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オペレーション『New Family』(新しい家族作戦)
第32話 あのね帳と後日談(1)
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~~あのね帳(サファイア)~~
おじじ、あのね。
きょうは、あたらしい、かぞくが、できました。
サファイアは、おねえちゃんに、なるんだって!
サファイアはおねえちゃんなので、ちゃんと、めんどうを、みて、あげるよ!
~~後日~~
なぜか俺はダイゴス長官に、朝イチで長官室に呼び出されていた。
「強襲攻撃部隊アサルト・ストライカーズ隊長カケル・ムラサメ、出頭しました」
「オペレーション・エンジェルで多忙の中、わざわざ来てもらってすまんね」
「いえ、お気遣いなく。それでご用件はなんでしょうか?」
「今日呼んだのは他でもない。結婚式について話したいと思ってね」
「……結婚式、ですか?」
急になんの話だ?
誰かダイゴス長官の知り合いでも結婚するんだろうか?
「ふむ。その様子だと式は上げないつもりのようだね」
「えっと、そもそも何の話をされているのか、理解が追い付ていないのですが……」
「隠さんでもいい。私は全て分かっている。できちゃった婚――いや今はさずかり婚と言うんだったかね?――若者らしくていいじゃないか」
「は、はぁ。そうですね?」
詰めないといけない話でもなさそうだし、とりあえず話の流れに乗りつつ、曖昧にうなずく俺。
何の話かさっぱり分からないんだが、ダイゴス長官がそう言うんならそうなんだろう。
なにせダイゴス長官ときたら、現場エージェントとしての若い頃も、指揮監督能力が問われる今の長官としても、輝かしい実績をいくつも積み上げてきたスーパーエリートなのだ。
俺も周囲からは、『ダイゴス長官の後継者』だのなんだの、もてはやされてはいるんだが、ぶっちゃけ実績が違い過ぎる。
この人は俺と比べるなんて失礼千万ってくらいに、本当に凄い人なのだ。
そんなダイゴス長官が分かっているというのなら、俺としてはその言葉を信じるだけだった。
俺はそれくらいダイゴス長官のことを信用もしているし、信頼もしていた。
あと個人的には、できちゃった婚だろうが、さずかり婚だろうが、どっちの呼び名でも特になにがどうというのはない。
今の時代、そういう結婚の仕方も個人の自由の範疇なんだろうという程度の認識だ。
それはともあれ。
ダイゴス長官の話は続く。
「たしかにイージスのエージェントは多忙を極める。だがしかし、事は一生に一度の晴れ舞台だ。よって私は、式は挙げるべきだと思っているのだ」
「結婚式に限らず、節目節目の儀式は大事だと自分も思います」
「そうだろうそうだろう。なに、段取りは全て私がやっておこう。君の忙しさは十分承知しているからね。私も忙しいが、それくらいの余裕なら十分にあるのでね」
ええっと、つまりあれか?
俺に誰か――おそらくはダイゴス長官の知り合い――の結婚式に出ろって話かな?
俺はダイゴス長官に拾われ、引き立てて貰ったおかげで今の地位にいる。
そういう恩返しならいくらでも引き受けよう。
「そうまでおっしゃっていただけるなら、よろしくお願いします。ところで、これは何の話なので――」
俺が改めて事の詳細を確認しようと尋ねかけたところで、
コンコン。
長官室がノックされて、ダイゴス長官の秘書が入ってきた。
「ご歓談中、失礼いたします。ダイゴス長官、国家公安委員長が至急お会いしたいとのことです」
「国家公安委員長が? そんな予定はあったかね?」
「緊急の案件とのことで、既にこちらにお目見えになっておられます。現在は応接室でお待ちいただいておりますが、いかがいたしますか?」
「分かった。すぐに会うと伝えてくれ」
「かしこまりました」
秘書はテキパキと会話を終えると、下がっていった。
「すまないが、詳しい話はまた後日にでもしよう」
「了解しました。それではカケル・ムラサメ任務に戻ります」
俺はイマイチ腑に落ちないまま、長官室を後にした。
「ま、あの人が任せろと言ったんだから、任せておけば大丈夫だろ」
廊下を歩きながら俺は一人つぶやいた。
俺のことを見出し、我が子のように育ててくれたダイゴス長官を、俺は心の底から信頼している。
どう転んでも悪いようにはならないはず。
何の問題もないさ。
おじじ、あのね。
きょうは、あたらしい、かぞくが、できました。
サファイアは、おねえちゃんに、なるんだって!
サファイアはおねえちゃんなので、ちゃんと、めんどうを、みて、あげるよ!
~~後日~~
なぜか俺はダイゴス長官に、朝イチで長官室に呼び出されていた。
「強襲攻撃部隊アサルト・ストライカーズ隊長カケル・ムラサメ、出頭しました」
「オペレーション・エンジェルで多忙の中、わざわざ来てもらってすまんね」
「いえ、お気遣いなく。それでご用件はなんでしょうか?」
「今日呼んだのは他でもない。結婚式について話したいと思ってね」
「……結婚式、ですか?」
急になんの話だ?
誰かダイゴス長官の知り合いでも結婚するんだろうか?
「ふむ。その様子だと式は上げないつもりのようだね」
「えっと、そもそも何の話をされているのか、理解が追い付ていないのですが……」
「隠さんでもいい。私は全て分かっている。できちゃった婚――いや今はさずかり婚と言うんだったかね?――若者らしくていいじゃないか」
「は、はぁ。そうですね?」
詰めないといけない話でもなさそうだし、とりあえず話の流れに乗りつつ、曖昧にうなずく俺。
何の話かさっぱり分からないんだが、ダイゴス長官がそう言うんならそうなんだろう。
なにせダイゴス長官ときたら、現場エージェントとしての若い頃も、指揮監督能力が問われる今の長官としても、輝かしい実績をいくつも積み上げてきたスーパーエリートなのだ。
俺も周囲からは、『ダイゴス長官の後継者』だのなんだの、もてはやされてはいるんだが、ぶっちゃけ実績が違い過ぎる。
この人は俺と比べるなんて失礼千万ってくらいに、本当に凄い人なのだ。
そんなダイゴス長官が分かっているというのなら、俺としてはその言葉を信じるだけだった。
俺はそれくらいダイゴス長官のことを信用もしているし、信頼もしていた。
あと個人的には、できちゃった婚だろうが、さずかり婚だろうが、どっちの呼び名でも特になにがどうというのはない。
今の時代、そういう結婚の仕方も個人の自由の範疇なんだろうという程度の認識だ。
それはともあれ。
ダイゴス長官の話は続く。
「たしかにイージスのエージェントは多忙を極める。だがしかし、事は一生に一度の晴れ舞台だ。よって私は、式は挙げるべきだと思っているのだ」
「結婚式に限らず、節目節目の儀式は大事だと自分も思います」
「そうだろうそうだろう。なに、段取りは全て私がやっておこう。君の忙しさは十分承知しているからね。私も忙しいが、それくらいの余裕なら十分にあるのでね」
ええっと、つまりあれか?
俺に誰か――おそらくはダイゴス長官の知り合い――の結婚式に出ろって話かな?
俺はダイゴス長官に拾われ、引き立てて貰ったおかげで今の地位にいる。
そういう恩返しならいくらでも引き受けよう。
「そうまでおっしゃっていただけるなら、よろしくお願いします。ところで、これは何の話なので――」
俺が改めて事の詳細を確認しようと尋ねかけたところで、
コンコン。
長官室がノックされて、ダイゴス長官の秘書が入ってきた。
「ご歓談中、失礼いたします。ダイゴス長官、国家公安委員長が至急お会いしたいとのことです」
「国家公安委員長が? そんな予定はあったかね?」
「緊急の案件とのことで、既にこちらにお目見えになっておられます。現在は応接室でお待ちいただいておりますが、いかがいたしますか?」
「分かった。すぐに会うと伝えてくれ」
「かしこまりました」
秘書はテキパキと会話を終えると、下がっていった。
「すまないが、詳しい話はまた後日にでもしよう」
「了解しました。それではカケル・ムラサメ任務に戻ります」
俺はイマイチ腑に落ちないまま、長官室を後にした。
「ま、あの人が任せろと言ったんだから、任せておけば大丈夫だろ」
廊下を歩きながら俺は一人つぶやいた。
俺のことを見出し、我が子のように育ててくれたダイゴス長官を、俺は心の底から信頼している。
どう転んでも悪いようにはならないはず。
何の問題もないさ。
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