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第2章 王都からの刺客!?

39ー母の実家

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 城の別宮から出る事も出来ず、食事も満足に与えられず、王子は毎日何を思って生きてきたのだろう。そんな日々、絶望しかないじゃないか。俺なら、我慢できない。とっくにカチコミかけてるわ。

「お嬢さまぁ、また怖い顔になってますよぅ」

 だってな。腹が立つんだよ!

「ココ嬢は優しいね。ありがとう」

 いや、王子殿下にありがとうと言ってもらう様な事は何もしてないけどね。

「昨夜捕らえた者達を、王都へ護送しなければならない。俺と父上とで行く事にした。ロディ、こっちは頼んだぞ」
「はい、兄上」
「母上、あちらにも寄ってきます」
「そうね、それがいいわ」

 バルト兄が言っている『あちら』とは、母の実家の事だ。
 ここで、母の実家を少し紹介しておこう。
 母の実家は、古くからある侯爵家だ。代々、国に仕えている由緒正しい文官家系。こう書いてしまうとお堅いイメージがあるが、そんな事もない。母の両親は穏やかで理知的な人達だ。うちとはタイプが正反対だな。
 その穏やかな人格で、様々な方面に伝手を持ち発言力もある。うちの裏ボスが母なら、王都に在住している貴族達の裏ボスは母の実家ではないかと俺は思っている。
 力ではなく、人脈と頭脳で仕切っているんだ。ああ、きっと2番目の兄はこの血筋だな。
 そんな、母の実家が父からの文を読み動き出していた。もちろん、誰が第3王子の迫害を先導していたのかだ。毒を盛った者の調べも同時に進めている事だろう。だが、その進捗を俺は知らない。
 その時だ。王子の後ろに控えていたメイドのソフィリアが突然倒れた。我慢していたのだろう。静かに足元から崩れ落ちた。

「ソフィ!」

 なんだ? どうした!?

「ソフィ! 大丈夫か!?」

 王子が慌てて歩み寄る。すかさず、脈を見ながら顔色を伺ううちの執事。万能だね。

「奥様、ココ様」

 え? 俺もか? 母はすべての回復魔法が使える。だから、呼んだのだろう。だが、俺もと言う事はだな。

「シーゲル、見るのね?」
「はい、お願いします」

 俺は鑑定眼でメイドのソフィリアを見た。

「母さま、アンチドーテです」
「まあ、また毒なの? 嫌だわね」

 いつもの如く呑気に話しながらもしっかりアンチドーテを施す。
 ソフィは毒に侵されていたんだ。一体いつの間に? 訳が分からない。

「顔色が戻ってきましたね。部屋へ運びます」
「サキ、一緒にお願い」
「はいぃ、お嬢さまぁ分かりましたぁ」

 執事がソフィリアをお姫様抱っこをして出て行った。しかしだ、どうしてソフィが毒なんだ?

「ココ、前の殿下の部屋を調べよう」
「はい、ロディ兄さま」
「ココ、俺も行くぜ!」
「キリシマは王子をお願い。そばにいてちょうだい」
「お、おう」

 ドラゴンの霧島に王子を任せて俺とロディ兄は先日まで王子が使っていた部屋へと向かう。もちろん、ロディ兄の従者ランスと隆も一緒だ。

「兄さま、どうして前の部屋ですか?」
「ソフィが荷物の片付けをしていただろう?」
「そう言えば、1人でしていましたね」
「今の部屋にある訳ない。なら前の部屋だ。王子はココが作った下着を着けている。だから、毒は無効化されたのだろうね」
「キリシマの加護もありますしね」
「ああ。だからソフィだけなんだろう」
「あれですか? 侵入者が?」
「そうだろうね。何もしないで部屋から逃げた事に引っ掛かっていたんだ」

 確かに。侵入者は俺達が踏み込む前に逃げようとしていた。俺達に気付いたからだと思っていたのだが。

「兄さま、なんか匂いませんか?」

 昨日まで、王子が使っていた部屋に入って俺の第一声だ。

「そうかい?」
「はい。匂いますよ。お香でしょうか?」
「誰もいないのに?」
「怪しいですね」

 俺とロディ兄、従者のランス、それに隆の4人で片っ端からクローゼットの引き出しを開け、窓も全て開放していく。

「ロディ様」

 お、早速ランスが何か見つけたらしい。

「これは、サシェですね」
「これが原因か」
「兄さま、多分毒ですから嗅がない方が良いですよ」
「そうだね」

 王子が使っていたクローゼット。と、言っても小さな部屋1つ分ある所謂ウォークインクローゼット、衣裳部屋だ。棚の上やシューズクロークからそのサシェが見つかった。俺が、鑑定眼で確認したら毒だった。自然に少しずつ毒が空気中に広がるんだ。
 部屋を移動して、片付けていたソフィが毒にやられたのだろう。

「殿下が王都から持ってきた物は少ない」
「はい。殆どこちらに到着してから揃えた物です」
「業者か?」
「殿下の部屋を教えた者ですか?」
「ココ、そうだね。ランス、業者も調べてみよう」
「承知しました」

 キリがないな。関わった者すべてが怪しく思えてくる。
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