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第3章 領地に行ったのら

148ーハンザさん

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「ロロ、ちゃんと目が覚めた?」
「うん、れおにい」
「馬車に酔わないといいんだけどね」

 え……馬車って酔うのか? そうなのか? 不安になってきたのだ。

「大丈夫よ、私が抱っこしているから眠れば良いわ」
「りあねえ」

 リア姉が自分の剣と、レオ兄の槍や弓を持ってきた。なんか物騒なのだ。

「道中、何があるか分からないでしょう」

 そうなのか。この世界は移動するのも大変なのだ。車や電車があればいいのに。
 俺も木剣を持って行こうかな。うん、1番小さいのを持って行こう。
 そう思って、家の中から子供用の短い木剣を引っ張り出してきて腰のベルトに差す。
 うん、よしよし。いい感じではないか? 腰の木剣に手をやり、胸を張ってみる。
 今はお腹がいっぱいだから、胸よりお腹の方が出ているけど気にしないのだ。
 ベルトに無理矢理差しているから、ちょっとお腹が苦しいのだけども。

「むむむ」
「アハハハ! ロロ、それで行くのか?」
「らって、れおにい。きけんらから」
「じゃあ持って行こう。腰に差していたら座る時に邪魔だからね」
「しょう?」
「そうだよ」

 なんだ、せっかく良い感じだと思ったのに。みんなバタバタと準備をしている。俺ってお邪魔しちゃってる?

「おばあちゃん、もう出られる?」
「はいはい。エルザ、ユーリア、飲み物とおやつ持ってちょうだい」
「うん」
「はいはい」
「さあさあ、行きましょう」

 まるで遠足なのだ。おやつは500円までだよ~みたいな。
 ん? あれれ? 馬車に誰か乗っているぞ。誰なのだ? 幌のついてる荷台の奥にちょこんと座っている人がいたのだ。

「ああ、一緒に行く事になった商人のおじさんだよ」

 レオ兄が紹介してくれた。目的地が一緒で帰りも同じなのだそうだ。急遽、同じ馬車で行く事になったらしい。
 商人のおじさん、いやお爺さんと呼んでも良いかも知れないお年なのだ。だって、マリーよりも年上に見える。
 ハンザさんという。このルルンデの街で中規模な商店をしているらしい。
 でっぷりとしたお腹の小柄なお爺さん。白髪でショートボブのウエーブのある髪に、大き目のベレー帽の様な帽子を被っている。
 真っ白でフサフサとした口髭を生やしていて、可愛らしいお爺さんなのだ。

「ほい、ご一緒させてもらいすよ」
「はんじゃしゃん、おはよーごじゃましゅ」
「ほほー、なんとも可愛らしいちびっ子ですな」
「あらあら、ハンザさんじゃないですか」
「ほうほう、これはまた懐かしい人がおる」
「まりー?」
「私がこの街に、住んでいた頃から商店をされているんですよ」
「ひょぉー」
「わふ」

 マリーが、お元気そうでとか何とかハンザさんと話していると、ピカがノッシノッシとやって来た。

「ほほー、なんと。大きなワンちゃんだ」
「ぴか」
「ほほい?」
「おなまえ、ぴかなのら」
「ピカですか?」
「しょう」
「これはまた、大きいのに可愛らしいお名前だ」
「わふ」

 シュタッとピカが馬車に飛び乗った。ピカさん、俺は? 俺を忘れてはいないかね?

「ぴか、まって」
「わふ」
「ロロ、乗せてあげるわ」
「りあねえ、ありがと」

 リア姉に抱っこしてもらって一緒に馬車へ乗る。
 思ったより小さいのだ。一応、幌は張ってあるが荷馬車みたいなものなのだ。
 荷台の両側に座れるように段差が作り付けてあり、ハンザさんの商品らしき木箱が幾つも隅っこに乗せてある。

「ロロ、クッション持ってきたの?」
「りあねえに、ちゅくったのら。こっこちゃんの羽根らから、ふわふわなのら」
「ええー! ロロー! 嬉しいぃー!」

 と、抱き着いてくる。ほっぺにスリスリと、お腹をモミモミが付いてくる。もう本当に何度も言っているんだけど。

「りあねえ、やめれ」
「もう、ロロったら冷たいんだからぁ」

 そして、忘れてはいけない。賑やかな小さいのも乗せるのだ。

「ほらほら、順番だよ」

 みんな小さいから、自分では馬車に乗れない。ディさんが乗せてくれるのを順番に待っているのだ。ピヨヨ、ピヨヨ。キャンキャン、アンアンと鳴きながらだ。
 自分で乗れないかと、ジャンプしているのは誰だ?
 本当に行くのだね。まあ、賑やかでいいけど。

「ほうほう、これは驚いた」

 雛やプチゴーレム達を見て、ハンザさんが目をまん丸にしている。そりゃ、驚いても仕方がない。雛達は未だしも、土人形が動いているのだから。
 俺はハンザさんに紹介したのだ。俺は礼儀をわきまえるテイマーなのだから。

「みんなしょろって。はんじゃしゃん、ふぉーちゃん、りーちゃん、こーちゃん、いっちー、にっちー、さっちー、よっちーごっちーなのら。みんなー、はんじゃしゃんに、ごあいしゃちゅしゅるのら」
「ピヨピヨ!」
「アンアン」

 よろしくアルね! よろしく! と、口々に話している。余計にハンザさんはびっくりだ。まん丸にしていたお目々が零れ落ちそうなのだ。
 ま、直ぐに慣れるだろう。ふふふん。

「俺、レオ兄の隣りがいい!」
「これ、ニコ。バタバタしないの」

 ニコ兄が、御者台に座っているレオ兄の隣りを陣取った。いいなぁ。俺もあそこが良かったのだ。レオ兄とニコ兄の間からヒョコッと顔を出す。

「ロロ、ちゃんと座ってないと揺れるから危ないよ」
「ロロはまだ小さいからここは無理だ」
「えぇ~」

 仕方ない。リア姉の隣に座るのだ。




 ◇◇◇

お読みいただき有難うございます🌟
やっと出発するようです😅
ロロの初めての遠出になりますね~😊
感想を有難うございます💝楽しく読ませて頂いてます😊
3章も頑張ります🌟宜しくお願いします😊
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