おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

文字の大きさ
上 下
34 / 249
第2章 王都からの刺客!?

34ー不審者 2

しおりを挟む
 俺達は、部屋の様子をうかがう。王子が部屋に戻るまで潜むつもりなのか気配を消していて動きがない。だが、俺達はごまかせないぞ。

「部屋の奥に2人、手前に2人ですね」

 従者のランスも気付いている。さあ、やってやるぜ!
 
「そろそろサキがリュウと合流した頃かな」
「兄さま、そうですね」
「だから、ココ。飛び出したら駄目だからね」
「兄さま、分かってます」
「じゃあ、行くよ」
「はい」
「了解です」

 俺達が部屋に踏み込もうとした時だった。

「逃げましたぁー!!」
「ランス!」
「はい!」

 ロディ兄の従者であるランスが部屋へと飛び込んだ。

「何なの! 何がしたいのよ!」
「ココ! 深追いするんじゃない!」

 俺が慌ててバルコニーの方へと走り始めた時だ。ロディ兄に止められた。

「兄さま!」
「リュウとサキが追いかけているだろう」
「ロディ様」

 ランスが部屋に灯りをつけ部屋を見回している。

「ランス、部屋にはもういないだろう?」
「はい。全員逃げ出した様です」
「王子がいないから諦めたのか?」
「若しくは別の目的があったかです」
「別の目的か……」
「ロディさまぁ~! お嬢さまぁ~!」
「ココ、サキが呼んでるね」
「はい。兄さま、行きましょう」

 俺達3人は咲が呼んでいる1階へと急いだ。今日は皆が前庭で打ち上げをしている。そんな騒がしい中で、咲はよく3階にいる俺達まで聞こえる程の声を出したよ。びっくりだ。

「サキ! 捕らえたの!?」
「いえ、4人いたのですが皆バラバラに逃げ出したので、1人しか捕まえられませんでしたぁ。それにぃ……」
「ああ、自害してしまったか」
「はい。ロディ様、申し訳ありません」
「いや、サキ。仕方ないよ」

 咲の足元には、血を吐いて事切れているだろう全身黒ずくめの人物が横たわっていた。

「ランス、王子の部屋を変える様に知らせてきてくれ」
「了解です」

 そうだ。王子の部屋がバレていた。見張っていたのか? それとも、邸内に知らせた者がいたのか? そんな事をする者はいない筈だが、スッキリしないな。

「ロディ、ココ!」

 ランスと入れ替わりに、バルト兄が走ってやって来た。

「兄上、自害されてしまいました」
「ああ、ランスから聞いた。サキ、リュウは?」
「別の侵入者を追ってますぅ」
「兄さま、何がしたかったのでしょう」
「さあ、何だろうね」
「ロディ、タイミングが良すぎると思わないか?」
「そうですね。打ち上げをしていて騒がしい上に、警備が手薄になっていて紛れやすい。しかも、夜だ」
「そうだ。何より殿下の部屋を狙って入っている。知られていたんだろう」
「じゃあ兄さま、旗を折ったのも同じ奴等ですか?」
「多分、そうだろうね。騒ぎを起こしたかったのだろう」

 隆が黒ずくめの男を2人引きずって戻ってきた。捕まえたのか、凄いな。

「リュウ、捕まえたのか?」
「バルト様、すんません。1人逃がしました。で、1人は自害されてしまいました。残りの1人は猿轡をして気絶させてます」
「よくやった」
「バルト様、王妃様かも知れません」
「なんだって? リュウ、どうしてそう思う」
「こいつです。自害した奴なんスけど、自害する直前に王妃様の名前を呼んだんスよ」

 ドサッと1人を地面に転がす。こいつも血を吐いた様だが、もう事切れている。戻ってきていたランスがしゃがみ込んで見ている。毒の匂いがしないか確認しているんだ。毒によっては独特の匂いのする物があるんだ。
 
「ほう……」
「兄上」
「ああ、父上に報告だ」
「はい。エクター」
「おう」

 エクターが父の元へ走って行った。しかし、隆。1人でよく捕まえたよ。

「バルト様、こいつ地下牢へ入れときます」
「ああ。身体検査してからだぞ」
「分かってるッス」

 隆が軽々と黒ずくめの男を担いで行く。

「バルト! ロディシス!」

 大きな声の父がやって来た。

「殿下の部屋かッ!?」
「はい、父上。部屋を変更します」
「ああ! もちろん、その方が良い! こいつ等か!?」

 父が、地面に横たわる2人の死体を見る。黒ずくめで証拠になる様な物は持っていないだろう。

「毒か?」
「はい、多分。予め持っていた様です」
「そこまでするのか……」
「父上、1人の男が自害する直前に王妃様の名前を呼んだそうです。リュウが聞いていました」
「なんだとぉッ!?」
「1人はリュウが捕らえて牢に入れています。あと1人は逃しました」
「旦那様、とにかく死体を地下へ。検証もしなければなりません」
「ああ、そうだな。シーゲル頼んだ」
「はい。お任せを」

 シーゲルが2つの死体をヒョイと両脇に抱えて行く。どんな力してんだよ。びっくりだ。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

転生したら悪役令嬢の兄になったのですが、どうやら妹に執着されてます。そして何故か攻略対象からも溺愛されてます。

七彩 陽
ファンタジー
 異世界転生って主人公や何かしらイケメン体質でチートな感じじゃないの!?ゲームの中では全く名前すら聞いたことのないモブ。悪役令嬢の義兄クライヴだった。  しかしここは魔法もあるファンタジー世界!ダンジョンもあるんだって! ドキドキワクワクして、属性診断もしてもらったのにまさかの魔法使いこなせない!?  この世界を楽しみつつ、義妹が悪役にならないように後方支援すると決めたクライヴは、とにかく義妹を歪んだ性格にしないように寵愛することにした。 『乙女ゲームなんて関係ない、ハッピーエンドを目指すんだ!』と、はりきるのだが……。  実はヒロインも転生者!  クライヴはヒロインから攻略対象認定され、そのことに全く気付かず義妹は悪役令嬢まっしぐら!?  クライヴとヒロインによって、乙女ゲームは裏設定へと突入! 世界の破滅を防げるのか!?    そして何故か攻略対象(男)からも溺愛されて逃げられない!? 男なのにヒロインに!  異世界転生、痛快ラブコメディ。 どうぞよろしくお願いします!

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...