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ーインタールードー 5
第399話 奇跡を祈る -アリッサ=コーエン-
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「ズバリそういうことだね。だからこそ、チートも全ての異世界で同じ効果を発揮しうるというわけさ。そしてこの説によれば我々の住むこの世界も、その例外ではない」
「で、ですが局長。こう言っては何ですが、『唯一世界起源説』は荒唐無稽なトンデモ説で、ろくな根拠もない俗説のはずです。そんなものがまさか本当にあるなんて――」
「そのまさかさ。そして『始まりの世界』が000000000666異世界 《アガニロム》ではないかと、研究チームはそう結論付けた。ちなみに私も同意見だ」
「――!」
「我々の干渉を全く受けつけないにも関わらず、しかし他の全ての異世界に対して一方的に力を及ぼしてみせた000000000666異世界 《アガニロム》。これは《アガニロム》という異世界が他の全ての世界の上位存在であることを示唆している」
「たし……かに……」
「さらに言えば麻奈志漏誠也の存在だ」
「麻奈志漏さん、ですか?」
その名前を聞いて胸の中が少しだけきゅっとした。
今はもう会うことがかなわない、私を導いてくれた私の大切な人――。
「何をどうやってもこちらから《アガニロム》へのゲートを開けなかったのに、まるで誘われるようにして、いとも簡単に麻奈志漏《まなしろ》誠也は 《アガニロム》へと旅立った」
「まさか――」
局長が言いたいことってまさか――、
「その後、完全に同じ条件を用意したにもかかわらず、何をどうやってもアガニロムへの転生を再現できなかったことはアリッサ、君も知っていることだね?」
「まさか麻奈志漏さんは――」
「今回のことで私は確信を持ったよ。麻奈志漏誠也が『全チートフル装備』で《アガニロム》に転生したのは、《アガニロム》という世界の意思によるものだと――」
「そんな……」
「もちろん、呼び寄せられた彼にどんな役割が与えられるのかは想像もつかないがね。そして以上を踏まえて、研究チームはとある結論を得るに至った」
「は、はい――」
緊張しっぱなしの私の喉が、ごくりと鳴った。
「再現不可能な麻奈志漏誠也の転生。全異世界に波及し押し寄せた膨大な特殊重力波。これらは新たな異世界が誕生するその前兆ではないか、とね」
「新世界の誕生……!?」
「アリッサ、どうか君の意見を聞かせてくれないだろうか。君のその慧眼ならば、補完するにせよ反論するにせよ、我々に新たな視点をもたらしてくれるはず――――アリッサ? どうしたんだい深刻な顔をして?」
「だってそんな――! 《アガニロム》には麻奈志漏さんがいるんです! 麻奈志漏さんは、麻奈志漏さんは大丈夫なんでしょうか!?」
「それは私にはわからない……ただもし我々の仮説が正しかったとすれば、だ」
「……はい」
「新世界誕生の前段階ですら、膨大な余波が世界をまたいでまで押し寄せたのだ。もし本当に新世界が誕生するとなれば、その中心たる000000000666異世界 《アガニロム》では世界規模での地殻変動や環境変異が発生し、現存する文明は崩壊――おそらく完全にゼロに近い状態までリセットされることだろう」
「そん……な……うそです……」
それじゃあ麻奈志漏さんは生き残れない――。
「どうにかして麻奈志漏さんを助けないと――なにか手は、手は――」
慌てる私の肩に局長が手を置いて、言った。
「アリッサ、君だってもう分かっているだろう? こちらから《アガニロム》へのゲートを開けない以上、我々にできることはただ、遠くここから観測するしかないのだということを。できることと言えば、それこそ奇跡を祈ることくらいだろうか――」
「奇跡だなんて、そんな――麻奈志漏さん――私はなんてことを――」
「で、ですが局長。こう言っては何ですが、『唯一世界起源説』は荒唐無稽なトンデモ説で、ろくな根拠もない俗説のはずです。そんなものがまさか本当にあるなんて――」
「そのまさかさ。そして『始まりの世界』が000000000666異世界 《アガニロム》ではないかと、研究チームはそう結論付けた。ちなみに私も同意見だ」
「――!」
「我々の干渉を全く受けつけないにも関わらず、しかし他の全ての異世界に対して一方的に力を及ぼしてみせた000000000666異世界 《アガニロム》。これは《アガニロム》という異世界が他の全ての世界の上位存在であることを示唆している」
「たし……かに……」
「さらに言えば麻奈志漏誠也の存在だ」
「麻奈志漏さん、ですか?」
その名前を聞いて胸の中が少しだけきゅっとした。
今はもう会うことがかなわない、私を導いてくれた私の大切な人――。
「何をどうやってもこちらから《アガニロム》へのゲートを開けなかったのに、まるで誘われるようにして、いとも簡単に麻奈志漏《まなしろ》誠也は 《アガニロム》へと旅立った」
「まさか――」
局長が言いたいことってまさか――、
「その後、完全に同じ条件を用意したにもかかわらず、何をどうやってもアガニロムへの転生を再現できなかったことはアリッサ、君も知っていることだね?」
「まさか麻奈志漏さんは――」
「今回のことで私は確信を持ったよ。麻奈志漏誠也が『全チートフル装備』で《アガニロム》に転生したのは、《アガニロム》という世界の意思によるものだと――」
「そんな……」
「もちろん、呼び寄せられた彼にどんな役割が与えられるのかは想像もつかないがね。そして以上を踏まえて、研究チームはとある結論を得るに至った」
「は、はい――」
緊張しっぱなしの私の喉が、ごくりと鳴った。
「再現不可能な麻奈志漏誠也の転生。全異世界に波及し押し寄せた膨大な特殊重力波。これらは新たな異世界が誕生するその前兆ではないか、とね」
「新世界の誕生……!?」
「アリッサ、どうか君の意見を聞かせてくれないだろうか。君のその慧眼ならば、補完するにせよ反論するにせよ、我々に新たな視点をもたらしてくれるはず――――アリッサ? どうしたんだい深刻な顔をして?」
「だってそんな――! 《アガニロム》には麻奈志漏さんがいるんです! 麻奈志漏さんは、麻奈志漏さんは大丈夫なんでしょうか!?」
「それは私にはわからない……ただもし我々の仮説が正しかったとすれば、だ」
「……はい」
「新世界誕生の前段階ですら、膨大な余波が世界をまたいでまで押し寄せたのだ。もし本当に新世界が誕生するとなれば、その中心たる000000000666異世界 《アガニロム》では世界規模での地殻変動や環境変異が発生し、現存する文明は崩壊――おそらく完全にゼロに近い状態までリセットされることだろう」
「そん……な……うそです……」
それじゃあ麻奈志漏さんは生き残れない――。
「どうにかして麻奈志漏さんを助けないと――なにか手は、手は――」
慌てる私の肩に局長が手を置いて、言った。
「アリッサ、君だってもう分かっているだろう? こちらから《アガニロム》へのゲートを開けない以上、我々にできることはただ、遠くここから観測するしかないのだということを。できることと言えば、それこそ奇跡を祈ることくらいだろうか――」
「奇跡だなんて、そんな――麻奈志漏さん――私はなんてことを――」
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