165 / 566
異世界転生 8日目
第149.5話 なでなで。 パタパタ。
しおりを挟む
「おぅ……歯形が、歯型がこんなにくっきり……なんてことすんだよ、もう!」
「フン、軽く甘噛みしただけで大げさな……この惰弱な軟弱者が」
「おまえな……人がせっかく話し合いで解決しようって提案してんのに――」
「誰もそんなこと頼んでおらんわ」
「この犬……! 文字通り負け犬の分際でなんという生意気な……!」
「我ら誇り高き《シュプリームウルフ》はオオカミよ。同胞とはいえ、人に従属する道を選んだイヌと違えることは許さんぞ」
「へいへいそうっすね、すんませんでした。あぁもうほんと痛い……」
目に涙をためて愚痴っていると、サーシャが優しく左手を取ってさすりさすりしてくれた。
柔らかい女の子の手に、やさしくいたわるようにさすってもらえて、これはこれで悪くないね、うん。
全然悪くない。
「でも、ま。やっと会話らしい会話をしてくれたな。これでやっとスタートラインくらいには立てたってことでいいのかな?」
「フン……好きに解釈すればいいわ。……で?」
「で、とは?」
「力になってくれるのだろう。ならとっとと力を貸さんか、この痴れ者め」
ブチ……っ!
「おいこらてめぇ、さっきから下手にでてりゃ調子にのりやがって! それが人にものを頼む態度か? 上等だ! もっかい、いてこますぞこの野郎!」
「我はメスよ、野郎ではないわ」
「むきー! ああいえばこう言う!」
「セーヤ様、落ち着いてくださいですの」
「これが落ち着いていられるか!」
「多分ですけど、この子はふてくされているだけですの。わたくしにはその気持ちがよく分かりますわ。ウヅキに嫉妬して、負け続ける自分が嫌になって、やり場のない心の情動を誰かにぶつけてしまう気持ちが――」
「サーシャ……」
「でもオオカミさんも、そういうものの言い方は良くないですの。セーヤ様は本当に頼りになる男の人なのですわ。あなたのことも悪いやつじゃないってずっとおっしゃっていましたし」
「フン……」
「実際わたくしも今こうして話してみて、それが良くわかりましたの。ねぇオオカミさん、わたくしたちにあなたのお話を聞かせていただけませんか? なぜトラヴィス商会の荷馬車を襲ったのか、わたくしたちはそれを知りたいのです。なにか止むに止まれぬ事情があるのでしたら、セーヤ様とわたくしがあなたの力になりますわ」
説得力があってとても勉強になりました。
これがコミュ力ってやつか……。
「な、仲良くしようぜ?」
言って、懲りない俺は再びそろそろと《シュプリームウルフ》へと手を伸ばしていく。
「フン……」
しかし今度は噛みつかれることもなく――その頭を、俺は優しく撫でてあげることに成功したのだった。
女の子を胸キュンさせるラブコメ系A級チート『頭ぽんぽん』が発動し、撫でられて気持ちいいのか《シュプリームウルフ》の耳がパタッパタッと動いている。
なんとはなしにその耳も撫でてあげた。
ふと獣人族のココが、耳を撫でるのは求愛の証みたいなことを言ってたのを思い出した。
「ま、《シュプリームウルフ》は獣人族とは違うSS級『幻想種』だから、何がどうってことはないだろ……」
なでなで。
パタパタ。
なでなでなで。
パタパタパタ。
なでなでなでなで。
パタパタパタパタ。
「ふふふ、可愛いじゃないか。ほらほら、ここか? ここがええのんか?」
「調子にのるな――ガブリ」
「ぐぉぉぉぉおおおっ! だから噛むなって! ちょ、痛いって! あ、牙でぐりぐりしちゃダメ! お願い離して! 頼む、サーシャからも何か言ってやってくれ!」
「ふぅ、良かったですわ。すっかり打ち解けて仲良しになられましたのね」
「一体どこ見て言ったの!? 俺が一方的に痛い思いをさせられているだけだよね!?」
とまぁ、そんな感じでじゃれ合いながら親睦を深めた(?)おかげか。
「妹たちが、さらわれたんだ――」
ポツリと、《シュプリームウルフ》は口を開いたのだった――。
「フン、軽く甘噛みしただけで大げさな……この惰弱な軟弱者が」
「おまえな……人がせっかく話し合いで解決しようって提案してんのに――」
「誰もそんなこと頼んでおらんわ」
「この犬……! 文字通り負け犬の分際でなんという生意気な……!」
「我ら誇り高き《シュプリームウルフ》はオオカミよ。同胞とはいえ、人に従属する道を選んだイヌと違えることは許さんぞ」
「へいへいそうっすね、すんませんでした。あぁもうほんと痛い……」
目に涙をためて愚痴っていると、サーシャが優しく左手を取ってさすりさすりしてくれた。
柔らかい女の子の手に、やさしくいたわるようにさすってもらえて、これはこれで悪くないね、うん。
全然悪くない。
「でも、ま。やっと会話らしい会話をしてくれたな。これでやっとスタートラインくらいには立てたってことでいいのかな?」
「フン……好きに解釈すればいいわ。……で?」
「で、とは?」
「力になってくれるのだろう。ならとっとと力を貸さんか、この痴れ者め」
ブチ……っ!
「おいこらてめぇ、さっきから下手にでてりゃ調子にのりやがって! それが人にものを頼む態度か? 上等だ! もっかい、いてこますぞこの野郎!」
「我はメスよ、野郎ではないわ」
「むきー! ああいえばこう言う!」
「セーヤ様、落ち着いてくださいですの」
「これが落ち着いていられるか!」
「多分ですけど、この子はふてくされているだけですの。わたくしにはその気持ちがよく分かりますわ。ウヅキに嫉妬して、負け続ける自分が嫌になって、やり場のない心の情動を誰かにぶつけてしまう気持ちが――」
「サーシャ……」
「でもオオカミさんも、そういうものの言い方は良くないですの。セーヤ様は本当に頼りになる男の人なのですわ。あなたのことも悪いやつじゃないってずっとおっしゃっていましたし」
「フン……」
「実際わたくしも今こうして話してみて、それが良くわかりましたの。ねぇオオカミさん、わたくしたちにあなたのお話を聞かせていただけませんか? なぜトラヴィス商会の荷馬車を襲ったのか、わたくしたちはそれを知りたいのです。なにか止むに止まれぬ事情があるのでしたら、セーヤ様とわたくしがあなたの力になりますわ」
説得力があってとても勉強になりました。
これがコミュ力ってやつか……。
「な、仲良くしようぜ?」
言って、懲りない俺は再びそろそろと《シュプリームウルフ》へと手を伸ばしていく。
「フン……」
しかし今度は噛みつかれることもなく――その頭を、俺は優しく撫でてあげることに成功したのだった。
女の子を胸キュンさせるラブコメ系A級チート『頭ぽんぽん』が発動し、撫でられて気持ちいいのか《シュプリームウルフ》の耳がパタッパタッと動いている。
なんとはなしにその耳も撫でてあげた。
ふと獣人族のココが、耳を撫でるのは求愛の証みたいなことを言ってたのを思い出した。
「ま、《シュプリームウルフ》は獣人族とは違うSS級『幻想種』だから、何がどうってことはないだろ……」
なでなで。
パタパタ。
なでなでなで。
パタパタパタ。
なでなでなでなで。
パタパタパタパタ。
「ふふふ、可愛いじゃないか。ほらほら、ここか? ここがええのんか?」
「調子にのるな――ガブリ」
「ぐぉぉぉぉおおおっ! だから噛むなって! ちょ、痛いって! あ、牙でぐりぐりしちゃダメ! お願い離して! 頼む、サーシャからも何か言ってやってくれ!」
「ふぅ、良かったですわ。すっかり打ち解けて仲良しになられましたのね」
「一体どこ見て言ったの!? 俺が一方的に痛い思いをさせられているだけだよね!?」
とまぁ、そんな感じでじゃれ合いながら親睦を深めた(?)おかげか。
「妹たちが、さらわれたんだ――」
ポツリと、《シュプリームウルフ》は口を開いたのだった――。
0
お気に入りに追加
1,938
あなたにおすすめの小説
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる