おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

文字の大きさ
上 下
62 / 249
第3章 領地の防御

62ー霧島は繊細だった?

しおりを挟む
 クリスティー先生が言うには、俺は魔力量が多いのだそうだ。まだ8歳だが、成人よりも多いらしい。その膨大な魔力量を俺は上手く制御できていない。だから、分かる人が見ると魔力がだだ漏れ状態なのだそうだ。
 しかし、この歳で魔法を使えるのもその膨大な魔力量のお陰だ。ロディ兄が以前言っていた様に、力業で魔法を発動させていた訳だ。クリスティー先生に魔力操作を教えてもらって必要最低限の魔力での発動を目指す。

「ココ様の魔力量は異常なのですよ。人なのにエルフ並みでっす」

 異常とか言われてしまったけど、本人はまったく自覚がないから分からない。

「ですから、しっかり魔力操作を覚えましょうね」
「はい、クリスティー先生」
「フィルくんはお上手ですよ。いい感じです。フィルくんの適性は……主に火と土ですね」

 ん? 主にとは?

「聖属性も少しあるみたいですよ。頑張れば軽いヒール位ならできるでしょうね」
「そうなのですか!? 亡くなった母が聖属性魔法を使えたので、僕も使えたら嬉しいです」
「なるほど。属性は遺伝する場合が多いですからね。お母様からのプレゼントですねッ」

 そうなのか。それはちょっと嬉しいな。良い話だ。俺は両親両方からもらったらしいな。

「ココ様は普通ではありませんからね」

 また酷い言い草だ。

「魔力操作を覚えたら無敵ですよ。それこそドラゴンでも来ない限りはですけどねッ」
「クリスティー先生、やっぱりドラゴンは強いのですか?」
「はいッ。強いなんて言葉では足らない位にでっす。あれは、もはや天災レベルでっす。中でもエンシェントドラゴンはこの世のものとは思えませんねッ」

 ああ、やっぱそうなんだ。なのに霧島ったら。ちょっと可哀想だ。

「ああ、キリシマちゃんですか?」

 ちゃん!? キリシマちゃん!?

「彼の制限も半分くらいは解除できましたよ。充分に役に立つ事でしょう」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「はいッ。たいした事ではありませんよ。私達エルフの手に掛かればちょちょいのちょいでっす。しかし、あれ以上は解除しない方が宜しいでしょう」
「先せ……」
「クリスティー先生でっす」
「はい、クリスティー先生。それはどうしてですか?」
「だって、天災は嫌でしょう? まだ死にたくありませんよね?」

 なるほど、確かに。なんせ、ちょ~っと調子に乗って棲家を燃やしてしまった奴だからね。

「はいッ。ココ様、集中しましょう。目を瞑りましょうね~。はい、吸ってぇ~吐いてぇ~。はい、また吸ってぇ~吐いてぇ~。自分の内側を感じるのでっす~!」

 深呼吸じゃん! 瞑想なのか!? こんな感じで、ぬる~い授業を受けていたんだが、そこは流石にクリスティー先生だ。授業が終わる頃には段違いで魔力操作が出来る様になっていた。素晴らしい!

「な、だから俺が言っただろ? 魔法ならエルフだよ」
 
 霧島が両手でクッキーを持って、サクサクと食べながら自慢気に言う。テーブルの上に足を投げ出してちょこんと座っている。これは良いのか? テーブルの上だぞ?

「確かに、流石エルフだったわ」
「だろ? ココの中の魔力が整ってきてるのは俺でも分かるぜ」
「キリシマにそんな事が分かるの?」
「ココ、俺を何だと思ってんだ?」
「小汚いとかげ」
「なんだよー! ドラゴンだって言ってんじゃんか!」
「冗談よ。分かってるわよ」
「ほら、俺もさ。エルフに制限を解除してもらっただろ。だから、分かる様になったんだよ」
「そうなの? 良かったわね」
「え? 本当にそう思ってる?」
「思ってるわよ。キリシマには殿下を守ってもらわなきゃならないんだから」
「おう、任せな。けどなぁ……」
「なに? どうかしたの?」
「いや、話して良いのかな?」
「何よ、じれったいわね」
「まぁ、ココなら良いか」

 と、躊躇いながらキリシマが教えてくれた。
 どうやら、王子はまだ夜中にうなされて起きる事がよくあるらしい。
 それだけ、心に傷を負っているのだろう。一体どれだけ我慢してきたのか。
 霧島が心配するにはだ。それが原因で倒れたりしないかと言う事だ。
 
「人間は弱っちいからな。心が弱っていると身体も弱るだろう? 昼間は元気に笑っていても、あれだけ夜中にうなされているとな。ちょっと心配なんだよ」

 霧島って、優しいとこあるんだね。

「ココ、お前さぁ。俺を一体何だと思ってんだ?」

 また、それを聞くか?
 霧島は力の制限を少しでも解除してもらったからこそ気になるんだそうだ。
 それまでは、気付かなかった事も気付く。見えなかった事も見える様になった。だからだそうだ。

「何? 本当に限界っぽいの?」
「いや、そんな事はないと思うんだけどな。ただな……」

 このままだと、次に何か心に傷を負う様な事があった時に心配らしい。

「そんなになのね」
「そりゃそうだろう。唯一の味方だった実の母親が亡くなって、周りは敵だらけだったんだ。その上、迫害されていたんだろう?」
「そうね……」

 ちょっと、ロディ兄と母の耳にも入れておこうかな?

「うん、それがいいよ」
「そう。キリシマ、ありがとう」
「おうよ。守るって約束したからな」
「頼んだわよ」
「あたぼうよ!」

 意外と繊細な事に気がつくドラゴンだった。
 俺はその日のうちに、ロディ兄と母に報告しておいた。
 俺は前世で末っ子だった。今世もそうだ。それだけではないだろうが、家族には可愛がってもらっている。幸せな事なんだ。
 父とバルト兄はそろそろ王都に着いている頃だろう。王子の件はどうなったかなぁ?
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

処理中です...