68 / 106
第1章 赤ちゃんじゃん!
68ー子守歌
しおりを挟む
母が王妃に送ったオルゴール。それはリンリンが魔法を付与した物だった。
それを聞いて俺は思い出したのだ。精神干渉だ。人の精神に干渉して操る魔法。これは使い方によっては、恐ろしい洗脳の手段になる。だからどの国でも使用条件を厳しく管理されている。
万が一、秘密情報を取得する為に精神干渉系魔法を使ったことが発覚した場合は重罪となる。
これはどの国でもそうだ。と、いってもそうホイホイと精神干渉系魔法が使える者がいる訳でもない。ジョブで言うと賢者より上位のジョブを持つ者、そして聖職者だ。
当然大賢者だった俺も使えた。5歳の『鑑定の儀』の時に大賢者だと鑑定されると幾つか誓約書にサインをした事を覚えている。
まだ5歳の子供に誓約書を書かせるんだ。それだけ危険な魔法だという事だ。
その精神干渉系魔法を使ったのではないかと思ったのだ。精霊なら難なく使えるだろうし。
「ああちゃ」
「あら、ラウ。もしかして分かったのかしら?」
「ぶぶぶ」
分かったのではない。危険な魔法を使っていないのか心配しているんだ。
もしも、それが公になって母や父が捕まったりしないのか?
「ふふふ、ラウったら本当にお利口さんだわ。母様は怖くなってしまうわ」
そう言いながら、母は俺を抱きしめてくれる。
そりゃそうだろう、まさか0歳児にそんな事が分かるなんて普通じゃないからな。
「ラウ、大丈夫なのよ~」
本当なのかよ。リンリンも精霊だからな。人とは感覚が違うだろう? 人の国の約束事なんて知らないだろうし。
「陛下から直々の依頼だったのよ」
「あば?」
なんだって、王が頼んできたという事なのか?
元々王妃は王子の教育と躾けに厳しい人だったらしい。それが懐妊してからより厳しくなった。
あの王子の様子を見ていれば分かる。王妃の一言に反応して怖がっていた。
普通の子供ならどうだ? 3歳児だぞ。そんなの何を言われたって、言う事なんて聞かないさ。やんちゃな盛りなんだから。だが、可愛い盛りだとも言う。
そんな王子にあの対応だ。普段はもっと厳しいのだろうと容易に想像がつく。
「それを見ていらした陛下が、ずっと考えていらしたみたいなのよ。それをお父様に相談されたの」
今は懐妊が影響しているのかも知れない。だから心を落ち着かせる様な事を考えたのだそうだ。
オルゴールを鳴らし、その音色を聞く事によって心が落ち着く。そんな軽い魔法なのだそうだ。
なら、精神干渉って訳でもないのか?
「全然違うわよ~。どちらかというと子守歌ね」
「あばー」
アハハハ、子守歌とはよく言ったものだ。
だがとても良い考えだ。それで嫉妬心とか、妬みとかも抑えられたりするのかな?
「もちろんよ、負の感情を抑えるわ~」
「あぶあー」
抑えるだけじゃ物足りないな。負の感情を消したりできたら良いな。
「あらあら~、ラウったら本当にお利口だわ~」
リンリンまで何を言っているんだ。俺は元大賢者だぞ。
「もとじゃないみゃ。いまもみゃ」
暫く大人しかったミミが口を出してきた。どうして大人しかったかと言うとだな。それはもう決まっている。
「ももじゅーしゅ、もうないみゃ」
一人……いや、一羽か? おフクに桃ジュースを貰って飲んでいたんだ。ズリーな。
飲み終わったのだろう。
「そうね~、元じゃないわね~」
あ、リンリンまでそんな事を言う。俺はそれを隠蔽したいんだ。
「あら~、それは無理よ~」
ああ、やっぱ無理なのか。ミミが知らないだけかと思ったりしたのだけど。
「らうみぃ! ひろいみゃ! みみはてんしゃいみゃ!」
「あぶぶぶ」
はいはい、天才の鳥さんだよ。
「らから、みみはしぇいれいみゃ!」
「あらあら、何を話しているのかしら? 母様も混ぜて欲しいわ」
おっと、母がいるのを忘れていたぜ。これは秘密なのだ。ミミ、リンリン、秘密だからな。
「わかってるみゃ」
「分かったわよ~」
「ああちゃ」
話を変えようと、俺は母の身体に両手で抱きついた。甘えるとも言う。
「ふふふ、ラウったら。分かったわよ、母様は聞かない事にしておきましょう」
「あば」
おっと、読まれているじゃないか。やっぱ母には敵わない。
どうして前の時に気付かなかったのか。ちょっと反発したり、大人な振りをしてみたり。ほら、年頃の男なら誰でもあるだろう? 照れもあるんだ。
そんな事、するんじゃなかったと今なら思う。
もっとちゃんと両親と意思疎通ができていたらと後悔してしまう。
俺の知らなかった事が、沢山あったんだ。大事なのに、知らされていなかった。
いつもの会議だってそうだ。そんな事をしているのも俺は知らなかったんだ。あの会議室に入った事がなかったのだから。
「お散歩しましょうか、ラウ」
「あう!」
母に抱っこしてもらって庭に出る。そのまま母のお気に入りの四阿へと向かう。俺はちゃんとベビーシューズも履いてるぜ。
これは俺のパーフェクトなヨチヨチ歩きを、披露するべきだろうな!
「また、ももじゅーしゅがのめるのみゃ?」
「あぶぶ」
また桃ジュースかよ。さっき飲んだばかりじゃないか。
それを聞いて俺は思い出したのだ。精神干渉だ。人の精神に干渉して操る魔法。これは使い方によっては、恐ろしい洗脳の手段になる。だからどの国でも使用条件を厳しく管理されている。
万が一、秘密情報を取得する為に精神干渉系魔法を使ったことが発覚した場合は重罪となる。
これはどの国でもそうだ。と、いってもそうホイホイと精神干渉系魔法が使える者がいる訳でもない。ジョブで言うと賢者より上位のジョブを持つ者、そして聖職者だ。
当然大賢者だった俺も使えた。5歳の『鑑定の儀』の時に大賢者だと鑑定されると幾つか誓約書にサインをした事を覚えている。
まだ5歳の子供に誓約書を書かせるんだ。それだけ危険な魔法だという事だ。
その精神干渉系魔法を使ったのではないかと思ったのだ。精霊なら難なく使えるだろうし。
「ああちゃ」
「あら、ラウ。もしかして分かったのかしら?」
「ぶぶぶ」
分かったのではない。危険な魔法を使っていないのか心配しているんだ。
もしも、それが公になって母や父が捕まったりしないのか?
「ふふふ、ラウったら本当にお利口さんだわ。母様は怖くなってしまうわ」
そう言いながら、母は俺を抱きしめてくれる。
そりゃそうだろう、まさか0歳児にそんな事が分かるなんて普通じゃないからな。
「ラウ、大丈夫なのよ~」
本当なのかよ。リンリンも精霊だからな。人とは感覚が違うだろう? 人の国の約束事なんて知らないだろうし。
「陛下から直々の依頼だったのよ」
「あば?」
なんだって、王が頼んできたという事なのか?
元々王妃は王子の教育と躾けに厳しい人だったらしい。それが懐妊してからより厳しくなった。
あの王子の様子を見ていれば分かる。王妃の一言に反応して怖がっていた。
普通の子供ならどうだ? 3歳児だぞ。そんなの何を言われたって、言う事なんて聞かないさ。やんちゃな盛りなんだから。だが、可愛い盛りだとも言う。
そんな王子にあの対応だ。普段はもっと厳しいのだろうと容易に想像がつく。
「それを見ていらした陛下が、ずっと考えていらしたみたいなのよ。それをお父様に相談されたの」
今は懐妊が影響しているのかも知れない。だから心を落ち着かせる様な事を考えたのだそうだ。
オルゴールを鳴らし、その音色を聞く事によって心が落ち着く。そんな軽い魔法なのだそうだ。
なら、精神干渉って訳でもないのか?
「全然違うわよ~。どちらかというと子守歌ね」
「あばー」
アハハハ、子守歌とはよく言ったものだ。
だがとても良い考えだ。それで嫉妬心とか、妬みとかも抑えられたりするのかな?
「もちろんよ、負の感情を抑えるわ~」
「あぶあー」
抑えるだけじゃ物足りないな。負の感情を消したりできたら良いな。
「あらあら~、ラウったら本当にお利口だわ~」
リンリンまで何を言っているんだ。俺は元大賢者だぞ。
「もとじゃないみゃ。いまもみゃ」
暫く大人しかったミミが口を出してきた。どうして大人しかったかと言うとだな。それはもう決まっている。
「ももじゅーしゅ、もうないみゃ」
一人……いや、一羽か? おフクに桃ジュースを貰って飲んでいたんだ。ズリーな。
飲み終わったのだろう。
「そうね~、元じゃないわね~」
あ、リンリンまでそんな事を言う。俺はそれを隠蔽したいんだ。
「あら~、それは無理よ~」
ああ、やっぱ無理なのか。ミミが知らないだけかと思ったりしたのだけど。
「らうみぃ! ひろいみゃ! みみはてんしゃいみゃ!」
「あぶぶぶ」
はいはい、天才の鳥さんだよ。
「らから、みみはしぇいれいみゃ!」
「あらあら、何を話しているのかしら? 母様も混ぜて欲しいわ」
おっと、母がいるのを忘れていたぜ。これは秘密なのだ。ミミ、リンリン、秘密だからな。
「わかってるみゃ」
「分かったわよ~」
「ああちゃ」
話を変えようと、俺は母の身体に両手で抱きついた。甘えるとも言う。
「ふふふ、ラウったら。分かったわよ、母様は聞かない事にしておきましょう」
「あば」
おっと、読まれているじゃないか。やっぱ母には敵わない。
どうして前の時に気付かなかったのか。ちょっと反発したり、大人な振りをしてみたり。ほら、年頃の男なら誰でもあるだろう? 照れもあるんだ。
そんな事、するんじゃなかったと今なら思う。
もっとちゃんと両親と意思疎通ができていたらと後悔してしまう。
俺の知らなかった事が、沢山あったんだ。大事なのに、知らされていなかった。
いつもの会議だってそうだ。そんな事をしているのも俺は知らなかったんだ。あの会議室に入った事がなかったのだから。
「お散歩しましょうか、ラウ」
「あう!」
母に抱っこしてもらって庭に出る。そのまま母のお気に入りの四阿へと向かう。俺はちゃんとベビーシューズも履いてるぜ。
これは俺のパーフェクトなヨチヨチ歩きを、披露するべきだろうな!
「また、ももじゅーしゅがのめるのみゃ?」
「あぶぶ」
また桃ジュースかよ。さっき飲んだばかりじゃないか。
512
お気に入りに追加
1,409
あなたにおすすめの小説
私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない
丙 あかり
ファンタジー
ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。
しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。
王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。
身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。
翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。
パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。
祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。
アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。
「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」
一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。
「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。
******
週3日更新です。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
私を虐げてきた妹が聖女に選ばれたので・・・冒険者になって叩きのめそうと思います!
れもん・檸檬・レモン?
ファンタジー
私には双子の妹がいる
この世界はいつの頃からか妹を中心に回るようになってきた・・・私を踏み台にして・・・
妹が聖女に選ばれたその日、私は両親に公爵家の慰み者として売られかけた
そんな私を助けてくれたのは、両親でも妹でもなく・・・妹の『婚約者』だった
婚約者に守られ、冒険者組合に身を寄せる日々・・・
強くならなくちゃ!誰かに怯える日々はもう終わりにする
私を守ってくれた人を、今度は私が守れるように!
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる