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オペレーション『New Family』(新しい家族作戦)
第24話 イヨンモールでわんわんぬいぐるみ
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「ぬいぐるみ、いっぱい! すごい!」
イヨンモールの中にあるぬいぐるみ屋さんに入った途端に、サファイアが目を大きく見開いた。
「わたしも来るのは初めてだったんですが、これだけの数があるとなかなか壮観ですね」
「さすがイヨンモールだよな」
この辺りじゃ『困ったらとりあえずイヨンモールに行けば何とかなる』とまで言われるのは伊達じゃない。
「ねぇねぇ、ママ、むらさめ! はやくはやく!」
待ちきれないと言った様子のがサファイアが、ミリアリアの手をグイグイと引っ張って、奥に見える動物ぬいぐるみコーナーへと進んでいく。
まるで本当の親子のような2人の姿を、後ろから微笑ましい気持ちで眺めながら、俺は2人の後ろをついていった。
その間に店内の間取り、非常口の確認、不審者がいないかどうかをチェックするのも忘れない。
サファイアは狙われている可能性が極めて高い。
囮《おとり》作戦で迎え撃つのなら、警戒してしすぎることはない。
そうこうしている間にも、サファイアは犬のぬいぐるみがたくさん置いてあるコーナーに到着すると、真剣な顔をして、どの子をお迎えするか悩み始めた。
「うーん、うーん……なやむ……」
「ふふっ、みんな可愛いから悩んじゃうよね。その気持ち、ママも分かるなぁ」
「すごくなやむ……うーん、うーん……えっと、ママはどれが、すき?」
「わたし? そうね……この子なんてどうかな? 大きくて弾力があって抱き心地が良さそうよ?」
「ほんとだ! じゃあ、ほかには、ほかには?」
「この子とかどう? 他のぬいぐるみと比べて、毛がふかふかしてて触り心地がよくない?」
「ほんとだ! ママすごい! ほかにはほかには!?」
「そうね──」
ミリアリアとサファイアはぬいぐるみ選びにすっかり夢中になっていた。
大人の女性とはいえ、ミリアリアも女の子だもんな。
可愛いぬいぐるみが嫌いなはずはない。
そういえばミリアリアに招待されて、ミリアリアの実家でご両親と一緒に食事をご馳走になったことがあったんだが、ミリアリアのお母さんから、
『ムラサメさん、せっかく来てくれたんですし、この子のお部屋も見ていってあげてくださいな』
『お母さん!? 急になに言ってるのよ!?』
『なによ? せっかくの機会なんだし、ムラサメさんにアルバムとか卒業文集とかを見せてあげなさいな』
『ええっ!?』
『なにが、ええっ、よ。変なところでケチな子なんだから』
『ケチとかそんなのじゃないもん! それにそもそもカケルはそんなの興味ないだろうし』
『興味はあるぞ。ミリアリアが構わないなら、子供の頃にどんな子だったのかぜひ知りたいよ』
『ほら、ムラサメさんはそう言っているみたいだけど?』
『う、うん。じゃあ、わたしの部屋に案内しますね……?』
『なんで疑問形なんだ?』
『それはその、恥ずかしくて……』
『ごめん、声が小さくて聞こえなかったんだが』
『な、なんでもないですぅ!』
『ふふっ、仲良しさんね。じゃあ後は若い2人でごゆっくり』
とかなんとか話の流れでミリアリアの部屋も見せて貰ったんだけど、その時にベッドの上に古ぼけた犬のぬいぐるみが置いてあったんだよな。
たしかピースケとかそんな感じの名前の、首に赤い首輪をした柴犬の子犬のぬいぐるみだった。
それはさておき。
俺はサファイアを狙う例の悪党の手の者がいないかどうか周囲を警戒しつつ。
真剣にぬいぐるみを選ぶ2人と一緒になって時々、感想を言いながら――あまり参考にならない意見ではあったが――サファイアのぬいぐるみ選びを手伝った。
イヨンモールの中にあるぬいぐるみ屋さんに入った途端に、サファイアが目を大きく見開いた。
「わたしも来るのは初めてだったんですが、これだけの数があるとなかなか壮観ですね」
「さすがイヨンモールだよな」
この辺りじゃ『困ったらとりあえずイヨンモールに行けば何とかなる』とまで言われるのは伊達じゃない。
「ねぇねぇ、ママ、むらさめ! はやくはやく!」
待ちきれないと言った様子のがサファイアが、ミリアリアの手をグイグイと引っ張って、奥に見える動物ぬいぐるみコーナーへと進んでいく。
まるで本当の親子のような2人の姿を、後ろから微笑ましい気持ちで眺めながら、俺は2人の後ろをついていった。
その間に店内の間取り、非常口の確認、不審者がいないかどうかをチェックするのも忘れない。
サファイアは狙われている可能性が極めて高い。
囮《おとり》作戦で迎え撃つのなら、警戒してしすぎることはない。
そうこうしている間にも、サファイアは犬のぬいぐるみがたくさん置いてあるコーナーに到着すると、真剣な顔をして、どの子をお迎えするか悩み始めた。
「うーん、うーん……なやむ……」
「ふふっ、みんな可愛いから悩んじゃうよね。その気持ち、ママも分かるなぁ」
「すごくなやむ……うーん、うーん……えっと、ママはどれが、すき?」
「わたし? そうね……この子なんてどうかな? 大きくて弾力があって抱き心地が良さそうよ?」
「ほんとだ! じゃあ、ほかには、ほかには?」
「この子とかどう? 他のぬいぐるみと比べて、毛がふかふかしてて触り心地がよくない?」
「ほんとだ! ママすごい! ほかにはほかには!?」
「そうね──」
ミリアリアとサファイアはぬいぐるみ選びにすっかり夢中になっていた。
大人の女性とはいえ、ミリアリアも女の子だもんな。
可愛いぬいぐるみが嫌いなはずはない。
そういえばミリアリアに招待されて、ミリアリアの実家でご両親と一緒に食事をご馳走になったことがあったんだが、ミリアリアのお母さんから、
『ムラサメさん、せっかく来てくれたんですし、この子のお部屋も見ていってあげてくださいな』
『お母さん!? 急になに言ってるのよ!?』
『なによ? せっかくの機会なんだし、ムラサメさんにアルバムとか卒業文集とかを見せてあげなさいな』
『ええっ!?』
『なにが、ええっ、よ。変なところでケチな子なんだから』
『ケチとかそんなのじゃないもん! それにそもそもカケルはそんなの興味ないだろうし』
『興味はあるぞ。ミリアリアが構わないなら、子供の頃にどんな子だったのかぜひ知りたいよ』
『ほら、ムラサメさんはそう言っているみたいだけど?』
『う、うん。じゃあ、わたしの部屋に案内しますね……?』
『なんで疑問形なんだ?』
『それはその、恥ずかしくて……』
『ごめん、声が小さくて聞こえなかったんだが』
『な、なんでもないですぅ!』
『ふふっ、仲良しさんね。じゃあ後は若い2人でごゆっくり』
とかなんとか話の流れでミリアリアの部屋も見せて貰ったんだけど、その時にベッドの上に古ぼけた犬のぬいぐるみが置いてあったんだよな。
たしかピースケとかそんな感じの名前の、首に赤い首輪をした柴犬の子犬のぬいぐるみだった。
それはさておき。
俺はサファイアを狙う例の悪党の手の者がいないかどうか周囲を警戒しつつ。
真剣にぬいぐるみを選ぶ2人と一緒になって時々、感想を言いながら――あまり参考にならない意見ではあったが――サファイアのぬいぐるみ選びを手伝った。
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