだか。
「ユリシス殿と気が合ったみたいなんだ」
「あぁ~……」
そりゃ、あの父の父だからな。気も合うだろうよ。
「そうだわ、ココちゃん。明日にでも魔石が届くとかロディが言っていたわ」
「母さま、そうですか!」
「今度は魔石に付与するの?」
「はい、殿下。クリスティー先生に教えてもらわないとですけど」
「あれ? 今日もクリスティー先生いらしてなかったかな?」
「はい。さっきまで一緒でしたよ」
「そうなんだ」
「クリスティー先生はココちゃんがお気に入りだから」
「母さま、違いますよ。絵本を作っているのを見てらしたんです」
「絵本?」
「ココ嬢、絵本って何かな?」
と、俺はまた絵本がどんなものなのかを話して聞かせた。
この世界、それはない。日本人には馴染のあるローマ字の様な感じだ。母音と子音からなっていて、それを組み合わせる。だから、一覧表を作ってみた。
これを貼っておくのも良いな。
「ココ様、子供達にはこれの大きいものが良いですね。お教室に貼っておきたいでっす」
「先生、それなら言葉に関係する絵も一緒に描いてあると覚えやすくないですか?」
「なるほど、絵ですか。それは考えつきませんでした」
「子供なら絵の方が先に覚えてしまうでしょうけど」
「ですね。しかし、関連付けて覚えるのは良い事でっす」
と、言う事で子供用の一覧表も作った。咲に紙を何枚か糊付けして大きなものを作ってもらった。そこに、親方が作ってくれた鉛筆で下書きをし、その上から絵具で色をつけていく。水彩画はまた温かい感じがして良いんじゃないか? 可愛らしく、花の絵や兎の絵等を描いていく。
素朴な鉛筆に水彩絵の具が馴染んで良い感じだ。
「ココ様、お上手ですね~」
「ふふふ、ありがとうございます」
「ココ様にこの様な特技があるとは思いませんでした」
「特技って程ではありませんよ」
「いえ、本当にお上手でっす」
だって前世は絵本作家だからね。物語からイラストまで全部自分で考えて描いていたんだ。その頃の、経験が役に立った。
「ねえ、サキ。ちょっと大きめでしっかりした紙ってないかしら?」
「お嬢さまぁ、紙芝居ですねぇ」
「そうよ、いいアイデアでしょう?」
「はいぃ。探してきますぅ」
「ココ様、何です?」
「はい、大きな紙に物語の1シーンを絵で何枚か描くのです。その絵を見せながら、物語を読み聞かせてお話を進めるのですよ」
「それは斬新ですね!」
いや、斬新でも何でもないんだけど。
「複数の子供達みんなに同じ物語を話して聞かせられるのですね。それも、絵付きで」
「そうです。楽しそうでしょう?」
「ええ、とっても! 子供達が喜びそうでっす」
その後、咲が手ごろな紙を見つけてきたので、紙芝居も作った。子供の頃に話して聞かされる定番の物語を選んだ。この世界の創世記の様なものだ。内容はとっても簡単なものだけど。
子供達が楽しみながら覚えられる様に、絵の多い文字の本も作った。これで、覚えてくれると良いんだけどね。
作業場の女性陣には問答無用で覚えてもらう。大きめの一覧表を作業部屋に貼り、それの小さい物も渡して勉強してもらおう。
「これで、領地の識字率が上がりますよ」
「大人も覚えてくれると良いのですけど」
「そうですね。一覧表にすると分かり易いでっす。子供用は絵付きですね。とっても可愛らしいでっす」
結局、その日ずっと描いていた。ガラスペンが良い仕事をしてくれた。普通の黒いインクだけでなく、絵具でも使えるんだ。ペン先を水に浸すと直ぐに綺麗になる。そして、違う色が使える。これは便利だ。
クリスティー先生が何枚か持って帰った。どうするんだろう?
「お嬢さまぁ、クリスティー先生は孤児達にお勉強を教えているんですよぅ。ボランティアでぇ」
「そうなの? 知らなかった」
「だから、子供達に教えるのに使うんじゃないでしょうかぁ」
「なら、もっと色々渡したのに」
「ですよねぇ」
「先生、何も言わないから」
「ふふふぅ」
少し休憩だ、と思っていると母からお茶に誘われた。
「ココちゃん、あれは素敵だわ」
「母さま、あれって何ですか?」
「ペンよ、ガラスペン」
庭にある花に囲まれた四阿で母が優雅にお茶を飲みながら言った。なんだよ、母はもう知っているのか。
「私もロディにお願いして1本もらったの。とっても書きやすいわ」
「そうでしょう?」
「ええ、それにとっても綺麗」
「あれは職人さんのお陰です」
「ふふふ。ココちゃんは色んな事を考えているのね」
「母さま、そんな事ないです」
「あら、だって文字を覚える為の教材も作ったのでしょう?」
「教材という程のものではないです。作業場に来てくれている人達の中で文字の読めない人がいるんです。それで、困った事があったそうなんです。だからです」
「まあ、そうだったのね」
「失礼、僕もご一緒しても良いですか?」
「まあ、殿下。勿論ですわ」
おや、珍しく王子が自分からやって来た。控えていた咲が王子にお茶を出す。
「ココ嬢、驚いたよ」
「え? 何ですか?」
「ペンだよ」
もう王子まで知っているのかよ。
「ロディに頼んで僕ももらったんだ。とっても書きやすいね」
「ふふふ、今丁度その話をしていたところなんですよ」
「では、夫人も?」
「ええ。私も1本もらいましたわ」
「よく、ガラスでペンを作ろうと思いついたね」
「でも、良いでしょう?」
「ああ、今まで使っていたものよりずっと良いよ」
「あら? 殿下それよりキリシマはどうしました?」
「ああ、領主隊の人達と一緒にいるよ。裏の鍛練場じゃないかな?」
もう、霧島は何をやってんだか。
「ユリシス殿と気が合ったみたいなんだ」
「あぁ~……」
そりゃ、あの父の父だからな。気も合うだろうよ。
「そうだわ、ココちゃん。明日にでも魔石が届くとかロディが言っていたわ」
「母さま、そうですか!」
「今度は魔石に付与するの?」
「はい、殿下。クリスティー先生に教えてもらわないとですけど」
「あれ? 今日もクリスティー先生いらしてなかったかな?」
「はい。さっきまで一緒でしたよ」
「そうなんだ」
「クリスティー先生はココちゃんがお気に入りだから」
「母さま、違いますよ。絵本を作っているのを見てらしたんです」
「絵本?」
「ココ嬢、絵本って何かな?」
と、俺はまた絵本がどんなものなのかを話して聞かせた。
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