上 下
54 / 68
オペレーション『Water Side Angel』(水辺の天使作戦)

第54話「狂ってるな。理解に苦しむ」

しおりを挟む
「例えばエネルギー問題だ。天使炉から無限に涌き出る魔力で、世界のエネルギー問題は全て解決する。無限のエネルギーを手にした人類は、次なる進化のステージへと進むだろう。同時にエネルギー産出国は価値を失い滅びゆき、人と世界の在り方は大きく変わる」

「それでお前はどうしようってんだ? サファイアを犠牲にこの世のあり方を変えて、それでお前は新たな世界の王にでもなろうってのか? 誰かの犠牲の上に成り立つ新世界なんて、俺はクソくらえだがな」

「新世界の王? ははは、そんなものに興味はないよ」
「……じゃあお前の目的はなんだ?」

「そんなのは決まっている。私はただ歴史に名を残せればいい。天使の力を顕現させ、人類を新たなステージへと導いた、神の代行者としてね。そのあとに天使炉がどう使われようが、実のところそこまで興味はないんだ」

「なん……、だと……?」

「科学の歴史とはすなわち、発明の歴史に他ならない。世界を変える発明をする。それが科学者の唯一にして究極の目的なのだから。私は史上最高の科学者として、歴史に名前を残すのだよ」

 エンドレス・ウォーカーはまるでオペラの主役が観客に語り掛けるように、恍惚とした表情で、両手を大きく開いて俺に自説を語ってみせた。

「狂ってるな。理解に苦しむ」

「はなから理解されようとは思っていないさ。しょせん、君たち凡人に科学の何たるかは理解できはしないのだから。暴力でしか物事を解決できない、君たちのような野蛮なサルどもにはね」

「非道な人体実験を繰り返した犯罪者風情が、言ってくれるな」

「科学の発展に犠牲はつきものだろう? 有史以来、人はそうやって世界を変え続けてきた。それすら君は否定するのかい?」

「はんっ! 史上最高の科学者になりたいと言いながら、先人の偉業にすがるのか? 程度が知れるぜ」

「チッ……。サルの分際でなんとも不快だな、君は。まぁいい。無駄話が過ぎた。そろそろ実験体334号を返してもらおうか。アレは君たちが持っているには過ぎた道具だ。それこそ覇権を狙うどこぞの大国にでも提供すれば、世界は即座にその形を変革するだろうからね」

「サファイアを犯罪者の元に返すわけがないだろうが。寝言は寝て言え。世界の形も変えさせはしない。それとサファイアをモノのように扱うんじゃねえ! あの子は優しくてまっすぐな、何も知らない幼子だ!」

「暴力は嫌いなんだがね。要求が受け入れられない以上は、実力行使をするのもやむなし、か」

「イージスの誇るアサルト・ストライカーズ。その隊長の俺を相手に、えらく余裕な口ぶりだな。俺に勝てると本気で思っているのか?」

 俺は魔力を開放する。
 俺の身体の周りに魔力のバリアがうっすらと展開され、活性化した魔力によって身体能力や反射神経が格段に向上する。

「もちろん思っているさ」
 しかしエンドレス・ウォーカーは臨戦態勢の俺を前にしても、笑みを崩しはしなかった。

「見たことのない魔法機を身体中に取り付けているみたいだが、そんなものでどうにかなると思っているなら、考え違いだぜ?」

「考え違いかどうか、どうぞ、好きなだけかかってきて試してくれて構いませんよ?」
 エンドレス・ウォーカーは手のひらをクイクイとして俺を手招きする。

 本当に舐められたもんだ。

「いいだろう――はぁっ!」

 俺は気合とともに一瞬で距離を詰める!

 得意の魔法格闘戦の距離に持ち込むと、俺は魔力のこもった拳を、エンドレス・ウォーカーのみぞおちへと叩き込んだ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...