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異世界転生 16日目

第366話 チェックメイト、俺たちの勝ちだ――!

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「お疲れ様なのじゃ主様ぬしさま
 すぐに《神焉竜しんえんりゅう》がねぎらいの言葉を投げてきた。

「《神焉竜しんえんりゅう》も援護ありがとう。すごく助かったよ」

「あれくらい大したことはないのじゃが――ぜひにというのであれば、後でなでなでをするがよいのじゃ」

「ぜひともさせてもらうよ。頑張りには報いないとな」
「交渉成立なのじゃ」

 俺と《神焉竜しんえんりゅう》がちょっと気の早い戦後の論功行賞にいそしんでいると、

「いったい、いったい何をしたと言うのだ――!」
 グレンが割って入るように、そして驚愕を隠そうともせずに問いかけてきた。

「なに、簡単なことじゃよ。あれは世界の揺らぎを利用する瞬間移動術。揺らぎとはある種の波、波動じゃ。であれば、逆位相の波を発生させてぶつけてやることで、相殺して無効化することは可能じゃろうて?」

「相殺しただと? そのようなこと、一朝一夕でどうにかなるはずがない……! 言うは易し、それがどれほど難しいことか――」

「ふん、たかが1000年ほど生きただけの鬼っころ風情が、最強の王竜たるわらわを己の矮小な物差しで測ろうとするとは、おごるでないわ小童こわっぱめが!」

 《神焉竜しんえんりゅう》の大喝に、

「ぐうの音も出んとはこのことか……」

 グレンは己を恥じるようにうつむいた。

 ――とまあ、なんか二人でわかりみの深い会話をしてるんだけれど、

「……あの、さも自分が何かやったみたいに言ってるけどさ? 妨害しているのは背中に乗ってる巫女エルフちゃんだからね? アストラル界に転移する術の応用なんでしょ、これ?」

 そう。
 《神焉竜しんえんりゅう》の背中には、

「べんとらー、べんとらー」

 巫女エルフちゃんが、ろくろを回すみたいなオサレポーズをしながら座っていたのだった。
 IT会社の社長さんとかがインタビュー写真でよくやっているポーズ、って言えばわかるだろうか?

 目を閉じて精神を集中させ、なにやら高度なことをやっている――と思われる。
 ただまぁ俺にはエアろくろを回しているようにしか見えないので、実際どうなのかはよくわからないですね……。

「いやいや主様ぬしさま、それは違うのじゃ。物事には原因と結果というものがあるのじゃよ?」
「え? あ、おう、まぁそうだな。それがどうしたんだ?」

「大元である術の原理を見抜いたのは、これはわらわの『真なる龍眼』によるものなのじゃ。これがなければそもそも妨害することもできぬわけじゃろ? つまりこれはわらわの功績と言っても過言ではないのじゃ」

「いや、それはどうだろう……?」
 思わず言葉に詰まった俺に、

「あのあのえっと! でしたらお二人の功績、ということでよいのではないでしょうか!」
 ウヅキが助け舟を出してくれた。

「ふむ、やはり奥方殿は良いことを言うのじゃ。よきに計らうのじゃ」

 ウヅキのおかげで《神焉竜しんえんりゅう》も納得してくれたみたいだった。
 また脱線する前に、とっとと話を進めよう。

「じゃあそういうことで。二人ともありがとうね――ってわけでさ?」

 俺は万策尽きたグレンの眼前に、精霊剣クサナギを突き出した。

 深手を負い、『固有神聖』も使い切って、さらには奥の手の『鬼門遁行きもんとんこう』まで封じられたグレンに、もはや臆するものは何もない。

「もうお前に残された手はない。チェックメイト、俺たちの勝ちだ――!」

 動けぬグレンを前に、俺は高らかに勝利を宣言したのだった。
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