上 下
61 / 137
第二章

61ーまだ馬鹿

しおりを挟む
「公爵……これは……」
「ああ……」

 お父様がお母様に助けを求めてますね。

「レオン殿下、ピア、モモ、ルビ、お座りなさい!」

 お母様の言葉に、揃ってこっちにやってきます。ピアはまたレオン様の頭にくっついてます。

「ピピ、ピー!」
「ピア、分かったから少し大人しくしろ」
「わふっ!」

 多分、モモがピアを叱ってます。

「ルル様、レオン殿下申し訳ありません」
「リアンカ、ピアが無理矢理出て来たのでしょ? 仕方ないわ」
「ピー……」

 ピアがしょんぼりしてレオン様の頭から降りて、私の膝にきました。なんで私の膝よ? ウルウルした目で抱きついてきます。

「あー、これは怒られるの分かってるな」
「ピア、ダメでしょ。勝手に飛び出して来たんでしょ?」
「ピ……」
『ルル、ピアは初めて別々に食事したから、不安だったみたいなの。それに今日は一日中レオン様と離れてたしね。寂しかったみたいね』
「だからって、一人で勝手に飛び出したりしちゃダメよ」
「ピー……」
「あなた、仕方ないですわ」
「ああ、クロノス侯爵、決して他言しないでほしいのだが、紹介しよう。シルバーフェンリルのモモ」
「わふっ」
「カーバンクルのルビ」
「ルビなのー」
「ドラゴンの赤ちゃんでピアだ」
「ピ……」

 ピア、シュンとしてるけど、でも片手はヒョイと上げるのね。

「フェンリル……カーバンクル……ド、ドラゴン……ッ!」
「まあ、3頭共ルルのペットと言うか、仲間と言うか……だな」
「なんとッ!」

 あぁー、クロノス侯爵もジュノー様もフリーズしてるわ。
 お父様が其々を保護した経緯を話された。まあ、モモは言えない事があるので誤魔化されたけど。

「信じられません! 本当に存在したとはッ!」
「クロノス侯爵、呉々も他言はしないで欲しい。何が起こるか分からんのでな」
「そうですね、勿論言いません」

 私はピアを膝に抱きながら、ルビとモモを撫でる。

「ピ……ピ、ピ」
「ピア、お水が欲しいの?」
「ピー」
「レオン様」
「ああ、ほらピア」
「ピー。ンギュング……プファー」
「ピア、大人しくしてろ」
「ピ……」

 ピア、レオン様に怒られちゃった。

 レオン様も一緒に早々に引き上げてきました。私の部屋です。リアンカがお茶を入れてくれてます。

「はぁ……ピア」

 レオン様、ため息を吐きながら頭を抱えてしまったわ。

「ピー」

 ピアは私の膝の上で抱き着いてきます。叱られるのが、分かっているのね。

「わふっ!」
「ピ、ピー……」
「レオン様、仕方ないわ。ピアをこれ以上叱っても…」
「まあ、そうだがな。モモもルビもお利口なのに、ピアはなんでかなぁ」
「そうね、でも、表情が豊かで可愛いじゃない」
「ピ……」
「わふっ!」
「ピー」
「モモも、もう叱らなくていいわよ。でもピア」
「ピー」
「私達はピアを守りたくて、ピアにお願いしているのよ。なのに、ピアが勝手に動いちゃったら守り様がないわ。だからね、ピア。約束はちゃんと守ってほしいの。さっきだって、レオン様はピアの処へ行こうと部屋を出るところだったのよ」
「ピー……」
「ピア寂しいのー。置いてかれると思ってるのー」
「ルビ。ルビもそう思う?」
「思わないのー。ルルもモモもそんな事しないのー」
「そうよ、置いて行くなんてしないわ」
「ピアはまだ馬鹿なのー」

 ルビったら辛辣ね。可愛いのに。

「ルビ、ピアはまだ赤ちゃんなのよ」
「ピア、俺達は置いていったりしないぞ。寧ろピアと一緒にいる為に色々考えてるんだ。ルルとユリウスが作ってくれた、ピアの腕輪もそうだ。ピアが大人になって独り立ちするなら止めないが、俺達からピアと離れる事はないぞ」
「ピー」
「ピア、わかった?」
「ピー」
「それより、ルル。公爵から聞いたけど、盗賊だってな」

 マールス侯爵一行が、襲われた件ね。

「レオン様、乙ゲーではどうなってますか?」
「婚約破棄して、ヒロインと第2王子が結ばれてハッピーエンドで終わりなんだよ。婚約破棄後の事はなにも出てこないんだ」
「そうですか。じゃあ今は乙ゲーのシナリオにはない世界って事ね」
「そうなるのかな」
「でも、どうしてクロノス侯爵一行が狙われたのかしら? やはり婚約破棄に関係するのかしら?」
「どうなんだろうなー。しかし今クロノス侯爵を狙っても得はないよな?」
「そうですよね。本当に只の盗賊だったとか?」
「いや、それなら捕まってから自害する理由が分からないな」
「そうね、念のためクロノス侯爵とジュノー様に誰か付いてる方が良いのかしら?」
「ラウと俺は討伐に行くぞ」
「えー、もう充分じゃないですか? 大量でしたよ」
「ルル、そんな問題じゃないんだな。俺にとってはレベル上なんだな」
「はぁ……」

 まあ、止めないけど。頑張ってね。レベルが低いってモモに言われちゃったものね。

 はい、翌日です。朝ごはんです。皆揃って食堂にいます。クロノス侯爵とジュノー様も一緒です。

「公爵、この卵料理はなんですか? とてもまろやかで美味しいですな」
「お? これは普通のオムレツだが?」
「これが普通ですか?」
「普通だな」

 お父様が家族に同意を求めたので、皆コクコクと頷いています。

「ティシュトリア公爵様、普通ではありません。王都にはこの様なオムレツはありません!」
「そ、そうか? ジュノー嬢。しかし我が領地では領民も普通に食べている料理だ」

 家族皆が、うんうんと頷いてます。

「パンも何故こんなに柔らかいのです?」
「侯爵、それも普通だな」
「「……」」

 クロノス侯爵もジュノー様も黙ってしまわれたわ。でも、普通なんだもの。ね。仕方ないわ。

「ピー」
「ピア、水か?」
「ピー!」

 あー、マイペースだわ。

「クロノス侯爵、今日は領地を案内しよう」
「おお、是非。お願いします。魔物は出ますかな?」
「領地内は魔物避けがあるので、大丈夫だ」
「迎えにきて下さったジュード殿や領主隊は本当にお強い! 魔物が出ても、アッと言う間に討伐されるので驚きました」
「ハハハ、街道に出る魔物程度でしたら、訳ないな。ルルーシュアでも軽く討伐するな」
「なんと!」

 お父様、やめてッ! 私のイメージが!
 食事の後、お父様はクロノス侯爵を領地の案内に連れ出されました。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界でショッピングモールを経営しよう

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,880pt お気に入り:1,826

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:326pt お気に入り:4,132

消えた令息が見えるのは私だけのようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:1,787

婚約破棄された転生令嬢はレベルアップする

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:7,717

偽りの愛など必要ありません。さっさと消えてください。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:683

私の夫が未亡人に懸想しているので、離婚してあげようと思います

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:37,056pt お気に入り:603

所詮、愛を教えられない女ですから

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:174,625pt お気に入り:3,388

処理中です...