おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

文字の大きさ
上 下
47 / 249
第2章 王都からの刺客!?

47ー鑑定式 1

しおりを挟む
「ようこそお越し下さいました」
「司祭様、本日はよろしくお願い致します」
「今日は父の名代で参りました」
「これはロディシス様。領主様のご都合が悪かったのでしょうか?」
「実は王都へ出かけております」
「そうでしたか。どうぞ、奥までお入りください」

 司祭に案内されて、俺達は教会の奥へと入って行く。
 辺境の地にある教会だが、なかなかしっかりとした教会なんだ。司祭だけでなく司教だって常駐している。裏には併設された孤児院だってある。
 中央通路を進んで行くと、広い聖堂がある。一番奥が主聖堂だ。俺と同じ8歳の子供達と付き添いの親達が既に集まっている。俺達は一番前に案内された。

「順にお呼び致しますのでお待ちください」

 案内してくれた司祭が一礼して奥に消えて行った。
 俺が転生した国、ヴェルムナンド王国では基本王国に住む8歳児は全員この鑑定式を受ける事になっている。鑑定式で自分に適性のある属性魔法を見てもらい、それから魔法の練習をするんだ。
 だが、現実はそうもいかない。王都では孤児がいる。孤児は教会に併設の孤児院で保護されている筈だ。しかし、現実は保護されていない孤児もいる。所謂、ストリートチルドレンだ。路上に住む孤児達。その子達は教会が認識していないが為に鑑定式を受けることができない。
 孤児でなくても、家が貧しい子達。態々鑑定式に出るよりも、家の仕事を手伝えと言う親もいる。
 うちの領地では100%の子供達が鑑定式を受ける。何故なら、孤児は領主邸で保護するか、教会に併設されている孤児院に入っている。また、鑑定式に出席する事が難しいほど生活に困っている者がいない。これは、代々の領主と領民達の努力の賜物だ。俺の両親だけでない。何代も前から領主と教会が一丸となって進めてきたからだ。
 両親を魔物に殺された子だっている。病で亡くした子だっている。それをいち早く発見して保護し領民皆で気にかけてきた。
 ここまで徹底できたのも領民達の協力と生活の安定があったからだ。
 辺境の地、魔物の危険がある地。だが、恵まれた地でもあるんだ。
 温暖な気候で作物が育ちやすい。薬草も栽培している。その上、王国唯一の港もある。
 国境に接した領地だからこそ、商人も入って来やすい。貿易も盛んなんだ。
 先日の様に、大量に魔物を討伐した時は領民達にも還元される。魔物の解体に領民達も携わる。解体したら部位ごとに分ける。食べられる部位は領民に分けられる。売れる部位は売り領地の収益になる。そんな収益は領民の為に使われる。街の衛生環境、治安、道の整備等。それに、孤児院への寄付。魔物の被害者への慰霊金。そんな事を徹底してやってきたからこそ、領民達は領主を信頼している。

「王都では考えられない事だ」
「街の規模が違いますわ」
「そうだけど……」
「子は宝ですのよ。未来の王国を担う子がいないとどうなります」
「その通りです」
「親がいなくても誰かが愛情を掛けているとその子の礎になりますわ。もし、道を逸れたとしても、戻る場所がないといけません。大人がそれを用意してあげないと。その為には先ず大人に余裕がないといけません。何かの犠牲の上に本当の幸せはないと思いますの」
「難しい事ですね」
「はい。一朝一夕にはできません」
「代々の辺境伯が努力してきた事なのですね」
「そうなのですよ」
「俺と姉貴も両親の顔を覚えていません」
「そうなのかい?」
「はいぃ。私たちが幼い頃に亡くなりましたからぁ。それから、旦那様と奥様のお世話になってますぅ」

 今世での咲と隆も親には恵まれなかったんだ。前世も、辛い思いをしていただろうに。
 咲と隆の両親は、咲が5歳、隆が3歳の時に起きたスタンピードで亡くなったんだ。
 スタンピード。何年かに1度、魔物が溢れて群れをなし暴走する事がある。それを、スタンピードと呼んでいる。原因は解明されていない。
 ダンジョンから増えた魔物が溢れだすのだとか、森の奥に突然変異か何かで飛び抜けた強さの魔物が現れた時に、その魔物から逃げようとして暴走するとも言われている。
 だが、一概にはそうも言えない。それらは、1つの要因ではあるが必ずしもそれとは言えないんだ。
 だから、領主隊はスタンピードが起こらない様、普段から見回り魔物を間引いている。冒険者と呼ばれる者達が森やダンジョンへ討伐に入る。それでも、スタンピードは予兆なく起こる。
 そのスタンピードで両親を亡くした咲と隆は俺の両親に保護された。それから教育を施され、何年か後に生まれた俺に付いてくれている。
 咲は子供の頃から、赤ん坊の俺を抱っこしおんぶし世話をしてくれたんだ。俺にしてみれば、乳母の様なものだ。
 前世の記憶を思い出し、関係性は少し違ってきたが。それでも、1番近い存在である事には変わりない。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

転生したら悪役令嬢の兄になったのですが、どうやら妹に執着されてます。そして何故か攻略対象からも溺愛されてます。

七彩 陽
ファンタジー
 異世界転生って主人公や何かしらイケメン体質でチートな感じじゃないの!?ゲームの中では全く名前すら聞いたことのないモブ。悪役令嬢の義兄クライヴだった。  しかしここは魔法もあるファンタジー世界!ダンジョンもあるんだって! ドキドキワクワクして、属性診断もしてもらったのにまさかの魔法使いこなせない!?  この世界を楽しみつつ、義妹が悪役にならないように後方支援すると決めたクライヴは、とにかく義妹を歪んだ性格にしないように寵愛することにした。 『乙女ゲームなんて関係ない、ハッピーエンドを目指すんだ!』と、はりきるのだが……。  実はヒロインも転生者!  クライヴはヒロインから攻略対象認定され、そのことに全く気付かず義妹は悪役令嬢まっしぐら!?  クライヴとヒロインによって、乙女ゲームは裏設定へと突入! 世界の破滅を防げるのか!?    そして何故か攻略対象(男)からも溺愛されて逃げられない!? 男なのにヒロインに!  異世界転生、痛快ラブコメディ。 どうぞよろしくお願いします!

処理中です...