上 下
286 / 566
異世界転生 12日目(後編)

第263話 堕ちたな、王竜……!!

しおりを挟む
「……?? えっと、主様ぬしさま……?」
 俺の言葉の意図が分からなかったのか、《神焉竜しんえんりゅう》がキョトンとした。

「これからやることはさ、俺たちの初めての共同作業なんだよ」
「初めての、共同作業……?」

 まだよく分かってないみたいな感じの《神焉竜しんえんりゅう》。
 俺はそんな初心で可愛い《神焉竜しんえんりゅう》に、優しく微笑みかけながら語りかけていく。

「そうさ、俺と君にしかできない、他の誰にもできない。これは俺たち二人だけの、初めての共同作業なんだ」

主様ぬしさまと、わらわだけの、初めての、共同作業……」
「そう、みんなには今話していることは全部内緒だ。俺と君だけが知っている、二人だけの秘密の共同作業だ」

「う……なにか、いかにもとってつけたような調子の良いセリフなのじゃ……あ、いや、素敵は素敵なのじゃが……少しもやもやするのじゃ……まさかとは思うが、主様ぬしさまわらわをたばかろうとして――」

「ははは、そんなまさか?」

 ちっ……さすがはSS級だ。
 女心をもてあそんじゃうこのS級チートたちも、完全には効いてくれないか……!

 だけど《神焉竜しんえんりゅう》がタイマンでの勝ち負けにこだわってるところから論点をずらして、「二人の初めての共同作業」って大きな餌をぶら下げる作戦はかなりいい感じだ。

 だったら――!

 俺はここを説得の勝負所とみて、さらなる追撃のチートを――母性くすぐり系S級チート『上目づかいで可愛くお願い』を発動した!
 必殺の上目づかいで《神焉竜しんえんりゅう》を完全に落としにかかる……!

「君が負けるなんて俺は1ミリも思ってないさ。でも、俺にも戦うチャンスを分けてほしいんだ。これは俺のワガママだ。だから俺のためと思って、一緒に戦ってくれないかな? ね、お願い(キラリーン!) ね?(キラキラリーン!)」

・ラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』
・自律感覚絶頂反応系S級チート『ASMR』
・たらし系S級チート『すけこまし』
・母性くすぐり系S級チート『上目づかいで可愛くお願い』

 超ナンパなS級チート四重奏カルテット――ドヤァ!!!!

「う……いやしかし、奥方殿の目をたばかって2人で一緒などと、そのようなことはわらわ……」
「燃えてきちゃうだろ?」
「あ、う……」

 図星をつかれたのか、《神焉竜しんえんりゅう》が押し黙った。

 もうちょっとだ、一気に行くぞ、最後の一押しだ!
「演出系S級チート『星の王子様』発動!」

 俺と《神焉竜しんえんりゅう》の周囲に、キラキラとした星が瞬き始めた。
 少女漫画でイケメンが登場する時、背景に花やら星やらが舞っているのを再現するという、ただそれだけのアホみたいなS級チートである。

「君と一緒に戦いたいな」
「う……ぁ……」

 しかしこれらS級チートのごり押し連打によって《神焉竜しんえんりゅう》の心の堤防はもはや決壊寸前。

 ただでさえ俺に惚れているせいで甘い言葉に弱い《神焉竜しんえんりゅう》は、もう完全にメロメロになっちゃっているはずだ。

「別にウヅキを裏切って浮気するとか、そういうんじゃないんだし。ただちょっとだけ二人の心の距離が近づいた――二人だけの秘密ができたってこと。だから、ね。お・ね・が・い♪(キラキラキラリーン!)」

 最後の上目づかいを受けて、《神焉竜しんえんりゅう》がビクゥッ!! って大きく身体を震えさせた。

 この反応は間違いない。

 堕ちたな、王竜……!!

「……そ、そうまで言われては仕方ないのじゃ。奥方殿を裏切るわけでもないのじゃし……ふふっ、わらわ主様ぬしさまの秘密の共同作業じゃ……これぞ真に愛が深まった証なのじゃ……ふふっ、ふふふふっ……ヌフフフフフフ……」

 《神焉竜しんえんりゅう》がニヤニヤニュフフと、過去一番に邪悪な笑みを浮かべた。
 邪悪すぎて本気で怖い。
 この顏、どう見ても世界征服を企む悪のドラゴンです……。

「うーん、ちょっとやりすぎたかな……?」
 俺もチートの魔性に引っ張られて、完全に別人みたいになっちゃってたし……。

 今後の関係性が少々不安になる俺だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~

暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。  しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。 もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...