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エピローグ オペレーション『Ko-bai!』(一人でお買い物作戦)
第68話 最終話 穏やかな日常
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◇
「サファイアは1000円まで使えるから。早速、買うお菓子を選んでみよう」
「わかった!」
サファイアは目を大きくすると、棚をジイッと見て、
「あった!」
まずはいの一番にビスコを取ると、俺が持つ買い物カゴに入れる。
「えっと、100えん、だから……あと900えん、つかえる!」
「良くできました。正解よ。偉いわねー」
ミリアリアがサファイアの頭を優しく撫でると、
「いま、さんすう、べんきょうしてる、から。とーぜん!」
サファイアは自慢げに胸を張った。
「よし、残り900円。次は何を買うんだ?」
「うーんと……じゃあ、じゃあ……これ!」
サファイアはプリクマのウエハースを手に取った。
さっきミリアリアが言っていたシールの入った物だ。
「これは、150えん、だから……まず、100をひいて、800えんになって……えっと750えん?」
「すごいな、正解だ」
「やった!」
その後も、サファイアは棚に陳列されたお菓子とにらめっこしながら、見事に1000円という金額をほぼきっちり使い切った。
後はお会計だけだが、人見知りするサファイアにとってはここが一番の関門だ。
しかし俺とミリアリアが安心させるように肩に手を置いてあげていたのと、店員が俺たちの知り合いで、さっき飴をくれた人というのもあって、
「全部で990円ね」
「あの、えっと、これで、おねがい、します」
サファイアはおどおどしながらも、それでも1000円札をちゃんと自分の手で差し出した。
「1000円を貰ったから、お釣りは10円ね。お買い上げありがとうサファイアちゃん。また来てね」
店員は優しい笑顔とともに、子供にもわかりやすい言葉で伝えながら、お釣りの10円とレシートをサファイアに渡した。
「えっと……はい」
サファイアは小さくそう答えると、やっぱりまだ完全に不安は消せないのだろう。
てててっと、逃げるみたいに駆け足で俺の背中に回り込んでしまった。
ま、最初はこんなもんだろう。
少しずつ慣れていけばいいさ。
サファイアはまだ幼い。
この先には長い人生が待っているのだから。
そんな少し父親っぽいことを考えながら、俺はエコバッグに詰めてもらったお菓子を左手に取った。
「さぁ、サファイア。帰ろうか」
そして右手で、サファイアの左手を取る。
サファイアの小さい手が握り返してきた。
「今日はお買い物、よく頑張ったわね。すっごく偉かったわよ」
続いてミリアリアもサファイアの右手を取った。
「うん!」
俺とミリアリアに両手を繋いでもらって、すっかり元気にサファイアだった。
すごく他愛もない日常。
穏やかで、幸せで。
「なんかいいな、こういうの」
俺の口からは自然とそんな言葉が漏れ出ていた。
「ふふっ、ですね♪」
これからも3人で穏やかな日常を重ねて行ければいいな。
そんなことを思いながら、俺たちは3人手を繋いでマイホームへと向かった。
悪の秘密研究所を壊滅させたら、実験体の少女に懐かれたんだが……。若き凄腕エージェント・ムラサメはある日突然、1児の父となる。
(完)
「サファイアは1000円まで使えるから。早速、買うお菓子を選んでみよう」
「わかった!」
サファイアは目を大きくすると、棚をジイッと見て、
「あった!」
まずはいの一番にビスコを取ると、俺が持つ買い物カゴに入れる。
「えっと、100えん、だから……あと900えん、つかえる!」
「良くできました。正解よ。偉いわねー」
ミリアリアがサファイアの頭を優しく撫でると、
「いま、さんすう、べんきょうしてる、から。とーぜん!」
サファイアは自慢げに胸を張った。
「よし、残り900円。次は何を買うんだ?」
「うーんと……じゃあ、じゃあ……これ!」
サファイアはプリクマのウエハースを手に取った。
さっきミリアリアが言っていたシールの入った物だ。
「これは、150えん、だから……まず、100をひいて、800えんになって……えっと750えん?」
「すごいな、正解だ」
「やった!」
その後も、サファイアは棚に陳列されたお菓子とにらめっこしながら、見事に1000円という金額をほぼきっちり使い切った。
後はお会計だけだが、人見知りするサファイアにとってはここが一番の関門だ。
しかし俺とミリアリアが安心させるように肩に手を置いてあげていたのと、店員が俺たちの知り合いで、さっき飴をくれた人というのもあって、
「全部で990円ね」
「あの、えっと、これで、おねがい、します」
サファイアはおどおどしながらも、それでも1000円札をちゃんと自分の手で差し出した。
「1000円を貰ったから、お釣りは10円ね。お買い上げありがとうサファイアちゃん。また来てね」
店員は優しい笑顔とともに、子供にもわかりやすい言葉で伝えながら、お釣りの10円とレシートをサファイアに渡した。
「えっと……はい」
サファイアは小さくそう答えると、やっぱりまだ完全に不安は消せないのだろう。
てててっと、逃げるみたいに駆け足で俺の背中に回り込んでしまった。
ま、最初はこんなもんだろう。
少しずつ慣れていけばいいさ。
サファイアはまだ幼い。
この先には長い人生が待っているのだから。
そんな少し父親っぽいことを考えながら、俺はエコバッグに詰めてもらったお菓子を左手に取った。
「さぁ、サファイア。帰ろうか」
そして右手で、サファイアの左手を取る。
サファイアの小さい手が握り返してきた。
「今日はお買い物、よく頑張ったわね。すっごく偉かったわよ」
続いてミリアリアもサファイアの右手を取った。
「うん!」
俺とミリアリアに両手を繋いでもらって、すっかり元気にサファイアだった。
すごく他愛もない日常。
穏やかで、幸せで。
「なんかいいな、こういうの」
俺の口からは自然とそんな言葉が漏れ出ていた。
「ふふっ、ですね♪」
これからも3人で穏やかな日常を重ねて行ければいいな。
そんなことを思いながら、俺たちは3人手を繋いでマイホームへと向かった。
悪の秘密研究所を壊滅させたら、実験体の少女に懐かれたんだが……。若き凄腕エージェント・ムラサメはある日突然、1児の父となる。
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