150 / 566
異世界転生 8日目
第140話 戦略的転落?
しおりを挟む
「言葉は分かるはずだぜ? 低級の妖魔ですら使えるんだ、SS級の『幻想種』が分からないはずないもんな?」
言って、カウンターをもろに喰らって崩れ落ち、地面に這いつくばったまま怒りの形相で睨み上げる《シュプリームウルフ》の鼻っ面へと、俺は日本刀を突きつける。
「グルぅッっっ、ガグぅゥッ……!」
怒りのまま飛びかかろうとしたのだろう。
しかしその身体はというと意志に反してわずかにピクリとしただけだった。
「おっと、もうしばらくは無理はしない方がいいと思うぞ。なんせ脳がガッツリ揺れてんだ。しばらくは満足に手足を動かすことすらできないはずだ」
「ぐぅ……っ、愚かな人ぞく……め、が……」
「やっぱ喋れるんだな」
「ガルルルルルッッッ!」
「だからそう睨むなって。でも、ふむ……どうしたもんかな……」
俺は少し思案する。
というのも、今回のは言ってみれば対処療法にすぎないからだ。
根本原因を取り除かなければ、結局また荷馬車が襲われる繰り返しになるだけだ。
なんとなくなんだけどさ、こいつは多分悪いやつじゃないんじゃないか? って気がするんだよな。
《シュプリームウルフ》は昔から人間と共存してきたみたいだし、壊滅させられた輸送部隊に死者がでていなかったことが、俺はずっと気になっていた。
そして実際に戦ってみてよく分かった。
こいつは掛け値なしに強い、SS級ってのは伊達じゃない。
これだけの戦闘力をもってすれば、護衛部隊の一人や二人その気になればいつでも殺せたはずなのだ。
なのにこいつは積み荷を破壊しただけで終わりで、敗走する部隊を追うことすらしなかったのだ。
つまり最初から殺す気なんてさらさら無かったってことだ。
何らかの襲ってきた理由があるはずで、そいつを解決してやれば安全になるはず、ってのが俺の考えなのだった。
《シュプリームウルフ》さえ襲ってこなければ、野盗程度ならばトラヴィスの護衛団なら十分に対処できるだろう。
そうなれば安全安心で万々歳だ。
もうここまで乗りかかった船だし、なんだったら俺が困りごとの手助けしてもいい。
ってなわけで。
どうにかして《シュプリームウルフ》とコミュニケーションを取れないかと俺は考えていたわけだった。
「そう言う意味ではサーシャが落っこちてくれたのは、結果的にはラッキーだったな」
「やりましたの! セーヤ様に褒められましたわ! ふふっ、あれは言うなれば転進! 戦略的転落なのですわ!」
「ごめん、ちょっとなに言ってるか分からないかな……」
なぜかドヤ顔ってるサーシャはさておいてだ。
「なぁ、仲良くしようぜ? 俺は別にお前とケンカしたいわけじゃないんだよ。せっかく言葉が通じるんだ。まずは平和裏に話し合おう」
これは俺の本心からの言葉だったんだけど、
「こうやって目の前に刃を突きつけておいて、平和だの話し合いだなどと、どの口が言うか……!」
「……まぁ、確かに」
言われてみればその通りである。
凹ってうずくまっている相手に、刀を突きつけて見下ろしておいて、交渉も話し合いもあったもんじゃない。
これじゃただの脅迫だ。
「なら、これでいいかな――」
言いながら、俺が突きつけていた日本刀を引こうとした時だった。
突如、《シュプリームウルフ》が日本刀を掴んだかと思うと、自らの喉もとにザクッと引き刺したのは――!
「お前、何を――っ」
そも、もうこんな元気に動けるようになってたのかよ……!
なんつー驚異的な回復力だ……!
あとこれは完全な言い訳なんだけど、サーシャにくっつかれて反応が遅れてしまった。
いやほら、なんだかんだでね?
平らな板の中にも、かすかな女の子の柔らかみを感じてしまったというか?
存在しないからこそ、探し当てた砂漠の小さなオアシスに得も言われぬ感動を覚えてしまったというか……はい、ごめんなさい、ちょっと油断してました。
「くっ、くく……愚かな人族よ、見るがいい。我らの『固有神聖』を――」
「なっ、『固有神聖』……だと……!」
ちょっと待て、《シュプリームウルフ》の『固有神聖』は《群体分身》じゃなかったのか!?
言って、カウンターをもろに喰らって崩れ落ち、地面に這いつくばったまま怒りの形相で睨み上げる《シュプリームウルフ》の鼻っ面へと、俺は日本刀を突きつける。
「グルぅッっっ、ガグぅゥッ……!」
怒りのまま飛びかかろうとしたのだろう。
しかしその身体はというと意志に反してわずかにピクリとしただけだった。
「おっと、もうしばらくは無理はしない方がいいと思うぞ。なんせ脳がガッツリ揺れてんだ。しばらくは満足に手足を動かすことすらできないはずだ」
「ぐぅ……っ、愚かな人ぞく……め、が……」
「やっぱ喋れるんだな」
「ガルルルルルッッッ!」
「だからそう睨むなって。でも、ふむ……どうしたもんかな……」
俺は少し思案する。
というのも、今回のは言ってみれば対処療法にすぎないからだ。
根本原因を取り除かなければ、結局また荷馬車が襲われる繰り返しになるだけだ。
なんとなくなんだけどさ、こいつは多分悪いやつじゃないんじゃないか? って気がするんだよな。
《シュプリームウルフ》は昔から人間と共存してきたみたいだし、壊滅させられた輸送部隊に死者がでていなかったことが、俺はずっと気になっていた。
そして実際に戦ってみてよく分かった。
こいつは掛け値なしに強い、SS級ってのは伊達じゃない。
これだけの戦闘力をもってすれば、護衛部隊の一人や二人その気になればいつでも殺せたはずなのだ。
なのにこいつは積み荷を破壊しただけで終わりで、敗走する部隊を追うことすらしなかったのだ。
つまり最初から殺す気なんてさらさら無かったってことだ。
何らかの襲ってきた理由があるはずで、そいつを解決してやれば安全になるはず、ってのが俺の考えなのだった。
《シュプリームウルフ》さえ襲ってこなければ、野盗程度ならばトラヴィスの護衛団なら十分に対処できるだろう。
そうなれば安全安心で万々歳だ。
もうここまで乗りかかった船だし、なんだったら俺が困りごとの手助けしてもいい。
ってなわけで。
どうにかして《シュプリームウルフ》とコミュニケーションを取れないかと俺は考えていたわけだった。
「そう言う意味ではサーシャが落っこちてくれたのは、結果的にはラッキーだったな」
「やりましたの! セーヤ様に褒められましたわ! ふふっ、あれは言うなれば転進! 戦略的転落なのですわ!」
「ごめん、ちょっとなに言ってるか分からないかな……」
なぜかドヤ顔ってるサーシャはさておいてだ。
「なぁ、仲良くしようぜ? 俺は別にお前とケンカしたいわけじゃないんだよ。せっかく言葉が通じるんだ。まずは平和裏に話し合おう」
これは俺の本心からの言葉だったんだけど、
「こうやって目の前に刃を突きつけておいて、平和だの話し合いだなどと、どの口が言うか……!」
「……まぁ、確かに」
言われてみればその通りである。
凹ってうずくまっている相手に、刀を突きつけて見下ろしておいて、交渉も話し合いもあったもんじゃない。
これじゃただの脅迫だ。
「なら、これでいいかな――」
言いながら、俺が突きつけていた日本刀を引こうとした時だった。
突如、《シュプリームウルフ》が日本刀を掴んだかと思うと、自らの喉もとにザクッと引き刺したのは――!
「お前、何を――っ」
そも、もうこんな元気に動けるようになってたのかよ……!
なんつー驚異的な回復力だ……!
あとこれは完全な言い訳なんだけど、サーシャにくっつかれて反応が遅れてしまった。
いやほら、なんだかんだでね?
平らな板の中にも、かすかな女の子の柔らかみを感じてしまったというか?
存在しないからこそ、探し当てた砂漠の小さなオアシスに得も言われぬ感動を覚えてしまったというか……はい、ごめんなさい、ちょっと油断してました。
「くっ、くく……愚かな人族よ、見るがいい。我らの『固有神聖』を――」
「なっ、『固有神聖』……だと……!」
ちょっと待て、《シュプリームウルフ》の『固有神聖』は《群体分身》じゃなかったのか!?
0
お気に入りに追加
1,938
あなたにおすすめの小説
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる