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女の子は皆ふわふわで綿菓子みたいな存在だと思っていた時もありました
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「は~、笑った笑ったぁ。」
しばらくすると、ミルさんは目に溜まった涙を拭きながら顔を上げた。
笑ってもらえて良かった、そう思っておこう。
「お礼にぃ、面白いこと教えてあげるよぉ。給餌行動って、知ってる?」
知っている。
鳥なんかがメスに求愛するときにエサを貢ぐやつだ。自然界は割とオスが必死にならないといけないと、妙に感心した記憶がある。
ん?
まさか……。
「え……まさか?まさか?ねえミルさん!まさかだよね!?」
「人生には3つの坂があってねぇ」
上り坂、下り坂、そしてまさか!
って、ちげぇぇぇぇ!
結婚式のスピーチみたいに返してんじゃねぇぞぉぉぉ!!
「正解ぃ~。番い殿の食事は陛下が自分で作ってるらしいよぉ?
んでさぁ、アンタそれ、全部食べてるっしょお」
「まじかあぁぁ」
「昨日は夕飯までに魔獣捕まえられなかったらしいよぉ?まじでウケる」
だからガチガチのパンとスープだけだったのか?
まさか捕まえて調理までがワンセットだったとは。
竜王とはいえ、慣れない狩りは難しかったのだろうか。
「つーかあの人、魔獣全部塵にしちゃって肉が残らなかったんだってぇ。ないわ~竜人の恥だわぁ~」
「塵……?ものの例えカナ?」
「力加減ド下手くそでガチで塵にしたらしいよぉ?だから今頃必死に狩ってるんじゃないのぉ?」
太陽はもうすぐ昼を示す頃。
俺の腹も空腹を訴えている。
だが、ここで出される食事が、まさかの竜王手作り♡だったとは……。
しかもそれが給餌行動だったとは……。
食べたくねぇぇぇ~!!
――――――――
しかし時は無情だ、丸太小屋には何時もの可愛いメイドさんが食事を持ってやって来た。
彼女はこの家に来てからずっと食事を持って来てくれている。
薄い水色の髪の毛はふわふわと腰まで伸びていて、クリっと青い大きな目とツヤツヤの小さな唇。
ナージュのような特殊技術(メイク)で作られたものじゃない、美しく配置された顔のパーツ。
昨日も今日も全くの無表情なので、まるで良く出来た人形のようにも見える。
地味に瞬き少ないのも気になる……。
制服らしき紺色のメイド服とエプロンがこれまた人形めいていて素敵なんだけど、美脚はくるぶしまでのスカートとブーツで隠れているのが残念。
ミニまで言わない……せめて膝丈でチラリと太ももが見えたら!
……言っとくけど全男性は絶対同じこと考えるからな?
俺が変態とかじゃないからな?
あっ、美脚っていうのは俺の想像だけど多分合ってるよ、多分ね!
しかしこのメイドさん、ご覧の通り可愛いが過ぎる容貌なのだが、なんと昨日竜王陛下を引きずって連れて行ったその人でもある。
「ルンルンちゃん~陛下無事に狩れたぁ?んで料理でき……ぐはっ!」
いきなりミルさんが椅子から転がり落ちた。
何故か?
ルンルンちゃんと呼ばれた目の前のメイドさんが、何故かミルさんに回し蹴りを喰らわせたのだ。
ノーモーションで。
えっ、なにこれ怖……!
そしてルンルンちゃんはお盆を完璧な水平に保ち、全くの無表情だ。
なお、美脚は一瞬でスカートの中に隠れたので見れていない。
うん、もう二度と脚を見たいなんて言わない。
「小僧、二度と我をその名で呼ぶな」
「あはっ、ごめんねぇ~。ついつい。」
あの蹴りを受けて笑顔で立ち上がれるミルさんも凄いけど、名前呼ばれただけで回し蹴り喰らわすルンルンちゃんも凄ぇ……。
どんだけ自分の名前嫌いなんだ?
絶対本人前にして言わないようにと心に誓った。
恐ろしい事に、ルンルンちゃんは何事もなかったかのように俺の前にトレイを置く。
これが……竜王のお手製かぁ……。
本日のメニューはリンゴとサラダと平たいパン、それと……肉。
ドーンと、肉。
…竜王、無事に魔獣を狩れたようでヨカッタデスネ。
「ミルさん、これ給餌って言ってましたよね?」
「言ったねぇ」
「てことは、これ食べるってことは」
「求愛を受け入れる的な感じぃ」
そうなるよねぇぇぇ!?
知らぬこととはいえ俺もう既に竜王の給餌受け入れてるんだけどぉぉぉ!?
グルグルと混乱していると、またルンルンちゃんがミルさんの頭を叩(はた)いた。
この人割とすぐ手足出るな…。
逆らわないようにしよう。
「心配ない。オスの求愛など受け入れてナンボぞ。尽くして尽くして尽くされろ。それと我らが選ぶかはまた別の話よ」
竜人の男……不憫。
いや、人間も似たようなものか。
俺、未来の奥さんにはうんと尽くすんだ……。
あとルンルンちゃん、素が出てるよぉ……。
お人形さんから出てくる偉いオッサンみたいな口調にギャップ萌えすら超越しちゃってちょっと恐怖だよぉ……。
「わ~ゲッスぅ~いぃ。やめてぇ俺まだ番いいないのにぃ」
「ふん、愛するメスに喜ばれるのだ、オスとて本望であろ。
そんな訳だ番い殿。あのボンクラ小僧が作ったものではあるが、食べようがどうしようがお主の勝手ぞ。
こんな程度で番えるなぞオスの甘い考えよ。ほれ、食べるが良い」
そう言うと、無表情だったルンルンちゃんが初めてニヤリと笑った。
美少女の悪役顔だよぉ……!
思ってた笑顔じゃないよぉ…。
しかしルンルンちゃんの言うとおり食材に罪はない。
俺はありがたくいただくことにした。
…おい竜王、今度は肉に塩振んの忘れてますよ?
食べるけど!
しばらくすると、ミルさんは目に溜まった涙を拭きながら顔を上げた。
笑ってもらえて良かった、そう思っておこう。
「お礼にぃ、面白いこと教えてあげるよぉ。給餌行動って、知ってる?」
知っている。
鳥なんかがメスに求愛するときにエサを貢ぐやつだ。自然界は割とオスが必死にならないといけないと、妙に感心した記憶がある。
ん?
まさか……。
「え……まさか?まさか?ねえミルさん!まさかだよね!?」
「人生には3つの坂があってねぇ」
上り坂、下り坂、そしてまさか!
って、ちげぇぇぇぇ!
結婚式のスピーチみたいに返してんじゃねぇぞぉぉぉ!!
「正解ぃ~。番い殿の食事は陛下が自分で作ってるらしいよぉ?
んでさぁ、アンタそれ、全部食べてるっしょお」
「まじかあぁぁ」
「昨日は夕飯までに魔獣捕まえられなかったらしいよぉ?まじでウケる」
だからガチガチのパンとスープだけだったのか?
まさか捕まえて調理までがワンセットだったとは。
竜王とはいえ、慣れない狩りは難しかったのだろうか。
「つーかあの人、魔獣全部塵にしちゃって肉が残らなかったんだってぇ。ないわ~竜人の恥だわぁ~」
「塵……?ものの例えカナ?」
「力加減ド下手くそでガチで塵にしたらしいよぉ?だから今頃必死に狩ってるんじゃないのぉ?」
太陽はもうすぐ昼を示す頃。
俺の腹も空腹を訴えている。
だが、ここで出される食事が、まさかの竜王手作り♡だったとは……。
しかもそれが給餌行動だったとは……。
食べたくねぇぇぇ~!!
――――――――
しかし時は無情だ、丸太小屋には何時もの可愛いメイドさんが食事を持ってやって来た。
彼女はこの家に来てからずっと食事を持って来てくれている。
薄い水色の髪の毛はふわふわと腰まで伸びていて、クリっと青い大きな目とツヤツヤの小さな唇。
ナージュのような特殊技術(メイク)で作られたものじゃない、美しく配置された顔のパーツ。
昨日も今日も全くの無表情なので、まるで良く出来た人形のようにも見える。
地味に瞬き少ないのも気になる……。
制服らしき紺色のメイド服とエプロンがこれまた人形めいていて素敵なんだけど、美脚はくるぶしまでのスカートとブーツで隠れているのが残念。
ミニまで言わない……せめて膝丈でチラリと太ももが見えたら!
……言っとくけど全男性は絶対同じこと考えるからな?
俺が変態とかじゃないからな?
あっ、美脚っていうのは俺の想像だけど多分合ってるよ、多分ね!
しかしこのメイドさん、ご覧の通り可愛いが過ぎる容貌なのだが、なんと昨日竜王陛下を引きずって連れて行ったその人でもある。
「ルンルンちゃん~陛下無事に狩れたぁ?んで料理でき……ぐはっ!」
いきなりミルさんが椅子から転がり落ちた。
何故か?
ルンルンちゃんと呼ばれた目の前のメイドさんが、何故かミルさんに回し蹴りを喰らわせたのだ。
ノーモーションで。
えっ、なにこれ怖……!
そしてルンルンちゃんはお盆を完璧な水平に保ち、全くの無表情だ。
なお、美脚は一瞬でスカートの中に隠れたので見れていない。
うん、もう二度と脚を見たいなんて言わない。
「小僧、二度と我をその名で呼ぶな」
「あはっ、ごめんねぇ~。ついつい。」
あの蹴りを受けて笑顔で立ち上がれるミルさんも凄いけど、名前呼ばれただけで回し蹴り喰らわすルンルンちゃんも凄ぇ……。
どんだけ自分の名前嫌いなんだ?
絶対本人前にして言わないようにと心に誓った。
恐ろしい事に、ルンルンちゃんは何事もなかったかのように俺の前にトレイを置く。
これが……竜王のお手製かぁ……。
本日のメニューはリンゴとサラダと平たいパン、それと……肉。
ドーンと、肉。
…竜王、無事に魔獣を狩れたようでヨカッタデスネ。
「ミルさん、これ給餌って言ってましたよね?」
「言ったねぇ」
「てことは、これ食べるってことは」
「求愛を受け入れる的な感じぃ」
そうなるよねぇぇぇ!?
知らぬこととはいえ俺もう既に竜王の給餌受け入れてるんだけどぉぉぉ!?
グルグルと混乱していると、またルンルンちゃんがミルさんの頭を叩(はた)いた。
この人割とすぐ手足出るな…。
逆らわないようにしよう。
「心配ない。オスの求愛など受け入れてナンボぞ。尽くして尽くして尽くされろ。それと我らが選ぶかはまた別の話よ」
竜人の男……不憫。
いや、人間も似たようなものか。
俺、未来の奥さんにはうんと尽くすんだ……。
あとルンルンちゃん、素が出てるよぉ……。
お人形さんから出てくる偉いオッサンみたいな口調にギャップ萌えすら超越しちゃってちょっと恐怖だよぉ……。
「わ~ゲッスぅ~いぃ。やめてぇ俺まだ番いいないのにぃ」
「ふん、愛するメスに喜ばれるのだ、オスとて本望であろ。
そんな訳だ番い殿。あのボンクラ小僧が作ったものではあるが、食べようがどうしようがお主の勝手ぞ。
こんな程度で番えるなぞオスの甘い考えよ。ほれ、食べるが良い」
そう言うと、無表情だったルンルンちゃんが初めてニヤリと笑った。
美少女の悪役顔だよぉ……!
思ってた笑顔じゃないよぉ…。
しかしルンルンちゃんの言うとおり食材に罪はない。
俺はありがたくいただくことにした。
…おい竜王、今度は肉に塩振んの忘れてますよ?
食べるけど!
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