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任務開始!オペレーション・エンジェル

第20話「みんなでおやすみ、たのしみ! わくわく!」

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「さてと。報告書も書き終えたし、そろそろ寝るか」

 俺は両手を上に上げて背筋を伸ばしながら、そうつぶやいた――のだが。

 そこで、とある問題に気付いてしまった。
 気付いたというか、今の今まで見ない振りしてきてしまったというか。

「寝室にあったあの大きなベッドで、3人一緒に寝るってことなのか? いやでもな。さすがにそれはどうなんだ?」

 なんてことを考えていると、コンコンとノックがされて、またもやサファイアがひょこっと顔を出した。
 デフォルメされた柴犬の子犬が描かれた、可愛らしいパジャマ姿だ。

「むらさめ、そろそろ、ねるよ」

 そう言うとサファイアは俺の手を取って、どこぞに連れて行こうとする。
 どこぞというか、この状況で連れていかれる先と言えば、寝室しかないのだけれど。

「お、おう」
 返事をしつつもその場を動かない俺を、歩きかけていたサファイアが振り返った。

「ママは、もう、まってるよ」

「ミリアリアママも一緒……なんだよな」
「みんなでおやすみ、たのしみ! わくわく!」

 言動ともにワクワクを隠せないでいるサファイアの笑顔を見ると、俺だけ別で寝るとは言いづらい。

 それに俺たちは家族なんだから、一緒に寝るのは当然と言えば当然だ。
 むしろ断る方がおかしい。
 初日から家庭内別居している両親の姿を、サファイアに見せるわけにはいかないものな。

「俺も3人で寝るのは楽しみだなぁ」
「だよね!」
 俺の言葉に、サファイアは満面の笑みを浮かべた。

 俺はTシャツとハーフパンツのラフな格好にパパっと着替えると、サファイアに手を引かれながら寝室へと向かった。

 寝室に入ると、ミリアリアはベッドの上に女の子座りしていた。

「ママ、むらさめつれて、きたよ!」
 サファイアが駆け足でベッドに行くと、ミリアリアに飛びつく。

「ありがとうサファイア。よくできましたね」
「うん! サファイアは、できるおんな、なので!」
「ふふっ、そうだねー」

 ミリアリアの胸に顔をうずめるサファイアの頭を、ミリアリアは髪をすくように優しく撫でる。

「えへへ、きもちいい……」
「よかった」
「ママ、すき……だいすき……」
「ママもサファイアのこと、大好きよ」

 しばらく2人のやり取りを見守るように眺めてから、俺は言った。
「寝る準備はできているみたいだから、灯りを消すな」

 室内が真っ暗になり、俺はミリアリアとサファイアのいるベッドへと向かう。
 掛け布団をわずかに上げて身体を潜り込ませると、優しい温もりが待っていた。

「きょうから、ママと、むらさめと、いっしょ。あったかい……」

 真っ暗な中、俺とミリアリアに挟まれた真ん中から、サファイアの嬉しそうなつぶやきが聞こえる。

「ぐっすり寝るんだぞ。寝る子は育つだ」
「うん!」
「おやすみ、サファイア」
「おやすみなさい」

 すぐにすーすーと規則正しい寝息が聞こえてくる。

「ふぅ……」
 サファイアが眠ったことを確認して、俺は小さく息をはいた。

「お疲れさまでした、カケル」
 暗闇の中、ミリアリアが小声で話しかけてくる。

「ミリアリアもお疲れ。大変だっただろ?」
「そんな、全然ですよ。サファイアはすごくいい子なので、むしろ楽しかったくらいで」

「そりゃ良かった」
「……カケルは楽しくなかったですか?」

 ミリアリアの声からは、俺の反応を窺うような、わずかな緊張が感じられた。

「楽しくなかったと言えば嘘になるけど、疲れたのも事実だな。パパになる準備なんて、まったくしてなかったからさ」

「そこはきっとすぐに慣れると思いますよ?」
「慣れるかな?」
「なにせカケルはイージスの誇る強襲攻撃部隊アサルト・ストライカーズの隊長なんですから」

「ダイゴス長官にも言われたんだけどさ。その両者の適性に、関連性はあるのかな?」

「もちろんありますよ」
「おっと、まさかの断言をされてしまったぞ?」

「カケルなら絶対大丈夫です。自信をもってパパをやりましょう」

「ミリアリアがそう言ってくれるなら、きっとそうなんだろうな。ま、やれるだけはやってみせるさ」

「その意気です。わたしも全力でサポートしますので」
「大いに期待してる」
「はい、お任せください」

「……」
「……」

 そこで話が途切れ、真っ暗な部屋に沈黙が訪れる。

「俺たちも寝るか」
「そうですね」

「おやすみ、ミリアリア」
「おやすみなさいカケル」

 目をつむると強烈な眠気が襲ってくる。

 ミリアリアと一緒に寝ることに興奮して寝付けないのではと思っていたものの。
 やはり慣れないパパ役をしたことで、かなり精神的に疲れていたようだ。

 とまぁこうして。
 俺のパパ初日はまぁまぁいい感じに幕を閉じた――。
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