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第1章 転生後
12ー王子を狙う者
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「な、な、なんだとぉー!?」
「あなた、声が大きいですわ」
母よ。父の声が大きいのは今に始まった事じゃない。いつもどんな時でも父は声がデカイ。
父の執務室で、母が毒の件を報告したんだ。そしたら、最初の父の台詞だ。
「それは間違いないのか!?」
「はい。ココが見ましたから。アンチドーテで処置致しましたわ」
「ちょ、ちょっとお待ちください! 王子殿下が毒に侵されていたと仰るのですか!?」
「ええ、その通りよ」
「そんな……まさか、そこまで……」
「まだ、王子殿下は13歳だぞ! いくら母親が違うと言っても同じ兄弟だぞ! 歴とした王子殿下なのだぞ!!」
「あなた、だから声が大きいですわ」
母よ、諦めろ。父は多分、地声が大きいんだ。
「無理にでもお連れして正解でしたわ」
「王子殿下の宮を見て愕然としたんだ。手入れもされていない。使用人もいない。あんな所に置いておけないと思ったんだ。アルベルト、3年前からずっとあの状態だったのか?」
「はい。私共ではどうにもできず。それなのに、殿下は黙って堪えておられたのです」
護衛のアルベルトとメイドのソフィリアが告白した。
城での王子の待遇だ。お母上に当たる第1側室が生存されている間はまだ良かった。兄王子達と同じ様に王子宮に部屋を持ち過ごされていた。唯一の側室の子として、確かに当時から風当りは強かったそうだ。それでも、王から寵愛を受けている側室の子だ。しかも王子殿下だ。それなりの待遇はあったそうだ。
しかし、母である第1側室が3年前に亡くなられてから一変した。
身の回りの世話をする者達が次から次へと減らされた。そして、別宮へと移動となった。その時点でお側付きのものは現在のアルベルトとソフィリアのみになった。食事も日に2食、1食と減っていった。くず野菜しか入っていない冷えたスープに固いパン。とても王子殿下の食事とは思えないものだった。
アルベルトとソフィリアは周りにバレないようにこっそりと食事を届ける毎日だったそうだ。
その内、王妃の指示で別宮から出る事さえも禁じられた。
暴力沙汰は無かったとはいえ、そんな生活を3年だ。3年も我慢されてきた。その上、毒だ。
「側室様の親御殿はどうした?」
「側室様のご実家は伯爵家ですし、領地も遠方でしたから。ご実家が公爵家である王妃殿下に物申すなど出来る訳がございません」
なるほどね。身分は王妃の実家より低いし、領地からは遠いし。て、事だね。
だがな、それでも心配じゃなかったのか? 孫だよ? 孫って目に入れても可愛いとか言うじゃん? なんとか出来なかったのか。俺だったら黙っていられないよ。何でも理由をこじつけて城から連れ出すよ。まさか、保身か? 本当に、父が気付いて良かった。
「お嬢様、お顔が怖いですよぉ」
お茶を出しながら、咲が囁く。そりゃ怖くもなるさ。俺は心底ムカついてんだよ。
「アルベルト、他言無用だ」
「はい、心得ております」
「ココ、ちゃんと解毒は出来たのだな?」
「はい、父さま。母さまがヒールもしてくれていますし確認しましたから、もう大丈夫です」
「そうか。良かった」
「あの……」
「どうした?」
「その、何故ご令嬢に確認されるのでしょうか?」
まあ、そう思うよな? そりゃそうだ。1番ちびっ子だからな。
「絶対に他言はしないと約束できるか?」
「は、はい! 王子殿下を助けて頂いたのですから」
「実はね、ココアリアは鑑定眼というスキルを持っているのよ」
「鑑定眼……ですか!? て、あの鑑定眼ですか!?」
「そうなの。だから、絶対に他言しないでくださいませね」
「は、はい! 決して!」
え、そんなになのか? 俺にはよく分からんけど。
「ココちゃん、そんなになのよ」
「は、はい、母さま」
両親の目が怖い。大人しくしておこう。俺は空気が読める8歳児なのだよ。
「なんとかして証拠を手に入れられないだろうか」
「そうですわね。このままだと、いつまで経っても王子殿下は狙われてしまいますわね」
「私共ではどうする事もできませんでした」
「だからと言って、全く何も分からない訳ではないだろう?」
「辺境伯様……しかし……」
「よいか? 私も軽い気持ちで保護させて頂いたのではない。これは、単純に末の王子への迫害だけでは済まない話なのだ。その様な心持ちの者が民から信頼されると思うか? 国を平和に治めて行けるか?」
「それは……」
「よく考えると良い。調査するには材料が多い程良い」
「そうですわね。あなた、私の両親にも相談しましょうか?」
「そうだな。我々では中央は遠い」
「動いてくれる者もおりませんしね」
「早速、文を書こう。直ぐに走らせよう」
王子の護衛がまだ迷っている。なんだよ、何を知っているんだ? ここまでしても、父を信用できないのか?
俺ならカチコミ決定だぜ? 相手が王妃だろうと兄王子だろうとさ、やっちゃ駄目な事だろうよ? 売られた喧嘩は買わないとな!
◇ ◇ ◇
HOT男性向けランキング2位です!
ありがとうございます!
皆様のお陰です!心から感謝です!
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母よ。父の声が大きいのは今に始まった事じゃない。いつもどんな時でも父は声がデカイ。
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「それは間違いないのか!?」
「はい。ココが見ましたから。アンチドーテで処置致しましたわ」
「ちょ、ちょっとお待ちください! 王子殿下が毒に侵されていたと仰るのですか!?」
「ええ、その通りよ」
「そんな……まさか、そこまで……」
「まだ、王子殿下は13歳だぞ! いくら母親が違うと言っても同じ兄弟だぞ! 歴とした王子殿下なのだぞ!!」
「あなた、だから声が大きいですわ」
母よ、諦めろ。父は多分、地声が大きいんだ。
「無理にでもお連れして正解でしたわ」
「王子殿下の宮を見て愕然としたんだ。手入れもされていない。使用人もいない。あんな所に置いておけないと思ったんだ。アルベルト、3年前からずっとあの状態だったのか?」
「はい。私共ではどうにもできず。それなのに、殿下は黙って堪えておられたのです」
護衛のアルベルトとメイドのソフィリアが告白した。
城での王子の待遇だ。お母上に当たる第1側室が生存されている間はまだ良かった。兄王子達と同じ様に王子宮に部屋を持ち過ごされていた。唯一の側室の子として、確かに当時から風当りは強かったそうだ。それでも、王から寵愛を受けている側室の子だ。しかも王子殿下だ。それなりの待遇はあったそうだ。
しかし、母である第1側室が3年前に亡くなられてから一変した。
身の回りの世話をする者達が次から次へと減らされた。そして、別宮へと移動となった。その時点でお側付きのものは現在のアルベルトとソフィリアのみになった。食事も日に2食、1食と減っていった。くず野菜しか入っていない冷えたスープに固いパン。とても王子殿下の食事とは思えないものだった。
アルベルトとソフィリアは周りにバレないようにこっそりと食事を届ける毎日だったそうだ。
その内、王妃の指示で別宮から出る事さえも禁じられた。
暴力沙汰は無かったとはいえ、そんな生活を3年だ。3年も我慢されてきた。その上、毒だ。
「側室様の親御殿はどうした?」
「側室様のご実家は伯爵家ですし、領地も遠方でしたから。ご実家が公爵家である王妃殿下に物申すなど出来る訳がございません」
なるほどね。身分は王妃の実家より低いし、領地からは遠いし。て、事だね。
だがな、それでも心配じゃなかったのか? 孫だよ? 孫って目に入れても可愛いとか言うじゃん? なんとか出来なかったのか。俺だったら黙っていられないよ。何でも理由をこじつけて城から連れ出すよ。まさか、保身か? 本当に、父が気付いて良かった。
「お嬢様、お顔が怖いですよぉ」
お茶を出しながら、咲が囁く。そりゃ怖くもなるさ。俺は心底ムカついてんだよ。
「アルベルト、他言無用だ」
「はい、心得ております」
「ココ、ちゃんと解毒は出来たのだな?」
「はい、父さま。母さまがヒールもしてくれていますし確認しましたから、もう大丈夫です」
「そうか。良かった」
「あの……」
「どうした?」
「その、何故ご令嬢に確認されるのでしょうか?」
まあ、そう思うよな? そりゃそうだ。1番ちびっ子だからな。
「絶対に他言はしないと約束できるか?」
「は、はい! 王子殿下を助けて頂いたのですから」
「実はね、ココアリアは鑑定眼というスキルを持っているのよ」
「鑑定眼……ですか!? て、あの鑑定眼ですか!?」
「そうなの。だから、絶対に他言しないでくださいませね」
「は、はい! 決して!」
え、そんなになのか? 俺にはよく分からんけど。
「ココちゃん、そんなになのよ」
「は、はい、母さま」
両親の目が怖い。大人しくしておこう。俺は空気が読める8歳児なのだよ。
「なんとかして証拠を手に入れられないだろうか」
「そうですわね。このままだと、いつまで経っても王子殿下は狙われてしまいますわね」
「私共ではどうする事もできませんでした」
「だからと言って、全く何も分からない訳ではないだろう?」
「辺境伯様……しかし……」
「よいか? 私も軽い気持ちで保護させて頂いたのではない。これは、単純に末の王子への迫害だけでは済まない話なのだ。その様な心持ちの者が民から信頼されると思うか? 国を平和に治めて行けるか?」
「それは……」
「よく考えると良い。調査するには材料が多い程良い」
「そうですわね。あなた、私の両親にも相談しましょうか?」
「そうだな。我々では中央は遠い」
「動いてくれる者もおりませんしね」
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王子の護衛がまだ迷っている。なんだよ、何を知っているんだ? ここまでしても、父を信用できないのか?
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