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第一部「《神滅覇王》――其の者、神をも滅する覇の道を往きて――」 異世界転生 1日目
第19話 異世界温泉~初日~
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「あぁ、熱いお湯が気持ちいい……癒される……」
あの後。
ハヅキの回復を祝った、質素ながらも奮発したであろう晩御飯を一緒に頂いてから。
今はウヅキの家と短い通路で繋がった温泉に、俺はまったりと浸かっていた。
今日は歩きづめだったこともあって、湯の中に気持ちよく伸ばした両足は、極上の開放感を伝えてくる。
「あぁ~~生き返る……ちょー気持ちいい……日本人なら温泉だろ、常識的に考えて……それと晩御飯、美味しかったなぁ……」
主食は白米で、たけのこやしいたけを使った、日本の家庭料理と似たものが多くてとても食べやすく、なによりウヅキの料理はかなりの腕前で、どれを食べても本当に美味しかったのだ。
「でも一番はやっぱ鶏の唐揚げだよな。あれは毎日でも食べたい」
下味の加減が絶妙で、いくら食べても飽きがこなかったのだ。
しかもウヅキときたら、
「はい、この一番大きいのをどうぞ、次はこっちの2番目に大きいのをどうぞ」
なんて新妻みたいに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたのもあって、ついつい食べ過ぎてしまったのだった。
いやまぁ俺の人生には新妻どころか彼女がいたことさえなかったので、完全な想像なんだけれど。
全ての料理を作ってくれたウヅキに、特に鶏の唐揚げが美味しかったと伝えると、
「えへへ、ありがとうございます。なにせ地鶏はこの地域の名産品ですから。もっとも、これは庶民向けに安価で大量に売られているものなんです。帝都に出荷されるA5ランクの特上地鶏は、もっと美味しいそうですよ。食べたことはないので、聞いた話ですけどね」
とのことだった。
ウヅキの料理の腕もさることながら、庶民向けですら十二分に美味しいのは、さすが名産といったところか。
そして温泉に入ったことで、回復系C級チート『実家は檜風呂』が発動。体力・気力がぐんぐん回復していく。
このチートはフリーエージェント移籍した有名プロ野球選手が、その契約金でずっと支えてくれた母親に檜風呂を贈ったという、とても素敵なエピソードをもとにした心も温まるハートフルなチートである。
そして、こんな小さな村に温泉があることを不思議に思ったものだが、
「このあたりは火山地帯にあるおかげで、温泉が至る所にあるんです。鉱物が混じっているので、飲むことはできないんですけど、お風呂のお湯にだけは困ることがないというのが、この地域の隠れたセールスポイントなんですよ」
ってなことをウヅキが説明してくれた。
さらに温水は養鶏に必要な保温設備にも利用され、この地域で養鶏が大いに発展した理由の一つでもあるらしい。
「小学校の社会の授業みたいで懐かしかったな。ウヅキも説明上手で学校の先生みたいだったし。あんな優しくて可愛くておっぱいな若い先生がいたら、学校は天国だったろうなぁ……」
腹いっぱい、からの温泉! という極楽コンボで完全リラックスモードに入っているからか、割と最悪だなと自分でも思う独り言だ。
「まぁほら? 妄想するのは自由だからね……」
そうそう、ウヅキの家は村の集会所も兼ねていて――だから大きかったのだ――村を代表してこの温泉を管理しているそうだ。
つまりウヅキの家に居候している間は、毎日この天然温泉に入ることができるってわけだ。
最悪、水浴びも覚悟していたので、お湯につかってはじめてお風呂に入った気になる日本人的には、温泉完備というのはとてもありがたい話だった。
「それにしても、異世界転生してまだ1日目だけど、色んなことがあったよなぁ」
温泉で心身ともにのほほんとしながら、激動の一日目を思い起こす。
はじまりはまさに寝耳に水だった。
異世界転生官のアリッサから、いきなり「突然ですがあなたは死にました」と言われたときは、どうしようかと思ったものだ。
その後、異世界転生できると知って小躍りして。
うまいことアリッサを言いくるめて――じゃない、建設的な相互理解を経て、全チート付与して異世界転生させてもらって。
「でもアリッサにはちょっと悪いことしちゃったかな。経歴に大きな傷がつかなければいいんだけれど」
そして異世界転生してからは、すぐにウヅキという理想の女の子と出会うことができた。
そこに絡んできたゴブリンを凹ったら、ウヅキのおっぱいがたゆんたゆんで……うん、あれは凄かった。
そんなウヅキに「セーヤさん」と名前で呼んでもらえるようになって、すごく嬉しかったんだ。
二人で一緒に肩車をして薬草を採ったけど、それではハヅキは治らないと告げられて。
だからS級チートで治したら、死ぬほど感謝してもらえて。あの時のウヅキのハグはすごく柔らかかったな……。
最終的に住む場所とともに、まなしーというあだ名もゲットして。
「ほんと、ありすぎってくらいに色んなことがあったよなぁ……初めて尽くしで良いこと尽くめだったから、まったくもって文句なんてないんだけどさ」
そんな風に、温泉で心身ともにくつろぎながら、今日という新たなはじまりの日を、しみじみと振り返っていた時だった。
ガラッという音がして脱衣所との間の引き戸が開くと、
「お、お邪魔しますね……」
おそるおそると言った感がにじみ出たウヅキの声が聞こえてきたのは――
あの後。
ハヅキの回復を祝った、質素ながらも奮発したであろう晩御飯を一緒に頂いてから。
今はウヅキの家と短い通路で繋がった温泉に、俺はまったりと浸かっていた。
今日は歩きづめだったこともあって、湯の中に気持ちよく伸ばした両足は、極上の開放感を伝えてくる。
「あぁ~~生き返る……ちょー気持ちいい……日本人なら温泉だろ、常識的に考えて……それと晩御飯、美味しかったなぁ……」
主食は白米で、たけのこやしいたけを使った、日本の家庭料理と似たものが多くてとても食べやすく、なによりウヅキの料理はかなりの腕前で、どれを食べても本当に美味しかったのだ。
「でも一番はやっぱ鶏の唐揚げだよな。あれは毎日でも食べたい」
下味の加減が絶妙で、いくら食べても飽きがこなかったのだ。
しかもウヅキときたら、
「はい、この一番大きいのをどうぞ、次はこっちの2番目に大きいのをどうぞ」
なんて新妻みたいに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたのもあって、ついつい食べ過ぎてしまったのだった。
いやまぁ俺の人生には新妻どころか彼女がいたことさえなかったので、完全な想像なんだけれど。
全ての料理を作ってくれたウヅキに、特に鶏の唐揚げが美味しかったと伝えると、
「えへへ、ありがとうございます。なにせ地鶏はこの地域の名産品ですから。もっとも、これは庶民向けに安価で大量に売られているものなんです。帝都に出荷されるA5ランクの特上地鶏は、もっと美味しいそうですよ。食べたことはないので、聞いた話ですけどね」
とのことだった。
ウヅキの料理の腕もさることながら、庶民向けですら十二分に美味しいのは、さすが名産といったところか。
そして温泉に入ったことで、回復系C級チート『実家は檜風呂』が発動。体力・気力がぐんぐん回復していく。
このチートはフリーエージェント移籍した有名プロ野球選手が、その契約金でずっと支えてくれた母親に檜風呂を贈ったという、とても素敵なエピソードをもとにした心も温まるハートフルなチートである。
そして、こんな小さな村に温泉があることを不思議に思ったものだが、
「このあたりは火山地帯にあるおかげで、温泉が至る所にあるんです。鉱物が混じっているので、飲むことはできないんですけど、お風呂のお湯にだけは困ることがないというのが、この地域の隠れたセールスポイントなんですよ」
ってなことをウヅキが説明してくれた。
さらに温水は養鶏に必要な保温設備にも利用され、この地域で養鶏が大いに発展した理由の一つでもあるらしい。
「小学校の社会の授業みたいで懐かしかったな。ウヅキも説明上手で学校の先生みたいだったし。あんな優しくて可愛くておっぱいな若い先生がいたら、学校は天国だったろうなぁ……」
腹いっぱい、からの温泉! という極楽コンボで完全リラックスモードに入っているからか、割と最悪だなと自分でも思う独り言だ。
「まぁほら? 妄想するのは自由だからね……」
そうそう、ウヅキの家は村の集会所も兼ねていて――だから大きかったのだ――村を代表してこの温泉を管理しているそうだ。
つまりウヅキの家に居候している間は、毎日この天然温泉に入ることができるってわけだ。
最悪、水浴びも覚悟していたので、お湯につかってはじめてお風呂に入った気になる日本人的には、温泉完備というのはとてもありがたい話だった。
「それにしても、異世界転生してまだ1日目だけど、色んなことがあったよなぁ」
温泉で心身ともにのほほんとしながら、激動の一日目を思い起こす。
はじまりはまさに寝耳に水だった。
異世界転生官のアリッサから、いきなり「突然ですがあなたは死にました」と言われたときは、どうしようかと思ったものだ。
その後、異世界転生できると知って小躍りして。
うまいことアリッサを言いくるめて――じゃない、建設的な相互理解を経て、全チート付与して異世界転生させてもらって。
「でもアリッサにはちょっと悪いことしちゃったかな。経歴に大きな傷がつかなければいいんだけれど」
そして異世界転生してからは、すぐにウヅキという理想の女の子と出会うことができた。
そこに絡んできたゴブリンを凹ったら、ウヅキのおっぱいがたゆんたゆんで……うん、あれは凄かった。
そんなウヅキに「セーヤさん」と名前で呼んでもらえるようになって、すごく嬉しかったんだ。
二人で一緒に肩車をして薬草を採ったけど、それではハヅキは治らないと告げられて。
だからS級チートで治したら、死ぬほど感謝してもらえて。あの時のウヅキのハグはすごく柔らかかったな……。
最終的に住む場所とともに、まなしーというあだ名もゲットして。
「ほんと、ありすぎってくらいに色んなことがあったよなぁ……初めて尽くしで良いこと尽くめだったから、まったくもって文句なんてないんだけどさ」
そんな風に、温泉で心身ともにくつろぎながら、今日という新たなはじまりの日を、しみじみと振り返っていた時だった。
ガラッという音がして脱衣所との間の引き戸が開くと、
「お、お邪魔しますね……」
おそるおそると言った感がにじみ出たウヅキの声が聞こえてきたのは――
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