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異世界転生 12日目(後編)

第261話 ぷんすかなのじゃ! やだー! やーやー! やー!!

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「で、戦うにしてもどうするんだ? ずっと戦闘を見てたけどさ、アストラル界の《精霊神竜》はやっぱ手ごわいぞ? このままやっても勝ち目は薄くないか?」

 それはほんのちょっとした失言だった。
 ぶっちゃけ失言って程のもんでもなかったんだけれど――、

「む! そんなことはないのじゃ! 最強SS級たるわらわが! アストラル界とは言え、たかが小精霊ごときに……ごときに……! 遅れを取るなどと!! 主様ぬしさま勘所かんどころを少々たがえてしまっておるのじゃ! 訂正を要求するのじゃ!!」

 耳ざとく聞きとがめた《神焉竜しんえんりゅう》が、わーわー言い始めてしまった。

「あー、ごめん。そんなつもりで言ったんじゃなくてさ――」

「ではどのような意味で言ったのじゃ! 最強はわらわなのじゃ! ぷんすかなのじゃ! やだー! やーやー! やー!!」

「なぜ急にそこでだだをこねる幼児化するのか……」
 綺麗な大人のお姉さんモードだったら、こんな風に可愛く幼児化するのもそれはそれで、ギャップ萌えからくる胸キュン確定案件なんだけれど――、

 ブォン! ブォン!!

 残念ながら今の《神焉竜しんえんりゅう》は泣く子も黙る凶悪なブラックドラゴン様である。
 だだをこねると可愛いどころか――、

「おい、暴れると危ないって! ちょ、おま! 尻尾が今、俺の頭のあったとこを通ったぞ……!?」
 ――フレンドリファイアも辞さない超がつくほどの危険生命体だった。

「ダメなのじゃー! わらわが最強なのじゃ! 主様ぬしさま意外には負けないのじゃ! やー! やーややー!!」

 ブォンブォン――!

「分かった、分かったから! とりあえずだだをこねるのはやめろ! おいこら今、不可視の斬撃が飛んできたぞ!? まさかこれ幸いと俺を亡きものにする気じゃないだろうな!?」

「負けないのじゃー! 最強なのじゃー!」

 ブォン! ブォンブォンブォン――!!

「ちゃんと分かってるって、お前は最強だよ! 最強オブ最強――キング・オブ・ドラゴンだから! だからまずは俺の話を聞いてくれ! いい考えがあるっていうか、お願いを聞いてほしいんだ!」

「いい考え……? つまり名案なのじゃ……?」
 度重なる説得の言葉を聞いて、やっとこさ駄々っ子モードを止めてくれた《神焉竜しんえんりゅう》。

「おう、名案も名案だとも!」
 やれやれ、とりあえずは一安心である。

 そして名案ってのはとどのつまり――、

「案ってのは他でもない。俺を《神焉竜しんえんりゅう》、お前に乗せてくれないかって思ってさ」

 ということだった――。

主様ぬしさまを、わらわに乗せる……?」

「ああ、お前の背中に俺が乗って、それで一緒に戦おうじゃないか。共同戦線ってやつだ。どうだ?」

「嫌なのじゃ。断固拒否なのじゃ」
「分かってくれたか――って、おい! いつもは何でも俺の言うことを聞いてくれるのに、なんでこれに限っては速攻で拒否するんだよ!」

わらわは一人でもやれるのじゃ。余裕のよっちゃんでポイポイポイーと勝ってしまうのじゃ。じゃから主様ぬしさまの手助けは、必要ないのじゃ!」

 うーむ。
 さっきの失言(って程でもないと思うんだけど)に、まだこだわってるっポイな……。

「なぁ《神焉竜しんえんりゅう》。俺さ、ここまでずっと何もしてこなかっただろ? だからそろそろ俺にも出番が欲しいんだよ。みんなにカッコいいところを見せたいしさ。ダメかな?」

「じゃが、このまま負けたままで引き下がっておっては、最強SS級たるわらわのプライドというものが――」

 ま、そう簡単に納得はしないよな。
 強さにこだわる《神焉竜》が、格下と見下していた《精霊神竜》に負けたままでいられるとは、俺だって思っていない。

「しゃーない。あれ、やるか……」

 できればやりたくなかったんだけれど。
 それでもこのまま《神焉竜》がやられるところを黙って見ているよりははるかにマシだから――。
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