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ーインタールードー 6

第494話 ラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』

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「ラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』。麻奈志漏まなしろ誠也が特に好んで多用――というか乱用しているチートだね」

 この口ぶりから察するに、局長はまだ麻奈志漏まなしろさんが女の子とイチャコラするためにチートを使っていると疑っているようだ。
 普通の男はそうなんだろうけど、でも麻奈志漏まなしろさんは違うんだよね。
 局長も麻奈志漏まなしろさんと実際に顔を合わせてたら、そんな疑念なんて一発で吹っ飛んでたろうになぁ。

 でも転生官と転生者(この場合、私と麻奈志漏まなしろさんね)の転生面談は個人情報保護の観点から原則非公開かつ、やりとりも大まかな流れだけで詳細は残さないことになっているのだ。

 だから局長相手と言えども私には守秘義務で言えないこともあったりして、麻奈志漏まなしろさんの誠実さを証明できなくて、もどかしい思いをしているのだった。

「はい、窮地きゅうちを切り抜けるために異世界転生局が用意した、切り札とも言える最強クラスのS級チートです」

 『イケメンなら大抵のことは許されるオーラ』を出して、相手が勝手に都合よく解釈してくれるこの『ただしイケメンに限る』というS級チートは――分類上こそラブコメ系となってはいるものの――敵地で職務質問された時に疑いを晴らしたり、検問を簡単に通過したり、敵の女スパイを篭絡ろうらくして2重スパイにしたてあげたりといった、潜入や調査・脱出に秀でたスペシャルチートなのだ。

 きっと麻奈志漏まなしろさんはこのチートを使うことで様々なピンチを潜り抜けては、苦難にあえぐ人々を次から次へと助けているんでしょう。

 さすがは麻奈志漏まなしろさん、私に人生の何たるかを教えてくれた社会奉仕の精神にあふれた最高の紳士なだけはあります。

 もしこれが「異世界転生して人生をやり直してモテたい」だけの低俗極まりない一般童貞ならば、これ幸いと女の子からチヤホヤされるためにこのチートを多用――それこそ乱用するんでしょう。

 だけど童貞であってもおとこの中のおとこである上級童貞の麻奈志漏まなしろさんは、あなたたち愚物ぐぶつとは格が違うんだから!

 私には全部わかってますからね!
 だから安心して心置きなく正義のチートを使ってくださいね、麻奈志漏まなしろさん!

「それでその発動がですね、なんとなくここ1週間ほど不安定かなと思いまして」
「ふむ……データを一見した限りでは、これまでと大きな変化があるようには見受けられないが……ふむ……ふむふむ……」

「いえその、私もなんとなく違和感があるというだけでして……申し訳ありません、忘れていただけますか」

「……アリッサ、君のその直感はとても確度が高い。それはこれまでに何度も証明されている。そうであるならば、この件も一概に勘違いと切って捨てるのは大いに問題があるだろう」

「お褒めいただき光栄です。ですが本当になんとなくの違和感でして、多分何もないんじゃないかな、と――」

「なに、何もないなら何もないで構わないさ。何もないということが証明されれば、それはそれでいい。ただ――」

「ただ――?」

「ただ、この『ただしイケメンに限る』というチートには、『可愛いは正義』とついをなす2つで1つのチートという、このチートだけの特殊性があるだろう?」

「あ、確かに……」
 この2つのチートは元は1つのチートで、使用者が男性なら『ただしイケメンに限る』に、女性なら『可愛いは正義』に進化するという特殊な性質を備えたチートなのだ。

「アリッサはその特殊なチートに、何らかのひっかかりを感じ取ったわけだ。これは偶然かな? 13万5千の中からだよ?」

「そう言われると、はい、偶然で片付けるには収まりが悪すぎます」

「それだけでも調査する価値はおおいにあるさ。研究チームにはより詳細に検証するよう私から強く要請しておこう。アリッサ、今後とも君の持つその慧眼けいがんでとらえたことを、忌憚きたんなく聞かせてくれたまえ」

「お褒めいただきありがとうございます、不肖アリッサ=コーエンこれからも鋭意努力いたします!」
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