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第一章
10ーバカ王子
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邸に戻ってきて、まずルフタの作業所に行って魔物を引渡します。
ルフタは、我が家の魔物素材担当の豪快で赤髪のおじさんです。息子と頑張ってくれています。綺麗に解体してくれる専門部署です。
邸の裏にある建物の1つがルフタのいる棟です。
1階にルフタの解体スペースと素材の保管倉庫。
2階にディアナの研究室と薬草の乾燥部屋とポーション系の保管室。
3階にディアナのお兄さんであるユリウスの研究室と魔石や魔道具の保管室があります。
最近屋上でディアナが養蜂を始めたみたい。蜂と言ってもこの世界の魔物だけど。何するんだろ?
「よう、ルル嬢。今日はなんだ?」
「今日はサーベルウルフ10頭よ」
「おう、こっちに出してくれ」
「ここでいい?」
「ああ……それにしても、モモでかくなったな! ハハハッ!」
「そうでしょ、でもカッコいいでしょ?」
「わふっ!」
「ああ! 超カッケーな! アハハハ!」
ルフタがガシガシとモモを撫でてます。
――ドサッ!
「サーベルウルフ10頭、ここでいいかしら」
「ちょ、ルル嬢、今何処から出した!?」
「ふふふ、秘密よ。便利でしょう」
「まったく! 昔っから訳分かんねーわ!」
「じゃ、宜しくね!」
「おうよっ!」
とってもアッサリハッキリした気持ちのいいオジサンです。
さて、まだ夕食には早いのですが、小腹が空いたのでサロンに来たら皆揃っていました。
お茶菓子をつまみながら紅茶を飲んでいます。相変わらずレオン様はお茶菓子に目をキラッキラさせています。
「ちょ、コレ! ロールケーキ!!」
「ええ、そうですよ。生クリームたっぷりの方ではないですけどね。定番ロールケーキよ。モモちゃんも食べる?」
「わふっ!『食べるわ!』」
メイドさんを呼んで、モモの分も持ってきてもらいます。
「モモは大きいから、ロールケーキも大きくしてね。お水もお願い」
メイドさんが用意してくれます。
それよりも、私はお父様に第2王子の事を聞きたいわ。
「お父様、第2王子殿下の事ですが……」
お父様はロールケーキでお口一杯ですね。
「んっ! ああ、そうだったな」
「ルル、興味あるのかしら?」
お母様のお言葉です。
「いえ、興味と言うか、第2王子殿下の婚約者は元クラスメイトの令嬢ですし。レオン様が少しご存知の様なのです」
「あら? 何をご存知なのかしら?」
お母様、レオン様を見ます。
「良い噂を聞かない、て程度なのですが。もし、私がルル嬢と婚約していなかったら、ルル嬢は第2王子の婚約者になっていたのではないかと思いまして」
「そう思われる理由は何かしら?」
「私もそうですが、皇太子となる第1皇子でない限り将来は臣籍降下をする事になります。私は小さい頃に冒険者を希望していましたが、一般的なのは臣籍降下して爵位を賜るか、有力な貴族に婿入りする事です。現在の私もそうです。そうなると、第2王子の年齢や王国の貴族の力バランス、家格から言ってもルル嬢が最有力候補ではないかと」
「よく分かっていらっしゃるわね。その通りですわ。実際に王家からお話がありましたわ」
「私が第2王子殿下の婚約者にですか?」
ビックリです。全然知らなかったわ。
「そうよ。でもね、お話があったほんの1ヶ月前にレオン殿下とのお話が纏まっていたのよ。レオン殿下が冒険者を希望されていたから、公にはしていなかったけれど。でも、お相手が帝国の第3皇子だったから王家は手を出せなかったのね。それで代わりに候補に上がったのが現在の婚約者であるご令嬢よ。私は正直、レオン殿下で良かったとその時に思ったわ」
「お母様、それはどうしてですか?」
「ルル、あなたは知らないけれど、現在の王とお父様は同級生だったのよ。王はご自分にも婚約者がいらしたのに、お父様とお会いする時にいつもついてきたりワザと邪魔をしてきたり色々あったのよ。だから大嫌いだったわ。なのに、よく私達の娘のルルにお話を持ってこれたものだと思ったわ」
お母様、我が国の王の事を大嫌いって言っちゃったわ。
「あれは王太后様の強い希望だったらしいがな」
「それでもですわ。あの頃、現王家そろって邪魔してきたじゃないですか。大方、前王弟殿下の息子に帝国の貴族の娘なんて、て思ってたんでしょうよ。お父様のお父上が前王弟な事もあって、ルルが婚約者の候補に上がったみたいだけど、お母様は絶対に嫌だったわ。もしあの時、レオン殿下とのお話が決まっていなかったらと思うとゾッとするわ」
うわー、お母様本当に嫌なのね。
「母上。父上と母上の事がなくても第2王子などにルルはやれませんよ」
「俺も兄貴と同意見だな」
まあ、お兄様達まで。どうして?
「ルルと第2王子とは同じ歳なんだよ。そして同じ学園に通っていた。なのにルルは第2王子と接点がなかっただろ? どうしてだと思う?」
「ラウ兄様の仰る通り接点はありませんでした。正直、殆ど印象に残ってませんし。何故かは……思いつく事はクラスが別だったからかしら? それ位しか分かりませんわ」
「ルル、その通りだよ。第2王子とルルとはクラスが違った。何故なら第2王子は学問も魔法も剣術も、出来る方ではなかったんだよ。だから成績でクラス分けされる学園では接点がなかった。バカ王子さ」
「そう。その上、性格がアレだろ? 俺様だよ。兄貴の言う通り何もかもルルより劣るようなクソ王子にはルルをやれない」
お兄様達、我が国の王子殿下をバカ王子とかクソ王子なんて。これは家族で不敬罪になっちゃうわ。
「第2王子は第1王子のディーユ殿下と違って、勉学も剣術も教師から直ぐに逃げ出してしまわれるそうだよ。王子なんだから、そんな事をする必要はない、てね。王子だからこそ人より励まなきゃね。誰も付いて来ないさ」
「ラウ兄様そうなのですか? では、その性格と成績が良くないせいで悪い噂がたっているのですか?」
「いや、悪い噂はその類ではない」
やっぱりお父様何かご存知なんだ。
「レオン殿下はどこまでご存知なのかしら?」
お母様も勿論ご存知ね。
「私が知っているのは、噂程度ですよ」
「レオン様、その噂とは何でしょう?」
勿体ぶるわね。焦ったいわ。
「まあ……」
「レオン殿下、構いませんわよ。仰って下さいな」
「では……私が知っている飽くまでも噂ですが。第2王子は、婚約者のご令嬢とは別の男爵令嬢一派に唆されて、第1王子を差し置いて王太子の座を狙っていると。そして、婚約者の侯爵令嬢も蔑ろにしていて、その男爵令嬢と婚姻なさるおつもりだと。
その上、その男爵令嬢は第2王子の他にも色々な貴族の男性と不埒な関係があるらしい」
「そんな……バカな事」
なんなの、その男爵令嬢!? バカなの!? それのどこがヒロインなのよ!
「ルル、本当なのよ」
「第2王子の婚約者のジュノー・クロノス令嬢とは、同じクラスだったのでよくお話しました。大人しい素直で真面目な方だと記憶しています」
「その通りだよ。だから男爵令嬢なんかにつけ込まれるんだよ。しかも男爵令嬢は第2王子の側近候補の3人にまで、ちょっかいを出しているそうだ」
「でもジュード兄様、婚約破棄などされたらジュノー侯爵令嬢はどうなるのですか? 将来を潰されてしまう様なものではないですか」
なんかムカついてきちゃった。
「ルル、思いを掛け過ぎる必要はないわ。あなたには関係ない事なのだから」
「お母様、でもこの王国の王子の事なのですよ。第1王子殿下はご聡明な方ですよね。お話した事もありますし、学園の生徒会をされてましたので覚えています。第2王子が王太子の座を狙って第1王子を陥れたりすれば、私達に無関係だとは言えなくなります」
「ルル、それでもよ。私達はルルをこの王国の王家には近付けたくはないのよ」
「お母様……」
「嫌な話になってしまったわ。さぁ、それよりもレオン殿下、ルル。二人共、無限収納と鑑定を持っていると聞いたわ! なんて喜ばしい事かしら! お父様とお母様に報告しないと」
「無限収納! 鑑定! ルル、そうなのか?」
「はい、ラウ兄様」
「やっぱルルは普通の令嬢じゃないね!」
「もう、ジュード兄様! 私は普通の令嬢ですよ」
「「「いや、違うだろ!」」」
「兄様、レオン様まで。ご自分だって無限収納持ってるのに」
レオン様、理不尽だわ。
「ハハッ、二人揃って凄いね!」
「今日の夕食はお祝いよ。ご馳走にしましょう!」
「今迄以上のご馳走ですか!?」
はい、レオン様、ご馳走に食い付きました。
ルフタは、我が家の魔物素材担当の豪快で赤髪のおじさんです。息子と頑張ってくれています。綺麗に解体してくれる専門部署です。
邸の裏にある建物の1つがルフタのいる棟です。
1階にルフタの解体スペースと素材の保管倉庫。
2階にディアナの研究室と薬草の乾燥部屋とポーション系の保管室。
3階にディアナのお兄さんであるユリウスの研究室と魔石や魔道具の保管室があります。
最近屋上でディアナが養蜂を始めたみたい。蜂と言ってもこの世界の魔物だけど。何するんだろ?
「よう、ルル嬢。今日はなんだ?」
「今日はサーベルウルフ10頭よ」
「おう、こっちに出してくれ」
「ここでいい?」
「ああ……それにしても、モモでかくなったな! ハハハッ!」
「そうでしょ、でもカッコいいでしょ?」
「わふっ!」
「ああ! 超カッケーな! アハハハ!」
ルフタがガシガシとモモを撫でてます。
――ドサッ!
「サーベルウルフ10頭、ここでいいかしら」
「ちょ、ルル嬢、今何処から出した!?」
「ふふふ、秘密よ。便利でしょう」
「まったく! 昔っから訳分かんねーわ!」
「じゃ、宜しくね!」
「おうよっ!」
とってもアッサリハッキリした気持ちのいいオジサンです。
さて、まだ夕食には早いのですが、小腹が空いたのでサロンに来たら皆揃っていました。
お茶菓子をつまみながら紅茶を飲んでいます。相変わらずレオン様はお茶菓子に目をキラッキラさせています。
「ちょ、コレ! ロールケーキ!!」
「ええ、そうですよ。生クリームたっぷりの方ではないですけどね。定番ロールケーキよ。モモちゃんも食べる?」
「わふっ!『食べるわ!』」
メイドさんを呼んで、モモの分も持ってきてもらいます。
「モモは大きいから、ロールケーキも大きくしてね。お水もお願い」
メイドさんが用意してくれます。
それよりも、私はお父様に第2王子の事を聞きたいわ。
「お父様、第2王子殿下の事ですが……」
お父様はロールケーキでお口一杯ですね。
「んっ! ああ、そうだったな」
「ルル、興味あるのかしら?」
お母様のお言葉です。
「いえ、興味と言うか、第2王子殿下の婚約者は元クラスメイトの令嬢ですし。レオン様が少しご存知の様なのです」
「あら? 何をご存知なのかしら?」
お母様、レオン様を見ます。
「良い噂を聞かない、て程度なのですが。もし、私がルル嬢と婚約していなかったら、ルル嬢は第2王子の婚約者になっていたのではないかと思いまして」
「そう思われる理由は何かしら?」
「私もそうですが、皇太子となる第1皇子でない限り将来は臣籍降下をする事になります。私は小さい頃に冒険者を希望していましたが、一般的なのは臣籍降下して爵位を賜るか、有力な貴族に婿入りする事です。現在の私もそうです。そうなると、第2王子の年齢や王国の貴族の力バランス、家格から言ってもルル嬢が最有力候補ではないかと」
「よく分かっていらっしゃるわね。その通りですわ。実際に王家からお話がありましたわ」
「私が第2王子殿下の婚約者にですか?」
ビックリです。全然知らなかったわ。
「そうよ。でもね、お話があったほんの1ヶ月前にレオン殿下とのお話が纏まっていたのよ。レオン殿下が冒険者を希望されていたから、公にはしていなかったけれど。でも、お相手が帝国の第3皇子だったから王家は手を出せなかったのね。それで代わりに候補に上がったのが現在の婚約者であるご令嬢よ。私は正直、レオン殿下で良かったとその時に思ったわ」
「お母様、それはどうしてですか?」
「ルル、あなたは知らないけれど、現在の王とお父様は同級生だったのよ。王はご自分にも婚約者がいらしたのに、お父様とお会いする時にいつもついてきたりワザと邪魔をしてきたり色々あったのよ。だから大嫌いだったわ。なのに、よく私達の娘のルルにお話を持ってこれたものだと思ったわ」
お母様、我が国の王の事を大嫌いって言っちゃったわ。
「あれは王太后様の強い希望だったらしいがな」
「それでもですわ。あの頃、現王家そろって邪魔してきたじゃないですか。大方、前王弟殿下の息子に帝国の貴族の娘なんて、て思ってたんでしょうよ。お父様のお父上が前王弟な事もあって、ルルが婚約者の候補に上がったみたいだけど、お母様は絶対に嫌だったわ。もしあの時、レオン殿下とのお話が決まっていなかったらと思うとゾッとするわ」
うわー、お母様本当に嫌なのね。
「母上。父上と母上の事がなくても第2王子などにルルはやれませんよ」
「俺も兄貴と同意見だな」
まあ、お兄様達まで。どうして?
「ルルと第2王子とは同じ歳なんだよ。そして同じ学園に通っていた。なのにルルは第2王子と接点がなかっただろ? どうしてだと思う?」
「ラウ兄様の仰る通り接点はありませんでした。正直、殆ど印象に残ってませんし。何故かは……思いつく事はクラスが別だったからかしら? それ位しか分かりませんわ」
「ルル、その通りだよ。第2王子とルルとはクラスが違った。何故なら第2王子は学問も魔法も剣術も、出来る方ではなかったんだよ。だから成績でクラス分けされる学園では接点がなかった。バカ王子さ」
「そう。その上、性格がアレだろ? 俺様だよ。兄貴の言う通り何もかもルルより劣るようなクソ王子にはルルをやれない」
お兄様達、我が国の王子殿下をバカ王子とかクソ王子なんて。これは家族で不敬罪になっちゃうわ。
「第2王子は第1王子のディーユ殿下と違って、勉学も剣術も教師から直ぐに逃げ出してしまわれるそうだよ。王子なんだから、そんな事をする必要はない、てね。王子だからこそ人より励まなきゃね。誰も付いて来ないさ」
「ラウ兄様そうなのですか? では、その性格と成績が良くないせいで悪い噂がたっているのですか?」
「いや、悪い噂はその類ではない」
やっぱりお父様何かご存知なんだ。
「レオン殿下はどこまでご存知なのかしら?」
お母様も勿論ご存知ね。
「私が知っているのは、噂程度ですよ」
「レオン様、その噂とは何でしょう?」
勿体ぶるわね。焦ったいわ。
「まあ……」
「レオン殿下、構いませんわよ。仰って下さいな」
「では……私が知っている飽くまでも噂ですが。第2王子は、婚約者のご令嬢とは別の男爵令嬢一派に唆されて、第1王子を差し置いて王太子の座を狙っていると。そして、婚約者の侯爵令嬢も蔑ろにしていて、その男爵令嬢と婚姻なさるおつもりだと。
その上、その男爵令嬢は第2王子の他にも色々な貴族の男性と不埒な関係があるらしい」
「そんな……バカな事」
なんなの、その男爵令嬢!? バカなの!? それのどこがヒロインなのよ!
「ルル、本当なのよ」
「第2王子の婚約者のジュノー・クロノス令嬢とは、同じクラスだったのでよくお話しました。大人しい素直で真面目な方だと記憶しています」
「その通りだよ。だから男爵令嬢なんかにつけ込まれるんだよ。しかも男爵令嬢は第2王子の側近候補の3人にまで、ちょっかいを出しているそうだ」
「でもジュード兄様、婚約破棄などされたらジュノー侯爵令嬢はどうなるのですか? 将来を潰されてしまう様なものではないですか」
なんかムカついてきちゃった。
「ルル、思いを掛け過ぎる必要はないわ。あなたには関係ない事なのだから」
「お母様、でもこの王国の王子の事なのですよ。第1王子殿下はご聡明な方ですよね。お話した事もありますし、学園の生徒会をされてましたので覚えています。第2王子が王太子の座を狙って第1王子を陥れたりすれば、私達に無関係だとは言えなくなります」
「ルル、それでもよ。私達はルルをこの王国の王家には近付けたくはないのよ」
「お母様……」
「嫌な話になってしまったわ。さぁ、それよりもレオン殿下、ルル。二人共、無限収納と鑑定を持っていると聞いたわ! なんて喜ばしい事かしら! お父様とお母様に報告しないと」
「無限収納! 鑑定! ルル、そうなのか?」
「はい、ラウ兄様」
「やっぱルルは普通の令嬢じゃないね!」
「もう、ジュード兄様! 私は普通の令嬢ですよ」
「「「いや、違うだろ!」」」
「兄様、レオン様まで。ご自分だって無限収納持ってるのに」
レオン様、理不尽だわ。
「ハハッ、二人揃って凄いね!」
「今日の夕食はお祝いよ。ご馳走にしましょう!」
「今迄以上のご馳走ですか!?」
はい、レオン様、ご馳走に食い付きました。
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