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人外さん 20231006
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目の前には可愛らしい女の子。後ろには僕の飼い主である人外さんがなにやら他の人外と話をしながらこちらを見ている。
「つがうの初めて?あんた男なんだし、楽でいいわよ」
女の子は身にまとっていた布をあっさりと足元に放り投げながらそんな風に言う。
「番いでもいた方がさみしくないよね」
そう笑顔で提案してくれた人外さんの気持ちを無下にはできなかった。その結果、あれよこれよという間に今日は番い候補の元へ来たという訳だ。
日本から迷い込んできたという僕には元の世界の記憶が曖昧だ。
そんな自分のことすら分からない僕を拾ってくれたのが、ご主人様である人外さんだ。
穏やかで優しくて、馴染みのある外見ではないけれど気がつけば大好きになっていた。
好きな相手から「番いでも」と言われてしまって悲しみがあった。だけど優しさからの気持ちを受け入れたい。
戸惑う僕に女の子は「ほら、あんたも脱ぎなさいよ」とシャツのボタンに手をかけてきた。
「え、ここで、いま?」
大きな部屋、後ろのソファには人外さんたちが座ってこちらを見ている。
「あんたここ育ちじゃないんだったっけ。あたしたちは彼らとは違うから当たり前でしょ」
うろ覚えな僕の常識では、こういうことは極めてプライベートな事だったと思う。
少なくとも、好きな人の前で及ぶような事じゃない。僕は泣きそうな気持ちになった。
女の子はそんな僕にイライラした顔をして、少し乱暴にシャツを引っ張る。
怖い。そう思った時ぐいと後ろに引っ張られた。
「すまない、やはり私以外に触れさせるのも嫌だ。番わせるのはやめにしていいかい」
大きな人外さんの腕の中に抱え込まれた。僕は情けなくもボロボロと泣いて、人外さんの胸に顔を擦り付けた。
この時の僕はまだ知らない。
自分の気持ちを自覚した人外さんによって、恥ずかしくなるくらい愛される未来を。
終
「つがうの初めて?あんた男なんだし、楽でいいわよ」
女の子は身にまとっていた布をあっさりと足元に放り投げながらそんな風に言う。
「番いでもいた方がさみしくないよね」
そう笑顔で提案してくれた人外さんの気持ちを無下にはできなかった。その結果、あれよこれよという間に今日は番い候補の元へ来たという訳だ。
日本から迷い込んできたという僕には元の世界の記憶が曖昧だ。
そんな自分のことすら分からない僕を拾ってくれたのが、ご主人様である人外さんだ。
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好きな相手から「番いでも」と言われてしまって悲しみがあった。だけど優しさからの気持ちを受け入れたい。
戸惑う僕に女の子は「ほら、あんたも脱ぎなさいよ」とシャツのボタンに手をかけてきた。
「え、ここで、いま?」
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怖い。そう思った時ぐいと後ろに引っ張られた。
「すまない、やはり私以外に触れさせるのも嫌だ。番わせるのはやめにしていいかい」
大きな人外さんの腕の中に抱え込まれた。僕は情けなくもボロボロと泣いて、人外さんの胸に顔を擦り付けた。
この時の僕はまだ知らない。
自分の気持ちを自覚した人外さんによって、恥ずかしくなるくらい愛される未来を。
終
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