上 下
485 / 566
第六部「チート学園」  異世界転生 ??日目

第458話 チートたちの仁義なき戦い

しおりを挟む
「ううううぅ……っっっ、なんで、なんでっ!!」

「『剣聖』はな、化け物ぞろいのSS級を相手に一歩も引かずに戦ってきたんだ。ずっと見てたってだけでそれを全部分かった気になって……そんなもんで! そんなもんで、激闘を潜り抜けてきた俺の『剣聖あいぼう』をあまり過小評価してるんじゃねぇぞ!」

「くぬぬぬぬぬっっっっ――!!」

「さてと。いい加減受けてばっかってのもストレスたまるしな。そろそろこっちからも行かせてもらおうか――」

 その言葉とともに、俺は鋭く踏み込むと《2年S組の剣おたまブレード》を横薙ぎに振るった。

 それ自体はただ鋭いだけの一太刀だ。
 しかし視線、構え、呼吸、踏み込みetc...剣を振る以外の全ての動作を、わずか一呼吸の間に何重にもわたるフェイントとし、ケンセーの認識の死角をついて放たれた神速の一撃は――、

「はぁ――っ!」

 ――剣技を極めし最強S級チート『剣聖』の名にふさわしく、防御をいとも簡単にかいくぐった!

 ケンセーからは「見えていない」その幻惑の一振りは、それでもどうにか勘だけで防御しようとしたケンセーの動きよりも一手速く、振り抜かれると、

「おおおぉぉぉぉぉ――――っっ!!」
 その小さな身体を撃ち抜いて派手に吹き飛ばした。

 あと一歩、防御が間に合わずにノーガードのボディを撃ち抜かれたケンセーは、威力そのまま体育館の壁まで吹っ飛んでいくと、思いっきり叩きつけられて、

「ぁふ――っ……」

 口から空気の漏れ出るような声にならない声を出しながら、壁に沿って尻もちをつくようにズルズルとずり落ちていった。

 それはもうどこに出してもおかしくないほどの完全無欠なクリーンヒット――だったんだけど、

「うげっ、しまった……『剣聖』の凄さを見せつけようとしたら、勢いあまっていいとこに入りすぎたぞ……」

 ちょっとやりすぎた……かも……?

 ちなみにというか当たり前というか、《2年S組の剣おたまブレード》は『おたま』なので、斬撃ではなく打撃である。

 チートはエネルギー体なので斬られたからといって物理的に死ぬことはないんだろうけど、仲良しで可愛い女の子なケンセーを胴体真っ二つにしちゃうのは、さすがに寝覚めが悪すぎる――というか俺が嫌すぎる。

「そういう意味で《2年S組の剣おたまブレード》が斬撃ではなく打撃なのは、うん、今回に限っては都合がよかったかな……?」

 でも今のはちょっとやばかったよな……。
 当たった瞬間に《2年S組の剣おたまブレード》がメリッてケンセーの身体にめり込みながら、同時にグシャって何かを砕くような嫌すぎる感触があったんだけど……。

 最強を誇る『剣聖』が、ちょっと力を入れすぎちゃったよ、てへぺろ――なんてそんな単純なポカをするわけがない。
 その気になれば瞬時に相手の服だけ切り裂いて全裸にしちゃうような、尋常ならざる剣の技を持っているのだ。

 つまり、
「『剣聖』、今のはわざとやったな……」

 普段は使えば使うほど頭がクリアでクリーンになる『剣聖』だっていうのに、今の一撃はかなり強い感情がこもっていた――ぶっちゃけ怒ってたっぽいんだよな。

「これはあれだ、意趣返しってやつだ……」

 勝手に『剣聖』の振りをされてケンセーに名前を使われたり、ここまでずっといいようにやられて反撃させてもらえなかったりで、珍しくイラついてたというか荒ぶっていたというわけだ。

 調子に乗ってたケンセーに、ちょっぴし痛い目を見せてやろうってなとこだろう。

「うーん、俺の一番をめぐるチートたちの仁義なき戦いが勃発しちゃっている……早く終わらせないと……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~

暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。  しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。 もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

処理中です...