転生公爵令嬢の婚約者は転生皇子様

撫羽

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第二章

86ーケイと肉まん

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「父上、終わりました」
「ラウ、ジュードご苦労だった」
「父上、邸内は終わりましたか?」
「ああ、終わった。ラウ、そっちはどうだ?」
「ええ。聞き取った結果、まだ街には残っていそうですね。レオンとユリウスの帰りを待ちましょう」
「そうだな。ラウ、今のうちにリル達とケイに次の街の予想を伝えておいてくれ」
「分かりました」

 ラウ兄様が魔道具で話されます。

「ティシュトリア公爵様、この度は誠に有難うございました。どう対処すれば良いのか分からず途方に暮れておりました。心より感謝致します」
「いや、気になさるな。元はと言えば王家の怠慢だ。迷惑を掛けたな」
「そんな! とんでもございません! ティシュトリア公爵様には感謝しかございません!」
「失礼。父上、リルとノトスはまだですが、ケイが既に街に入っておりました。ユリウスの予想は的中らしいです」
「ラウ、そうか。領主殿、頼みがあるのだが聞いてはくれまいか?」
「何なりとお申し付け下さい! ティシュトリア公爵様のお役に立てるのならどの様な事でも!」

 あれ? またこのテンションになっちゃうの? お父様の信者が増えてない?

「ご存知の様に、クロノス侯爵と令嬢も同行しているのだが、私共が隣街へ解呪に向かう間此方で滞在させては頂けまいか?」
「その様な事! お安い御用で御座います! 気兼ねなく滞在なさって下さい!」
「そうか、助かる。頼んだ」
「はい、はいッ! 畏まりました!」
「お父様、街はどうしますか?」
「レオンとユリウスが無事に終わったか待たないとな」

 まあ、そうね。

「領主殿、何故ご子息達は魅了を?」
「はい。例のシャーロットと言う令嬢が、隣の元プロセル領に戻る際我が邸へやって来たのです。無理矢理いつの間にか邸内に入っておりまして、その時に狙われた様です。マナーも礼儀も全くなっておりませんで、街の娘の方がまだ弁えております。それはもうアッという間の出来事でした。先だっての王都での騒ぎを聞き、嫡男も解呪が必要な状態なのは直ぐに分かりました。しかし魅了の解呪など、どうしたものか全く分からず困り果てていた次第です」
「街の者はどうだ? 分かるか?」
「ティシュトリア公爵様が、解呪して下さると何処からか噂が出ておりまして住民の耳にも入っております。ですので今日街の者がやって来てお待ちしておりました」 
「しかし、まだ言い出せていない者もいるのでないか? 兵や教師や教会関係者はどうだ?」
「それは大丈夫かと。実はプロセル元男爵はこの地方では嫌われておりまして。誰も相手には致しません。あのシャーロットと言う娘もです。宿屋まで、訳の分からない男を連れ込むからと宿泊拒否をする始末でして。それで宿泊する所がなく、我が邸に乗り込んできた様なのです」
「そうなのか?」
「はい。プロセル元男爵は女癖や手癖が悪い事で有名でしたから。シャーロットと言う娘も、父親に良く似たものだと言われておりました。あの領地は孤立しておりました」
「それでよく領民が逃げださなかったな」
「公爵様、悪どい手を使っていた様です。いつの間にか借金を背負わされ身動きできない様にされるそうです。それでも数人ですが、我が領地に逃げて来た者もおります」
「なんとも酷いことだな」
「はい。ですので領地を没収されて領民は喜んでいる様です」
「まあ、次に誰が領主になるのかはまだ分からないがな」
「そうですね。しかし、プロセル元男爵よりはマシでございましょう」
「公爵、戻りました」
「レオン、ユリウス、マーリソン殿ご苦労であった。まだ街には残っていそうか?」
「アーデス様、残っていた者も纏めて解呪してまいりました」
「ユリウス、どういう事だ?」
「はい。邸に助けを求めてきた者の夫と仲間を解呪致しまして、そこから辿れましたので」
「そうか。ではこの街は大丈夫だな?」
「はい、もう解呪が必要な者はいないと思われます」
「結局、何人程いたんだ?」
「そうですね、ざっと20人程ですか」

 とんでもないわ。唯の魅了スキルの範疇じゃないわね。

「この街を通る度に少しずつ増やした様です」

 嫌だわ。執着を感じるわ。

「ルル様、そうなのです。王妃の座に執着している様です。若しくはレオン殿下の妃ですね」

 あー、それでレオン様元気ないの?

「ルル、俺はルルだけだからな!」

 はいはい。そんなウルウルした目で、しかもこんな所で言わなくても。

「いや、話を聞いたら異常だった」

 そうなのね。

「ではユリウス。次の街はしっかり用心しないといけないわね」
「はい、ルル様」
「公爵様、本日はもう遅くなりましたので、どうぞ滞在なさって下さいください。ずっと馬車でしたらお疲れでしょう。客室の用意もさせております」
「気遣いかたじけない。甘えさせていただこう」

 やったー! 今日はベッドで眠れるわ!

「ルル、顔に出てる」

 あら、レオン様、失礼しましたわ。モモちゃん達呼べないかしら?
 夕食後、私達はお茶を頂いています。

「父上、リルからの報告なのですが、ケイが…… 」
「ラウ、ケイがどうした?」
「ああ、レオン。ケイがリル達より早く街に入っていたのだがな」
「ラウ兄様、ケイは大丈夫ですか?」
「いやルル。大丈夫どころか」
「「???」」
「リル達は何をどうしたのか全く分からないそうなのだが、ケイが街の魅了された人々の殆どを既に解呪したらしい」
「「はぁっ!?」

 なんでそうなる!?

「あー、多分あれだ。肉まんだ。アレで張り切ったんだ」

 へっ!?

「レオン、訳が分からないんだか?」
「ラウ、ケイはティシュトリア家の食事を、とんでもなく気に入っているんだ」
「レオン様、それと解呪とどう関係があるの?」
「ルル、多分な、ケイは自慢気に超うまそうに肉まんを食べていたんじゃないか? しかも街のど真ん中とかでな。かなりの量を持って行ったろ? あれはきっと自分の分も入っていたんだろ」

 えっ? ケイてそんな感じなの?

「そうなんだよ。あいつ。食い物には目がないんだよ」

 そうなんだ。そう言えば来る度に何か言ってたわね。

「レオンそれで?」
「ああラウ、多分だぞ。多分、街の人通りが多い所とかで気にせず食べていたんだろう。それで、聞いてきた奴に自慢気に分けてやったんじゃないか? それが広がって、いつの間にか解呪も出来て…… みたいな感じじゃないかと思う」
「それって…… ケイは天然?」
「ま、そんなとこもあるな」
「……まぁ何にせよ良かったか?」

 お父様、「?」が付いてるわ。

「では、後は貴族ですか?」
「ユリウス、そうなるな。リルの報告だと、領主だったプロセル元男爵がいないから、代わりに仕切っている者と接触したらしい。もう解呪が必要な者を集めにかかってくれているそうだ」
「思っていたよりスムーズにいきそうで良かったですね。ケイのお陰ですね」
「そうね、ご馳走しなきゃね」
「あー、喜ぶわー。多分、次の街を出た辺りで肉まんの補充に来るんじゃないか?」
 
 えっ!? そんなに!?

「ルル、そんなにだ」

 足りるかしら……?

「ルル、ルル」

 ん? この声は……お母様?

「お母様、どうされました?」
「ルル、何か甘いものを頂戴。このお茶菓子、美味しくないのよ」

 お母様…… マイペースだわ。
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