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第3章 領地の防御
69ー壊した魔法陣
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「え!? 魔法陣ですか!?」
「はい、頂いたアップルパイの下にありました」
「私は、何も知りません!」
司祭が言うには、シスターが焼いたアップルパイを手土産に持ってきてくれたらしい。『アップルパイです』と手渡されたバスケットをそのまま持ってきただけだった。
じゃあ、どのタイミングで魔法陣があったのかだ。
ロディ兄の従者であるランスが司教様、司祭様と一緒に教会へ調べに行く事になった。
そして、沢山のスライムの後には……
「ココ、棚から牡丹餅だ!」
と、言っているのはロディ兄だ。喜んでいる。
スライムを倒した後には沢山の小さな魔石が落ちていたんだ。そりゃそうだ。魔物を倒したら魔石を落とす。スライムだからそんなに大きくはないが、でも丁度付与する魔石を手配していたところだ。
「兄さま、この魔石も使えるのですか?」
「ああ。スライムの魔石だから小さいけどね。1個1個に何かを付与する事は可能だよ」
「ラッキーでしたね」
「ラッキーと言っていいのかどうかだけどね」
その魔石を回収する為に、メイドのお姉さん達が邸の中を隅々まで掃いて集めている。
メイドのお姉さん達、今日は大活躍だよ。ポヨヨンポヨヨンと攻撃してくるスライムを容赦なく倒して、その後片付けをしながら魔石を集めてくれている。
「制服が汚れちゃいました~」
「あたしも~」
「スカートがね~」
なんて、言っている。呑気なのか余裕なのか。
「ココー!!」
はい、この大きな声はユリシスじーちゃんだ。
「ユリシスお祖父さま、大丈夫でしたか?」
「当たり前だ! スライムごとき、どうってことないぞッ!」
「ふふふ。お義父さま、お茶でも入れましょう」
母の言葉でメイドさんも動きだす。
あ、そうだ。忘れてた。
「母さま、ちょっと殿下の様子を見てきますね」
「ええ、一緒にお茶しましょうとお誘いしてちょうだい」
「はい、分かりました」
そうだ、すっかり忘れてたよ。ま、大丈夫だろうけどさ。
「ココー!! やっと俺の出番か!?」
キリシマだ。元気だな。
「ココ嬢、何だったんだい?」
「スライムが大量に出て来ていたんです。もう大丈夫ですよ。母さまが一緒にお茶をと言ってます」
「そうなんだ。皆、無事なんだね?」
「スライムなんかには負けませんよ」
「ハハハ、そうだろうけど」
「なんだよー! 俺の出番ないじゃんかー!」
「キリシマはしっかり殿下を守ってくれていたじゃない」
「そうじゃなくてさー! 俺の力をだなー」
ハハハ、霧島の出番はなかったな。
「スライムなんて相手にもならないでしょう?」
「まぁ~な~、俺ならアッと言う間だぜ!」
はいはい、分かったよ。
さて、皆でティータイムだ。ほっこりするね……なんて事はなく。
「うんッ! うまいなッ!」
大きな声のじーちゃんがいる。父そっくりだ。
「で、ココがぶっ壊した魔法陣はどうなったんだ?」
と、霧島が聞いてきた。何気に博識なんだよな。やはりドラゴンだからなのか?
「さっき、クリスティー先生に持って行ってもらったのよ」
「何? キリシマ、何か分かるの?」
「いや、分かんないけどさ。手掛かりってそれだけなんだろ?」
「そうね」
「ココがぶっ壊した……」
あ、何度も『ぶっ壊した』て、言わなくてもいいじゃん。だって、壊せって言われたんだからさ。
「ねえ、キリシマ。どうして、魔法陣からスライムが出てきたの?」
「そりゃあ、ココ。決まってるじゃん。魔法陣の向こうからスライムを送ってる奴がいるんだよ」
「え? そうなの?」
「ココはまだ魔法陣を知らないのか?」
「ええ、知らないわ」
そうか、と言って霧島が教えてくれた。
魔法陣とは、魔法を使うためにあらかじめ床などに描いておく図形。もしくは大規模な特定の魔法使用時に浮かび上がる図形の事を言う。その魔法陣に魔力を流して初めて魔法が発動する。
魔法陣と言えば何か魔法を発動するか、召喚するのが普通なんだそうだ。だが、今回の場合は召喚主が此処にはいない。魔力を流す人もいない。と、言う事は……
「対の魔法陣がどこかにあるんだ。そこに魔力を流しスライムを召喚してこっちに出しているんだよ」
「そうなの?」
何か面倒そうだね。
「そりゃそうさ。この邸に結界を張ってあるからだろ」
「それは分かるけど、どうしてスライムなのかしら?」
「まあ、最弱と言われているからな」
「でしょう?」
だって、どうせならもっと強い魔物にしないか? そう思うんだけど。
「ココ、魔法陣で魔物を送るのにも魔力が必要なんだぜ。分かるか?」
「分かっているわよ。でも、スライムよ?」
「だからだよ。もっと強い魔物を送ろうとしたらそれなりの魔力が必要なんだ。スライムでもあれだけの数を送るのにはそこそこの魔力量が必要だろうな」
「ココの魔力量は普通じゃないからね」
そっか、そんな事もあるんだ。だから、敢えてのスライムなのか? あれだけスライムを捕まえるのも大変だぜ?
「でも、いくら数を送れてもスライムだとどうにもならないわ」
「その通りだな。一体何がしたいんだか」
「でも、これでハッキリした事がある」
「ロディ兄さま、何ですか?」
「相手はうちに結界が張ってあるのを知っているんだ」
なるほど、だからこんな面倒な事をしてきたのだろう。
「ココ、だからね。うちの情報を掴んでいるって事だよ」
「あ……兄さま」
「はい、頂いたアップルパイの下にありました」
「私は、何も知りません!」
司祭が言うには、シスターが焼いたアップルパイを手土産に持ってきてくれたらしい。『アップルパイです』と手渡されたバスケットをそのまま持ってきただけだった。
じゃあ、どのタイミングで魔法陣があったのかだ。
ロディ兄の従者であるランスが司教様、司祭様と一緒に教会へ調べに行く事になった。
そして、沢山のスライムの後には……
「ココ、棚から牡丹餅だ!」
と、言っているのはロディ兄だ。喜んでいる。
スライムを倒した後には沢山の小さな魔石が落ちていたんだ。そりゃそうだ。魔物を倒したら魔石を落とす。スライムだからそんなに大きくはないが、でも丁度付与する魔石を手配していたところだ。
「兄さま、この魔石も使えるのですか?」
「ああ。スライムの魔石だから小さいけどね。1個1個に何かを付与する事は可能だよ」
「ラッキーでしたね」
「ラッキーと言っていいのかどうかだけどね」
その魔石を回収する為に、メイドのお姉さん達が邸の中を隅々まで掃いて集めている。
メイドのお姉さん達、今日は大活躍だよ。ポヨヨンポヨヨンと攻撃してくるスライムを容赦なく倒して、その後片付けをしながら魔石を集めてくれている。
「制服が汚れちゃいました~」
「あたしも~」
「スカートがね~」
なんて、言っている。呑気なのか余裕なのか。
「ココー!!」
はい、この大きな声はユリシスじーちゃんだ。
「ユリシスお祖父さま、大丈夫でしたか?」
「当たり前だ! スライムごとき、どうってことないぞッ!」
「ふふふ。お義父さま、お茶でも入れましょう」
母の言葉でメイドさんも動きだす。
あ、そうだ。忘れてた。
「母さま、ちょっと殿下の様子を見てきますね」
「ええ、一緒にお茶しましょうとお誘いしてちょうだい」
「はい、分かりました」
そうだ、すっかり忘れてたよ。ま、大丈夫だろうけどさ。
「ココー!! やっと俺の出番か!?」
キリシマだ。元気だな。
「ココ嬢、何だったんだい?」
「スライムが大量に出て来ていたんです。もう大丈夫ですよ。母さまが一緒にお茶をと言ってます」
「そうなんだ。皆、無事なんだね?」
「スライムなんかには負けませんよ」
「ハハハ、そうだろうけど」
「なんだよー! 俺の出番ないじゃんかー!」
「キリシマはしっかり殿下を守ってくれていたじゃない」
「そうじゃなくてさー! 俺の力をだなー」
ハハハ、霧島の出番はなかったな。
「スライムなんて相手にもならないでしょう?」
「まぁ~な~、俺ならアッと言う間だぜ!」
はいはい、分かったよ。
さて、皆でティータイムだ。ほっこりするね……なんて事はなく。
「うんッ! うまいなッ!」
大きな声のじーちゃんがいる。父そっくりだ。
「で、ココがぶっ壊した魔法陣はどうなったんだ?」
と、霧島が聞いてきた。何気に博識なんだよな。やはりドラゴンだからなのか?
「さっき、クリスティー先生に持って行ってもらったのよ」
「何? キリシマ、何か分かるの?」
「いや、分かんないけどさ。手掛かりってそれだけなんだろ?」
「そうね」
「ココがぶっ壊した……」
あ、何度も『ぶっ壊した』て、言わなくてもいいじゃん。だって、壊せって言われたんだからさ。
「ねえ、キリシマ。どうして、魔法陣からスライムが出てきたの?」
「そりゃあ、ココ。決まってるじゃん。魔法陣の向こうからスライムを送ってる奴がいるんだよ」
「え? そうなの?」
「ココはまだ魔法陣を知らないのか?」
「ええ、知らないわ」
そうか、と言って霧島が教えてくれた。
魔法陣とは、魔法を使うためにあらかじめ床などに描いておく図形。もしくは大規模な特定の魔法使用時に浮かび上がる図形の事を言う。その魔法陣に魔力を流して初めて魔法が発動する。
魔法陣と言えば何か魔法を発動するか、召喚するのが普通なんだそうだ。だが、今回の場合は召喚主が此処にはいない。魔力を流す人もいない。と、言う事は……
「対の魔法陣がどこかにあるんだ。そこに魔力を流しスライムを召喚してこっちに出しているんだよ」
「そうなの?」
何か面倒そうだね。
「そりゃそうさ。この邸に結界を張ってあるからだろ」
「それは分かるけど、どうしてスライムなのかしら?」
「まあ、最弱と言われているからな」
「でしょう?」
だって、どうせならもっと強い魔物にしないか? そう思うんだけど。
「ココ、魔法陣で魔物を送るのにも魔力が必要なんだぜ。分かるか?」
「分かっているわよ。でも、スライムよ?」
「だからだよ。もっと強い魔物を送ろうとしたらそれなりの魔力が必要なんだ。スライムでもあれだけの数を送るのにはそこそこの魔力量が必要だろうな」
「ココの魔力量は普通じゃないからね」
そっか、そんな事もあるんだ。だから、敢えてのスライムなのか? あれだけスライムを捕まえるのも大変だぜ?
「でも、いくら数を送れてもスライムだとどうにもならないわ」
「その通りだな。一体何がしたいんだか」
「でも、これでハッキリした事がある」
「ロディ兄さま、何ですか?」
「相手はうちに結界が張ってあるのを知っているんだ」
なるほど、だからこんな面倒な事をしてきたのだろう。
「ココ、だからね。うちの情報を掴んでいるって事だよ」
「あ……兄さま」
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