上 下
347 / 566
異世界転生 14日目

第322話 鬼と出遭う

しおりを挟む
「ひ――っ」
 額のツノを見たティモテが息を飲み、

「妖魔、それも最強と名高い鬼族か!」
 ナイアが緊張に満ち満ちた硬い声を上げた。

 ツノがあって人とよく似た姿をした妖魔――『鬼』。
 転生前でも最強の代名詞だった伝説の超越的存在――それがいるんだな、この異世界に。

 しかもこの鬼、相当な手練れだぞ……!

「ふむ、そんなつもりはなかったが、なかなかどうして。小僧、見かけによらず、いい腕をしているな。少々、揉んでやるとするかの」

 言って老人――いや老鬼ろうきは、つばぜり合いを自分有利な態勢で押し解くと、そのまま剣をふるい始めた――!

 キンキンキンキンキンキンキンキン!

 目にもとまらぬスピードで、激しく打ち合う俺と老鬼ろうき
 純粋な剣術での勝負で、最強S級チート『剣聖』が負けるはずはない――そう思っていたんだけれど――、

「なっ、互角――ウソだろ!?」

 『剣聖』を使っているにもかかわらず、しかも混じりっけなしの剣の勝負だというのに。
 俺と老鬼ろうきは、一進一退の苛烈な攻防を繰り広げていたのだった。

 老鬼ろうきの攻撃を受け流しつつ、即座にカウンターの横なぎを入れる――しかしその狙いすました一撃を、最低限の体捌きだけでなんなく交わした老鬼ろうきは、再び俺に鮮烈な一撃を放ってくる――!

「こなくそ――っ!」

 それを俺もぎりぎりで受け流し、わずかの隙を見つけて反転攻勢をかけ――しかしそれは老鬼ろうきの誘いで、うまくカウンターを合わせられてまた防戦に――。

 打ち合い。
 かわし合い。
 受け流しあい。

 苛烈に攻め合いながらもしかし、互いに決定打を得られないその戦いは――、

「不謹慎かもしれませんが、これはまるで美しい演武を見ているようです――」
 そんなティモテのつぶやきは、これ以上なく的を射ていた。

 今日も今日とて、最強S級チートの名に恥じない芸術的な剣の冴えを見せる『剣聖』の絶技。

 加えて知覚系S級チート『龍眼』が、老鬼ろうきの動き・技を解析し丸裸にしてゆく。
 この2つのコンビネーションは、SS級に限りなく近い最強シナジーのはずなのに――!

 老鬼ろうきの剣の技ときたら、その俺と同等タメか、下手したら俺を上回っていたのだから――!

 そのまま、一瞬で攻守を入れ替えながら、休む間もなく刹那の攻防を繰り広げる中――、

「ぐぅ――っ!」

 俺はほんのわずか、態勢を崩してしまった。

 そこに老鬼ろうきがここぞとばかりに鋭く踏み込んできて――、

「かかった――!」
 俺はニヤリとわずかに口角をあげた。

 既に日本刀クサナギは納刀している――!
 
「世界よ、真白ましろまたたけ――」
 それは戦闘系S級チート『剣聖』が誇る最終奥義――!

「嵌められたか、ふん、ちょこざいな――!」
 今度は自分が誘いこまれたと知った老鬼ろうきが、その場で迎撃態勢をとるけれど――、

「もうおせぇ――!」

 抜刀とともに爆発的に解放された剣気が、光輝ひかりとなってきらめいて――!

「剣気解放――! 《紫電一閃しでんいっせん》!!」

 雷光と見まごうばかりの峻烈なる一撃が、気合いとともに抜刀術で解き放たれる――!

「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!」

 キィィィィィィィィ――――――――――ンンッッ!
 甲高い音が一鳴りして。

 全身全霊を込めて打ち放った《紫電一閃しでんいっせん》は――しかし。

「なん……だと……?」

 老鬼ろうきの強烈な叩きつけによって、打ち返されてしまったのだった――!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~

暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。  しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。 もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

処理中です...