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第1章 転生後
20ー母の心を鷲掴み
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第3王子がうちに来て暫くした頃、王子は俺達家族と食事を共にする様になっていた。
母が解毒し、ヒールを掛けたあの日から母は数日続けて王子にヒールを施していた。毒の影響もあるが、それ以前に王子は心身共に弱り切っていたんだ。まともに食べる事ができない。安心して眠れない。きっと、そんな日々が続いていたのだろう。
王子は順調に回復し、一緒に食事が出来る様になっていたんだ。
そして、身体も楽になったのだろう。俺達が鍛練していると、毎日庭を歩く様になった。鍛練をしているのを見ながら無理をせずゆっくりと庭を歩く。
兄達や俺とも気さくに話し、時折り笑顔も見せる様になった。
だが、迫害され傷付けられていた心はそう簡単には癒せない。夜中に魘されて目を覚ます事がまだ度々あるらしい。
らしい……だ。俺は、爆睡しているから知らない。
そんな感じの昼下がり、俺は母から一緒にお茶をしようと呼ばれた。
「ココちゃん、あれとっても良いわね」
「母さま、あれって何ですか?」
「あれよ、あれ。お父様の下着を作った生地よ」
「ああ、はい。そうですか?」
「ええ、お父様ったらあれしか履きたがらないのよ。だから急いで追加を作ってもらわなきゃ。私も早く欲しいわ」
「母さま、今試行錯誤しているのですけど……」
俺は母の近くで囁いた。決して悪魔の囁きではない。
「実は、お胸をググッと寄せて上げる物にしようかと……」
「まあ!」
「お腹を抑えてお尻をキュッと上げるのもいいですよね……」
「ステキ!」
「今、作ってますので最初は母さまに」
「ココ、いつ出来るのかしら?」
「そうですね、1週間程でしょうか?」
「楽しみだわ!」
「それだけではありません」
「まだあるの?」
「はい。同じ糸でふんわりとした薄い生地を織ってみたのです」
「ふんわり?」
「はい。そしたら、とってもふんわりしているのに適度な張りもあって艶のあるチュールの様な生地が出来ました。ドレスにどうでしょう?」
「ココちゃん、見てみたいわ」
「はい、もちろんです。持ってきますか?」
「ええ、直ぐに見たいわ」
乗ってきた。母の心をガシッと鷲掴みだよ! 咲が生地を取りに走って行った。
「まあまあまあまあ! なんて綺麗なのかしら! ココちゃん、天才だわ! モスリンなんかよりずっといいじゃない。この艶、手触り、透け感、とってもステキ!」
「母さま。これ、うちの特産品になりませんか?」
「そうね。何人か雇いましょう」
「はい。旦那様を亡くした人っていますよね」
「そうね。旦那様を魔物に殺された人達がいるわね」
「そんな人達の良い仕事になりませんか?」
「ココちゃん」
「はい、母さま?」
「偉いわ。母さま、涙が出ちゃうわ!」
この辺境の領地では、魔物の危険が身近にあるんだ。領主隊だったが、若い奥さんを残したまま魔物に殺されたって人が結構いる。そんな、残された女性の働き口に丁度良くないか? と、俺は考えていた。母は同意してくれたらしい。この世界、女1人で生きていくにはまだまだ厳しいんだ。
「ココちゃん、それだけじゃないわ。もう畑仕事はキツイけど、まだ仕事はしていたいって年代にも良いわね。男性は無理かしら?」
「いいえ。セリスアラーネアの世話や、糸の色分けを管理してもらうとかはどうでしょう? 繭から糸にもしてほしいです。女性だと少し大変なんです」
「いいわね。今は誰がしているの?」
「サキとリュウです」
「まあ! 2人だけなの!? じゃあ、早く手配しましょう! そうすれば、量産できるわね」
「はい。手が足りなくて、まだ糸の状態の物が沢山ありますから」
「ステキだわ。早速、ロディに話しておくわね」
と、言う事で、一気に話が進み専用の作業場まで作る事になった。で、俺はロディシスに褒められた。
領地のこういう事は一手にロディシスが担っている。最終決定権はもちろん父なのだが、その父もロディシスに相談する。だから、結局皆ロディシスに相談する。次男がボス化してなくないか?
「ココ、良い事だね。絶対に儲かるよ」
「兄さま、まだ全然売ってませんよ? 始めたばかりです」
「儲かる未来しか見えないよ」
そう言って俺の頭を撫でる。だが、兄よ。まだ色々と試行錯誤中だからな。気が早すぎる。
この世界、下着がなってないんだよ。父が叫んでいたポジションもそうだが、女性ならブラだよ。それが普通の布1枚でお胸の綺麗なラインを出せると思うか!? 否、出せる筈がないだろう!!
咲をモデルに、先ず取り掛かったのがブラだ。ボクサーパンツ擬きは簡単だから生地さえできれば、後は隆に丸投げだ。せっせと隆がボクサーパンツ擬きをパターンに合わせて切っている。父の追加分を作るらしい。その横で、俺と咲はブラ作りだ。まだ、パターンも起こせていない。
母が解毒し、ヒールを掛けたあの日から母は数日続けて王子にヒールを施していた。毒の影響もあるが、それ以前に王子は心身共に弱り切っていたんだ。まともに食べる事ができない。安心して眠れない。きっと、そんな日々が続いていたのだろう。
王子は順調に回復し、一緒に食事が出来る様になっていたんだ。
そして、身体も楽になったのだろう。俺達が鍛練していると、毎日庭を歩く様になった。鍛練をしているのを見ながら無理をせずゆっくりと庭を歩く。
兄達や俺とも気さくに話し、時折り笑顔も見せる様になった。
だが、迫害され傷付けられていた心はそう簡単には癒せない。夜中に魘されて目を覚ます事がまだ度々あるらしい。
らしい……だ。俺は、爆睡しているから知らない。
そんな感じの昼下がり、俺は母から一緒にお茶をしようと呼ばれた。
「ココちゃん、あれとっても良いわね」
「母さま、あれって何ですか?」
「あれよ、あれ。お父様の下着を作った生地よ」
「ああ、はい。そうですか?」
「ええ、お父様ったらあれしか履きたがらないのよ。だから急いで追加を作ってもらわなきゃ。私も早く欲しいわ」
「母さま、今試行錯誤しているのですけど……」
俺は母の近くで囁いた。決して悪魔の囁きではない。
「実は、お胸をググッと寄せて上げる物にしようかと……」
「まあ!」
「お腹を抑えてお尻をキュッと上げるのもいいですよね……」
「ステキ!」
「今、作ってますので最初は母さまに」
「ココ、いつ出来るのかしら?」
「そうですね、1週間程でしょうか?」
「楽しみだわ!」
「それだけではありません」
「まだあるの?」
「はい。同じ糸でふんわりとした薄い生地を織ってみたのです」
「ふんわり?」
「はい。そしたら、とってもふんわりしているのに適度な張りもあって艶のあるチュールの様な生地が出来ました。ドレスにどうでしょう?」
「ココちゃん、見てみたいわ」
「はい、もちろんです。持ってきますか?」
「ええ、直ぐに見たいわ」
乗ってきた。母の心をガシッと鷲掴みだよ! 咲が生地を取りに走って行った。
「まあまあまあまあ! なんて綺麗なのかしら! ココちゃん、天才だわ! モスリンなんかよりずっといいじゃない。この艶、手触り、透け感、とってもステキ!」
「母さま。これ、うちの特産品になりませんか?」
「そうね。何人か雇いましょう」
「はい。旦那様を亡くした人っていますよね」
「そうね。旦那様を魔物に殺された人達がいるわね」
「そんな人達の良い仕事になりませんか?」
「ココちゃん」
「はい、母さま?」
「偉いわ。母さま、涙が出ちゃうわ!」
この辺境の領地では、魔物の危険が身近にあるんだ。領主隊だったが、若い奥さんを残したまま魔物に殺されたって人が結構いる。そんな、残された女性の働き口に丁度良くないか? と、俺は考えていた。母は同意してくれたらしい。この世界、女1人で生きていくにはまだまだ厳しいんだ。
「ココちゃん、それだけじゃないわ。もう畑仕事はキツイけど、まだ仕事はしていたいって年代にも良いわね。男性は無理かしら?」
「いいえ。セリスアラーネアの世話や、糸の色分けを管理してもらうとかはどうでしょう? 繭から糸にもしてほしいです。女性だと少し大変なんです」
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「まあ! 2人だけなの!? じゃあ、早く手配しましょう! そうすれば、量産できるわね」
「はい。手が足りなくて、まだ糸の状態の物が沢山ありますから」
「ステキだわ。早速、ロディに話しておくわね」
と、言う事で、一気に話が進み専用の作業場まで作る事になった。で、俺はロディシスに褒められた。
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そう言って俺の頭を撫でる。だが、兄よ。まだ色々と試行錯誤中だからな。気が早すぎる。
この世界、下着がなってないんだよ。父が叫んでいたポジションもそうだが、女性ならブラだよ。それが普通の布1枚でお胸の綺麗なラインを出せると思うか!? 否、出せる筈がないだろう!!
咲をモデルに、先ず取り掛かったのがブラだ。ボクサーパンツ擬きは簡単だから生地さえできれば、後は隆に丸投げだ。せっせと隆がボクサーパンツ擬きをパターンに合わせて切っている。父の追加分を作るらしい。その横で、俺と咲はブラ作りだ。まだ、パターンも起こせていない。
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