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異世界転生 4日目(後編)

第69.5話 大大大大――

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「ウヅキが知っている俺は本当の俺じゃない。借り物と偽物チートで塗りたくった見せかけの俺なんだよ……」

 ……言った。
 言ってしまった。

 チートのことを、弱い俺の心を――何もかも全てをウヅキにぶちまけてしまった。

 そして全てをさらけ出した俺は、うつむいたままでウヅキの顔を見ることができないでいた。
 ウヅキの失望した顔を見るのが怖かった。

 でもいいんだ、これでいいんだ。
 全てを知りさえすれば、ウヅキだって俺に愛想を尽かすだろう。

 それに安心してくれ。
 最後にウヅキが《神焉竜しんえんりゅう》から逃げる時間くらいは、何がなんでも命をしてでも稼いでみせるから――。

 それがニセモノの力で英雄の振りをした俺にできる、たった一つの贖罪しょくざいなのだから――。

 だからこれでいいんだ――、

「借り物じゃ――、ニセモノじゃダメなんですか?」

「――――え?」

 だからその問いかけは思いもよらないものだった。

「ニセモノじゃダメなんですか? ニセモノだったら、セーヤさんがやってきたことは全部嘘になっちゃうんですか?」
「それ、は――」

「わたしはセーヤさんの過去を知りません。だから借り物とかニセモノって言われても、実のところさっぱりです。こんなにすごいセーヤさんがいったい何に悩んでいるのか、今だってよく分かっていません。だけど――」

 そこでウヅキは一旦、言葉を切ると、

「だけど出会ってからのセーヤさんのことならいっぱい知っています! いっぱいいっぱい知っています!」

 ニコッと特上の笑みを浮かべて言った。

 向日葵ひまわりのようなその笑顔が。
 泣きたくて苦しくて、色んなマイナス思考でぐちゃぐちゃになった俺の心を、そっと優しく包み込んでくる。

「セーヤさんは何度もわたしを助けてくれました。ハヅキを助けてくれました。村のみんなを救ってくれました。そして今、こんな傷だらけになっても、戦ってくれています!」

「だからそれは、全部ニセモノの力なんだよ――」

「ねぇ、セーヤさん。セーヤさんがやってきたことは、それがニセモノの力でやったらダメなことだったんですか? 誰かを幸せにすることが、それを借り物の力でしたとして、それはダメなんことなんですか?」

 それはいつも誰かのためを思い、自分のできることを一生懸命やってきたウヅキらしい言葉で。
 だからこそ不意打ちのように俺の心に突き刺さったのだった。

「わたしはセーヤさんがやってきたことが、とても素晴らしいことだと思います! この際、セーヤさんの気持ちなんて関係ありません。だってわたしがそう思うんですから!」

 その言い方は。
 グンマさんが連れて行かれて涙にくれるウヅキに向かって、俺が言ったセリフをそっくりそのままマネたもので――。

「ニセモノの力だからなんなんですか! 例えニセモノだったとしても、ずっと頑張ってたセーヤさんが、わたしは好きなんです! 大好きです! 大大大大――大好きなんです!!」

 ぐっと両手を握ってあごの隣に寄せ、鼻息荒くふんすと宣言するウヅキを見て、

「まったく、ウヅキは変なところで強引なんだからさ」
 俺はすぅっと肩の力が抜けたのを感じていた。

「えへへ、お相子ですもん。セーヤさんはいつも、心配するわたしの気持ちを無視して頑張っちゃいます。だからたまにはわたしも、セーヤさんの気持ちを無視して言っちゃうんですから」

「そうだな――はっ、あははは」

 気持ちが楽になったせいか、なんかもう色々悩むのが馬鹿らしくなった俺は、思わず大きな声で笑ってしまっていた。

「な、なな、なんで今笑ったんですか!? っていうかですね、最後はわたし、かなり勇気的なものをふりしぼって言ったんですけど! むしろ言っちゃったんですけど!? まさかのスルーなんですか!?」

「いや、ごめん。うん――俺もウヅキのことが大好きだ。大大大大――大好きだぞ!」
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