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第1章 ルルンデで生活するのら
42ー弱いの
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お姉さんが暗い目をして俯いた。
「嫌なの?」
「そうじゃないの。そうじゃないんだけど……」
「姉上」
「その……私より……弱いのよ」
「え……?」
「ぶははッ!」
あらら。それは残念だね。そこに拘っちゃうんだね。
ギルマスが吹き出している。笑ったら駄目なのだ。きっと本人にとっては、深刻な問題なのだ。
「剣を持ってもフラフラなのよ。真面に振れないの。だから同じ騎士団でも、事務方志望なのよ」
おやおや、それは武官というのかな? 国の軍部に携わるから武官に入るのか? やる事は、どっちかというと文官なのではないのかな?
一緒に鍛練をした事もあるらしい。でも、走り込みをすれば途中で周回遅れになる。木剣で対戦すれば、振り上げながら躓いて転ける。運動神経がまるで無いそうだ。
「軍部だから、大きな括りでは武官なんだろうけど……本当に弱いの。向いてないのよ」
弱い弱いと言うけども、強さで人を決めるのはどうかと思うぞ。健康ならそれで良いじゃないか。
今の俺なんて、誰よりも弱っちい自信がある。将来は強くなる予定なのだ。
「私が剣を持っていても、文句を言う人じゃないのよ。逆にね『凄いよ!』て、言いながらキラキラした目で見てくるの。でもね……それってどうなの? て、思うでしょう? 旦那様より強いなんて……」
「あぁ~……確かに……」
「ぶふッ!」
こら、ギルマス。ここは笑っては駄目なのだ。本人は真剣なのだよ。
「あ、わりぃ。けど、そんな事どうしようもねーだろう? 人には向き不向きがあるんだ」
「分かっているわ。本人も分かっているのよ。でもね……これ見よがしに剣を持つのもどうかと思うのよ」
なるほどね。それで、卒業したらもう剣は持たないと。
遠慮をしているのか、気配りなのか。
「だから、卒業するまでに何か実績が欲しかったのよ。今までの自分にけじめをつけたかったの」
「それこそ、どうでも良い事じゃない?」
「どうでもよくないわ! 幼い頃から剣を持ってきたのよ。なのに……何か残したいじゃない!」
そうか? それは、あれだね。
「それは、自己満足っていうのよ」
あらら。リア姉、ストレートに言っちゃった。
ほら、お姉さんが顔を真っ赤にしてウルウルお目々になっちゃったぞ。
「分かっているわよ! でも、今までの私を否定されるみたいで……何かしないと我慢できなかったの! でもそれで、マティまで危険な目に遭わせてしまって……申し訳ないと思っているわ」
「姉上……僕は自分で決めて一緒にダンジョンに潜ったんです。だから、責任を感じる必要はありません」
「マティ……」
「剣を持てなくなったからと言って、あなたがあなたじゃなくなる訳じゃないわ。それに、そんなあなたを相手の人も知っているんでしょう? なら、そんな事よりもっとお互いの気持ちを話す方が大切じゃないかしら? それにあなたが、剣を使えるならいざと言う時に守れるわ」
お、いつも脳筋気味のリア姉が良い事をいったぞ。偶には良い事をいうのだ。
「ロロ、私だってちゃんと考えているのよ」
「りあねえ、なんもいってないのら」
「あはは、ロロの目が語っていたよ」
「ぴぇ……」
レオ兄、そうなのか? そんな事があるのか? それは想定外なのだ。
「アハハハ! ロロ、キョトンとしてんじゃねーぞ。ま、これから死ぬまで夫婦でいるんだ。最初に話し合っておく方が良いんじゃねーか?」
「そうかしら……?」
「姉上、そうですよ。話のできない人じゃないんだし」
「そうね」
はいはい。最初からそうすれば良かったのだ。そうしたら、同じダンジョンに潜るのだって、もっと気分良く前向きな気持ちで挑めただろうに。
「話してみるわ。今回の事でも、すっごく心配をかけちゃって……泣き出しそうだったもの」
「ふふふ、そうでしたね。ウルウルされてましたね」
ご令嬢が怪我をしたと、知らせを受けた婚約者は大慌てで馬を走らせ飛んできたそうだ。無事な令嬢を見ると、体をプルプルと震わせながら涙目になっていたらしい。
そして抱きつかれ、二度とこんなことはしないで欲しいと泣きつかれたそうなのだ。
なんだ、良い人じゃないか。会話は大事だよ。夫婦になるんだから余計に大事だ。
なんて、俺は前世でも夫婦になった事がないけど。
この事が切っ掛けになって、リア姉とレオ兄はこの姉弟と連絡を取り合うようになったのだ。
俺達の事情は話していないみたいだけど。でも、姉達は元貴族だ。学園にも通っていた。
気が合ったのだろう。貴族としての、しがらみを気にしなくても良い。その上、話も理解できる。
それが、あの2人には心地良かったのではないかと思うのだ。冒険者としても話せるのだしな。
リア姉とレオ兄にとっても、良い刺激になったみたいなのだ。フィーネ、マティ、リア、レオとお互いを呼ぶようになっていた。
もうダンジョンを攻略するなんて無茶はしないけど、リア姉達と一緒にダンジョンに挑む事もあったのだ。
2人共、吹っ切れた様だ。吹っ切れたような表情で、リア姉達と楽しそうにダンジョンに挑んでいる。うちにご飯を食べに来る事もあった。
そんな事を続けていると、2人は無事にランクを上げた。リア姉達と同じDランクになったのだ。
「嫌なの?」
「そうじゃないの。そうじゃないんだけど……」
「姉上」
「その……私より……弱いのよ」
「え……?」
「ぶははッ!」
あらら。それは残念だね。そこに拘っちゃうんだね。
ギルマスが吹き出している。笑ったら駄目なのだ。きっと本人にとっては、深刻な問題なのだ。
「剣を持ってもフラフラなのよ。真面に振れないの。だから同じ騎士団でも、事務方志望なのよ」
おやおや、それは武官というのかな? 国の軍部に携わるから武官に入るのか? やる事は、どっちかというと文官なのではないのかな?
一緒に鍛練をした事もあるらしい。でも、走り込みをすれば途中で周回遅れになる。木剣で対戦すれば、振り上げながら躓いて転ける。運動神経がまるで無いそうだ。
「軍部だから、大きな括りでは武官なんだろうけど……本当に弱いの。向いてないのよ」
弱い弱いと言うけども、強さで人を決めるのはどうかと思うぞ。健康ならそれで良いじゃないか。
今の俺なんて、誰よりも弱っちい自信がある。将来は強くなる予定なのだ。
「私が剣を持っていても、文句を言う人じゃないのよ。逆にね『凄いよ!』て、言いながらキラキラした目で見てくるの。でもね……それってどうなの? て、思うでしょう? 旦那様より強いなんて……」
「あぁ~……確かに……」
「ぶふッ!」
こら、ギルマス。ここは笑っては駄目なのだ。本人は真剣なのだよ。
「あ、わりぃ。けど、そんな事どうしようもねーだろう? 人には向き不向きがあるんだ」
「分かっているわ。本人も分かっているのよ。でもね……これ見よがしに剣を持つのもどうかと思うのよ」
なるほどね。それで、卒業したらもう剣は持たないと。
遠慮をしているのか、気配りなのか。
「だから、卒業するまでに何か実績が欲しかったのよ。今までの自分にけじめをつけたかったの」
「それこそ、どうでも良い事じゃない?」
「どうでもよくないわ! 幼い頃から剣を持ってきたのよ。なのに……何か残したいじゃない!」
そうか? それは、あれだね。
「それは、自己満足っていうのよ」
あらら。リア姉、ストレートに言っちゃった。
ほら、お姉さんが顔を真っ赤にしてウルウルお目々になっちゃったぞ。
「分かっているわよ! でも、今までの私を否定されるみたいで……何かしないと我慢できなかったの! でもそれで、マティまで危険な目に遭わせてしまって……申し訳ないと思っているわ」
「姉上……僕は自分で決めて一緒にダンジョンに潜ったんです。だから、責任を感じる必要はありません」
「マティ……」
「剣を持てなくなったからと言って、あなたがあなたじゃなくなる訳じゃないわ。それに、そんなあなたを相手の人も知っているんでしょう? なら、そんな事よりもっとお互いの気持ちを話す方が大切じゃないかしら? それにあなたが、剣を使えるならいざと言う時に守れるわ」
お、いつも脳筋気味のリア姉が良い事をいったぞ。偶には良い事をいうのだ。
「ロロ、私だってちゃんと考えているのよ」
「りあねえ、なんもいってないのら」
「あはは、ロロの目が語っていたよ」
「ぴぇ……」
レオ兄、そうなのか? そんな事があるのか? それは想定外なのだ。
「アハハハ! ロロ、キョトンとしてんじゃねーぞ。ま、これから死ぬまで夫婦でいるんだ。最初に話し合っておく方が良いんじゃねーか?」
「そうかしら……?」
「姉上、そうですよ。話のできない人じゃないんだし」
「そうね」
はいはい。最初からそうすれば良かったのだ。そうしたら、同じダンジョンに潜るのだって、もっと気分良く前向きな気持ちで挑めただろうに。
「話してみるわ。今回の事でも、すっごく心配をかけちゃって……泣き出しそうだったもの」
「ふふふ、そうでしたね。ウルウルされてましたね」
ご令嬢が怪我をしたと、知らせを受けた婚約者は大慌てで馬を走らせ飛んできたそうだ。無事な令嬢を見ると、体をプルプルと震わせながら涙目になっていたらしい。
そして抱きつかれ、二度とこんなことはしないで欲しいと泣きつかれたそうなのだ。
なんだ、良い人じゃないか。会話は大事だよ。夫婦になるんだから余計に大事だ。
なんて、俺は前世でも夫婦になった事がないけど。
この事が切っ掛けになって、リア姉とレオ兄はこの姉弟と連絡を取り合うようになったのだ。
俺達の事情は話していないみたいだけど。でも、姉達は元貴族だ。学園にも通っていた。
気が合ったのだろう。貴族としての、しがらみを気にしなくても良い。その上、話も理解できる。
それが、あの2人には心地良かったのではないかと思うのだ。冒険者としても話せるのだしな。
リア姉とレオ兄にとっても、良い刺激になったみたいなのだ。フィーネ、マティ、リア、レオとお互いを呼ぶようになっていた。
もうダンジョンを攻略するなんて無茶はしないけど、リア姉達と一緒にダンジョンに挑む事もあったのだ。
2人共、吹っ切れた様だ。吹っ切れたような表情で、リア姉達と楽しそうにダンジョンに挑んでいる。うちにご飯を食べに来る事もあった。
そんな事を続けていると、2人は無事にランクを上げた。リア姉達と同じDランクになったのだ。
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