上 下
8 / 68
任務開始!オペレーション・エンジェル

第8話「寝る前にみんなで一緒に入りましょうね」 「うん! ママとむらさめと、いっしょに、おふろはいる!」

しおりを挟む
「ここが『俺たちの家』か。なかなかのもんだな。間取りも広いし、住みやすそうだ」

「この辺りでこれだけ広い家を買ったら、普通は2千万くらいはしそうですよね。ふふっ、ラッキーストライクです♪」

「にしても、よく2日で家を建てられたな?」

「わたしもその辺りのことは詳しくはないのですが、作戦指示書によると、最新のブロック工法で建てたみたいですね」

 俺の疑問にミリアリアがスラスラとと淀みなく答えてくれる。
 さすがはうちのチームの頼れる副官だ。

 ちなみに作戦指示書ってのは、さっき貰ったファイルに綴じられている資料のことだ。
 さっきの今なんでまだ途中までしか読んでないんだが、ミリアリアがいてくれれば別に読まなくても問題はなさそうだ。

 と、
「おはなし、むずかしい……サファイア、ひとりぼっち……」
 サファイアがしょんぼりとした顔でつぶやいた。

「ごめんごめん。じゃあそうだな。俺はこの家に入るのは初めてだから、どこに何があるのか、早速サファイアに案内してもらおうかな?」

 俺が笑顔で問いかけると、

「わかりました!」
 サファイアはまたまた笑顔になると、再び俺の手を引いて家の中を案内し始めた。

「ここが、キッチン!」
「へぇ、見るからにいい感じだな」

「これ、最新のシステムキッチンなんですよ!」
 突然、ミリアリアが両手の拳をグッと握りながら、ズイッと身を乗り出して力説した。

「そ、そうなのか?」
 ビックリして思わずのけぞる俺。

「あれ? テレビのCMで流れているの、知りませんか? いろんな番組で流れていると思うんですけど」
「俺、国営ニュースしか見ないから、CMはほとんど見る機会がないんだよな」

 イージスの仕事も忙しいし。

「そうなんですね……ともあれ、これを使えるなんて料理をするのが今から楽しみでしょうがないんです」

 ミリアリアは目を輝かせていて、それはもう嬉しそうだった。
 ま、楽しく任務をやれるのなら、それに越したことはない。

 これまでも時々ミリアリアの家に呼ばれて手料理を食べさせてもらう機会があったんだけど、何を作らせても本当に上手だったからな。

 特にロースト・ビーフと肉じゃがは絶品だった。
 ミリアリアの結婚相手は幸せだろうなと、つい思ってしまったほどだった。
 あの時のことを思い出すだけで空腹を感じるよ。

 俺は腹を満たすだけの簡単なものしか作れないし、取り立てて料理が好きってわけでもない。
 こと料理に関してはシェフ・ミリアリアに任せるのが適任だろう。

 そんなことを考えている間にも、サファイアの案内はさらに続いていく。

「ここはリビングで、あっちがダイニングです! テレビもあるよ!」
「どっちも広々としていて、いいな」

 リビングとダイニングが扉なしで繋がったいわゆるリビングダイニングは、ガラス張りの大きな窓から、広い庭が見えることもあって、かなりの解放感を感じる。

「晴れた日の午後に、リビングのソファでお昼寝をしたら気持ちよさそうですよね」

「それはまた最高の贅沢だな」

「3にんで、おひるね! たのしみ!」
「でもソファに3人は、さすがに狭すぎるんじゃないか?」

 それだとミリアリアと密着することになってしまう。
 夫婦役をするのが任務とはいえ、男の俺と身を寄せあって眠るのは、年頃の女の子のミリアリアが可哀想だ。

「わんわんみたいに、まるくなって、くっつけば、だいじょうぶです!」
「そうだよねー、みんなでくっついたら大丈夫だよねー」

「……2人がいいなら、いいんだけどさ」
 2人っていうか、主にミリアリアがだけど。


 リビングの次はお風呂場に案内された。

「ここがおふろだよ!」

 洗面所と繋がっていて、これまたいい感じのお風呂だ。
 湯船が広めで、2人くらいなら余裕で入れそうだ。

「ここも広くていいな。普通の住宅じゃ、このサイズの風呂はとても用意できないぞ?」

 本当の家族なら、仲良く一緒にお風呂に入るのかもしれない。
 ま、俺とミリアリアはあくまで父親『役』と母親『役』だから、そこまではしないだろう。

「家族風呂って言うそうですよ。寝る前にみんなで一緒に入りましょうね」
「うん! ママと、むらさめと、いっしょに、おふろはいる!」

「ええ、みんなで入りましょう」
 サファイアのとんでもない発言に、しかしミリアリアは笑顔で頷いた。

「……ええっと?」

 さすがにそこまではしないよな?
 ただの話の流れで頷いただけだよな?

 ミリアリアは20代前半のうら若き女性だ。
 美人だし、女性的で魅力的な体つきもしている。

 いくら任務とはいえ、まさか男の俺と一緒に風呂に入ったりはしないだろう。
 しないよな??

 今の会話内容に俺が少々頭を悩ませていると、

「1かいは、おわり! つぎは2かい、です!」

 サファイアは今度は2階へと続く階段を上り始めた。
 そして階段を上った先にあるドアを開けると、

「ここがサファイアの、おへやです!」

 今までよりも一段と自慢げに、ベッドと学習机と小さなローテーブルのある、いかにもな子供部屋を紹介してくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。 ――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる 『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。 俺と俺の暮らすこの国の未来には、 惨めな破滅が待ち構えているだろう。 これは、そんな運命を変えるために、 足掻き続ける俺たちの物語。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...