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オメガと拍手 2023831

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あるアルファは類に漏れず血統もよく頭も切れる男だった。運命の番いなんて信じずに遊び歩く軽薄な男でもあった。
だがアルファはバーで1人の男に出会う。共にグラスを傾けるうちに香り立つ男の匂いに惹かれる。
「ひょっとして俺の運命か?」
男ははにかみ、頷いた。
そこから先は怒涛のようにホテルになだれ込み「噛んで」という男に言われるがままうなじを噛んだ。運命の番いとの夜は最高で、まるで猿のように盛った。
しかし一夜開けると隣に運命の番いがいない。だがそれで諦める男ではなかった。あの男を手に入れる、その一心であらゆる手を使い捜索を続け、そして運命の番いを見つけた。
「探したぞ」
バーカウンターに座る運命の番いはしまったという顔を隠さない。
「あーあ。見つかっちまった。なに、いくら欲しいの」
あの晩、腕の中で可憐だった彼はそうあけすけに話すから驚いた。
「なんだよ、知ってるんだろうちのグループの話。薬の事も」
男は頷いた。
運命の番いを捜索しているうちに、彼はある詐欺グループに加担している事が分かった。
番いのいないアルファに薬で運命の番いだと思い込ませ、騙して金を搾り取る手口だ。
「だが君は金を取らなかった」
アルファである男の財布にはカードも現金もそれなりに入っていたが一切手をつけた形跡はなかった。
その上、そのグループはもっと長期的に金を引き出していくという。一晩で姿をくらますなんてありえない、とはある警視の話だ。
男の顔はみるみる朱に染まる。
「うるせえな。どっちにしろ俺たちは運命の番いでもなんでもねぇんだからさっさとどっか行けよ」
そんな風に突き放す目の前の男がベータだと言うことも、既に調べて知っていた。だからあんなにも簡単にうなじを差し出したのだろう。
「運命の番いじゃなくても、人を好きになっていいだろう」
「…は?」
男は真剣な顔をしてバーのフロアに跪いた。
「好きだ。あの番から君のことが忘れられない。オメガでなくとも運命の番いでなくても構わない。結婚しよう」
そう言われたベータは顔を赤くして金魚のように口をパクパクとさせた。
「な、な…」
「元々運命の番いなんて信じてない。だがここまで思えたのは君か初めてだ」
男は薬にある程度体勢を付けていたのもあるし、ベッドの中で男がオメガでは無いことも薄々勘づいていた。それでもベータだと言う男自身の匂いが馨しかった。
戸惑う男の周囲からはプロポーズだと思われて拍手が湧いた。

そうしてあの手この手で絡め取られて、気がつけば男の隣で同じ指輪を重ねているのだった。


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