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第三章

126ー対決

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 翌朝、張り詰めた空気が冷たく感じます。ぶっちゃけ寒いです。
 朝食後はズッと馬車です。走ってます。武装のお陰で身体は寒くはないけど、顔がね。頬が引き攣るわ。馬だともっとだろうなー。て、ピアまた口開けてるわ。懲りないわね。学習したんじゃなかったの?

「わふっ!」
「来たの!」

 魔道具で先頭のお父様、そして全員に知らせます。暫く走ると隊列が、馬車が止まりました。
 止まった馬車の外を見ると、ユリウスとマーリソン様がもう馬車を降りて前に走って行ってます。

「モモ、私達も行くわよ」
「わふっ!」

 馬車を降りて、モモやルビと前に移動します。いつの間にか両脇にレオン様とケイがいます。前後にセイバーもいます。ケイもセイバーも既に手に武器を持っています。
 ピアは何故かピッピピ言いながら私達の真上を飛んでいます。何か喋ってんのかしら?

「ケイ、油断するな。ルルから離れるな」
「殿下、分かっております。殿下こそ油断は禁物です」

 ケイがシュンッと双剣を抜きました。しまったわ! ケイにもミスリルの剣を作っておけば良かったー!

「ルルーシュア様、お気遣い有難うございます。これはレオン殿下の双剣をお借りしているので、ミスリルですよ。早く使いたくてウズウズしますね」

 ケイ、カッコいいー!
 呑気な事を考えながら私達が先頭に行くと、もうセイバー隊員達がシャーロット一行を取り囲んでいました。
 シャーロットは私達に気付きました。そしてレオン様に向かって……

「あぁ、レオン様! やはり来て下さったのですねぇ! 私達は運命なんですよぉ! レオン様ぁ! どうか私を帝国へ略奪して下さいぃ!」

 シャーロットが両手を広げています。うわっ、第一声がそれなの!? キモッ!

「ルル、その顔やめろ」
「だってレオン様、超キモイ……!」
「マジでな、キモ過ぎだろ」
「殿下、なんですかあれは? 馬鹿ですか? 殿下に声を掛けるなど!」
「ケイ、大馬鹿なんだよ」
「ううぅーーふわぅおんッ!!」

 モモが威嚇します。

「キャッ! やだぁ! 何あれ! 近寄らないでぇ! レオン様、助けて下さいぃ!」

 その時私は気付いた……
 コラッ! ちょっと待てぃ! コラコラコラッ!! 此れはスルーできないわ。ちょっとそこのピンク! 頭おかしいでしょ! なんなのよ!
 シャーロットを庇う様にいるサクソン・モルドレッドや修道女も護衛兵までボロボロなのよ! 汚ったないのよ! この寒いのに防寒してないのよ! 死んじゃうわよ!
 なんで? なんで、あんただけピカピカのピンクのドレスなのよ! フワッフワの暖かそうなピンクのコート着てるのよ! 艶々なのよ! そのピンクのリボンのツインテール、ブった切ってやろうか!
 ダメだ! こいつは本当にダメだ! 超ムカついてきたッ!!

「わふ、ルル冷静になりなさい」
「だってモモ! 何よあれ! なんで一人ピンクのドレスなんか着てんのよ! 平気なの? 他の4人の服装見て! ボロボロじゃない! よくあの格好で北から移動してきたわよ。死ぬわよ? 狂ってるわ!!」

 シャーロットが一歩前に出ました。

「ルル、来るわよ!」
「ブースト、プロテクト、シールド」

 私は静かに全員に補助魔法を掛けます。

「おぉ……!」

 ん? ケイがビックリしてる?

「フフフ、直ぐに楽にしてあげるわ。みーんな、私の下僕になりなさーいぃ!」

 シャーロットが両手を広げながら言いました。

 ――キラランキラキラ……

「お前、馬鹿か……? マジで頭クッソおかしいんじゃないか?」

 ジュード兄様、肩にロングソードを担いでキレてるわ。

「よくも王国を散々弄んでくれたな!」

 あ、剣を抜いた。ラウ兄様までキレてるわ。

「あれぇ? どうしてぇ? えぇーい! もう一回よ。跪きなさぁいぃー!」

 またシャーロットが両手を広げながら言いました。

 ――キララン……キララン……

「セイバー! 警備兵を捕縛しろ!」
「「「「はッ!」」」」

 お父様が淡々と指示します。

「ルル、モモちゃん、先に解呪するわよ!」
「はい! お母様!」
「「ディスエンチャント!」」
「ワウオオォォォーーン!」
「えっ! 何? 何してんのぉ!?」

 シャーロットは慌てるだけで、修道女と警備兵が直ぐに正気に戻りました。

「俺達、なんで?」
「やだ、私ボロボロじゃない!」

 そして直ぐにセイバーに捕縛され離れます。

「クリーンして、上着を着せてあげて!」

 余りにも寒そうなんですもの、叫んでしまったわ。ただ、サクソン・モルドレッドが……

「うっ……! うぅ! 何だこれは……!」

 頭を抱えて蹲ります。

「魅了がかなり深い様ですね」
「ユリウス、どうするの?」

 その時です、マーリソン様が前に出ました!

「アースバインド!」

 サクソン・モルドレッドにアースバインドを掛けます。

「マーリソンではないか! お前、父に何を!」

 そしてマーリソン様は、身動きの取れないサクソン・モルドレッドへ…… 

「……いい加減に戻ってきなさい! ディスエンチャント!」
「うぅわぁぁーー!!」

 マーリソン様に二度目の解呪魔法を掛けられたサクソン・モルドレッドは大きな叫び声をあげて気を失いました。セイバーが瞬時に抱えて戻ってきます。

「解呪薬を飲ませて! 魅了が深いのよ!」

 隊員が直ぐに無理矢理解呪薬を飲ませてくれています。

「なによ! なによ、なによ! どうして私の邪魔をするのよぉ! 私とレオン様の邪魔をしないでぇ!」

 ――キラキラキララン……

 シャーロットは悲劇のヒロインとばかりに叫んでいます。そして魅了も掛け続けていますが、誰も掛かりません。魔道具、マジ優秀!
 それにしてもこいつは……! 許せない!

「ジャッジメントレイ」
「ルル!」

 天から白く光る光線が降り、シャーロットを包み込み浄化していきます。

「ギィャアァァァー!!」

 黒い霧を身体から出し、人の物とは思えない叫び声をあげながら崩れ膝をつきました。

「ルル、眷属を浄化したの!? あなたそんな上位魔法使ったら……」
「……グホッ! まさか此処までやるなんてね。あんた加護持ちね。厄介な加護を持ってるじゃない」

 何? これは誰? 口調が違うわよ? 身体に黒い霧を纏わせながらシャーロットが立ち上がり顔を上げました。
 目が……! 白目がドス黒い赤へと変わっています。
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