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ある日突然、一児の父になる
第2話 突入作戦
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特別治安維持部隊『イージス』。
それは魔法の近代化・一般化によって、近年悪化の一途をたどるニッポン魔法共和国の平和を取り戻すために結成された、内閣総理大臣直属の魔法犯罪専門のピースメーカー部隊である。
その中でも、特に魔法戦闘に優れた有能な魔法使いが揃うのが、俺たち強襲攻撃部隊『アサルト・ストライカーズ』だ。
その強襲攻撃部隊の隊長で、若きエースと目される凄腕エージェントが俺、カケル・ムラサメだった。
俺たちは今、長年に渡る地道な捜査の末についに突き止めた、非道な人体実験を行う悪の秘密研究所に、深夜の強襲をかけようとしていた。
◇
「まさか食品工場に偽装して、イージス本部のあるストシクス(首都近郊の街)に堂々と研究所を構えているとはな。舐めた真似をしやがって」
俺の目の前には一見どこにでもありそうな食品工場が立っている。
しかしそれはあくまで表向きの話。
ここの地下に、とある科学者を首謀者とする悪の秘密研究所があることは、確認済みだ。
「大胆不敵とでも言うのでしょうか。まさかイージス本部の近くにはないだろうという、こちらの心理の裏を突いた、人を小馬鹿にしたような偽装ですね」
副官のミリアリアが俺の言葉に同意を示す。
「優れた戦術家は、データではなく相手の心を見ると言われるが、どうやら今回の首謀者は人の心を見るのが相当に上手らしいな」
「まったく、その力を正しいことに使えば世の中はもっと良くなるでしょうに」
「だがそれもこれも、今日で終わりだ。ミリアリア、各員配置についたか?」
「4つに分けた突入チームは全員、準備完了よ。いつでも行けます」
ミリアリアがOKというように、握った右手の親指を立てる。
「後方の包囲部隊の方は?」
「そちらも既に展開完了です」
俺たちは、実際に突入する強襲攻撃部隊。
そして俺たちとは別の部隊が、奴らの逃げ道を封じるために周囲を厳重に包囲している。
その他、サポートや後詰の部隊が複数いて、こちらの準備は万全だった。
「OK。じゃあ行くか。ミリアリア、10カウント・スタート」
俺はミリアリアに突入の指示を出した。
「アサルト各員に通達。突入開始10秒前……5秒前、4,3,2,1,Go! Go! Go!」
ミリアリアが無線で作戦の開始を伝えると、俺たち強襲部隊は研究所へと続く4つの地下トンネル入り口から、一気の同時突入を敢行した。
俺はミリアリアと部下2名の4人で、東の入り口から突入する。
「なんだ貴様ら!」
地下通路に入ってすぐに、魔法銃を持った2名の警備兵――どう見ても普通の工場警備員ではない――と接敵する。
警備兵は銃口を向けると、まったく迷うことなく発砲してきた。
いかにも荒事に手慣れた裏社会の人間だ。
氷系の魔法が発動し、俺たちを氷漬けにして動きを阻害しようとするが、
「リジェクト!」
俺が一言、力ある言葉を唱えると、まるで時間を巻き戻したかのように、俺たちを捉えようとしていた氷の魔法が、霧散し消え去った。
「な!? 一瞬で魔法を無効化しただと!?」
「魔法無効化能力!? まさかイージスのエース、カケル・ムラサメか!」
「やれやれ、俺もすっかり有名人だな」
わずかに苦笑しながら、俺は得意の魔法格闘術で、2人の警備兵を一瞬で気絶させて制圧した。
パンチやキックに魔力を乗せて相手に打ち込むことで、魔法耐性の低い人間は内部の魔力反応に耐え切れずに、こうしていとも簡単に意識を失うのだ。
「さすがですねカケル。わたしたちの出番はありませんでした」
「大した相手でもなかったさ。さて、2人はこいつらをBチームに引き渡してくれ。その後、再突入だ。俺たちは先に進んでいる」
俺は部下の2人に指示を出す。
「「ラジャー」」
「先行する俺たちに追いつく必要はないぞ。ゆっくり安全に進んで来い」
「「ラジャー」」
部下の2人が、無力化して拘束した警備兵2人を連れて、地上へと戻っていく。
俺たちイージスは一応は政府の合法的な組織なので、むやみやたらと殺したりはしないし、犯罪者どもの人権にも「ある程度」は配慮しなくてはならない。
(そうは言っても常に荒事と隣り合わせなので、しょせんは「ある程度」というふんわりとした努力目標にすぎないのだが)
「任務を続行する。行くぞミリアリア」
「了解ですカケル」
部下2人と別れた俺とミリアリアは、突入作戦を続行する。
いくつも仕掛けられたトラップを突破しながら地下通路をしばらく行くと、謎の機器や薬品棚、そして小さな檻がいくつもある部屋へとやってきた。
どうやらここが目的地の地下の秘密研究所のようだ。
「俺たちが一番乗りか」
「そうみたいですね」
「想像よりも大きな研究施設だな。よくもまぁ、これだけの研究所をこっそりと作ったもんだ」
「ですが誰もいませんよ?」
ミリアリアの言う通り、中に人は誰もいない。
非道な人体実験を行う魔法研究者がいるはずなのだが。
「この施設に首謀者と思しき研究者が入ったのは確認しているんだ。いないはずはないんだが」
「逃げられたのでしょうか?」
「地上も地下も、出口は全部抑えていたはずなんだがな」
「まさか隠し通路ですか? 探しますか?」
「今から探しても手遅れだろうが、探さないわけにもいかないな。だが本格的に探すには人手がいる。俺たちは部屋を軽く調査しつつ、他のチームの到着を待とう」
「了解です」
「しかし室内に檻? 中はどれも空みたいだが……」
軽く捜索がてら薄暗い部屋の中を見ていくと、室内にもかかわらず大きな檻がいくつもあるのが目についた。
それは魔法の近代化・一般化によって、近年悪化の一途をたどるニッポン魔法共和国の平和を取り戻すために結成された、内閣総理大臣直属の魔法犯罪専門のピースメーカー部隊である。
その中でも、特に魔法戦闘に優れた有能な魔法使いが揃うのが、俺たち強襲攻撃部隊『アサルト・ストライカーズ』だ。
その強襲攻撃部隊の隊長で、若きエースと目される凄腕エージェントが俺、カケル・ムラサメだった。
俺たちは今、長年に渡る地道な捜査の末についに突き止めた、非道な人体実験を行う悪の秘密研究所に、深夜の強襲をかけようとしていた。
◇
「まさか食品工場に偽装して、イージス本部のあるストシクス(首都近郊の街)に堂々と研究所を構えているとはな。舐めた真似をしやがって」
俺の目の前には一見どこにでもありそうな食品工場が立っている。
しかしそれはあくまで表向きの話。
ここの地下に、とある科学者を首謀者とする悪の秘密研究所があることは、確認済みだ。
「大胆不敵とでも言うのでしょうか。まさかイージス本部の近くにはないだろうという、こちらの心理の裏を突いた、人を小馬鹿にしたような偽装ですね」
副官のミリアリアが俺の言葉に同意を示す。
「優れた戦術家は、データではなく相手の心を見ると言われるが、どうやら今回の首謀者は人の心を見るのが相当に上手らしいな」
「まったく、その力を正しいことに使えば世の中はもっと良くなるでしょうに」
「だがそれもこれも、今日で終わりだ。ミリアリア、各員配置についたか?」
「4つに分けた突入チームは全員、準備完了よ。いつでも行けます」
ミリアリアがOKというように、握った右手の親指を立てる。
「後方の包囲部隊の方は?」
「そちらも既に展開完了です」
俺たちは、実際に突入する強襲攻撃部隊。
そして俺たちとは別の部隊が、奴らの逃げ道を封じるために周囲を厳重に包囲している。
その他、サポートや後詰の部隊が複数いて、こちらの準備は万全だった。
「OK。じゃあ行くか。ミリアリア、10カウント・スタート」
俺はミリアリアに突入の指示を出した。
「アサルト各員に通達。突入開始10秒前……5秒前、4,3,2,1,Go! Go! Go!」
ミリアリアが無線で作戦の開始を伝えると、俺たち強襲部隊は研究所へと続く4つの地下トンネル入り口から、一気の同時突入を敢行した。
俺はミリアリアと部下2名の4人で、東の入り口から突入する。
「なんだ貴様ら!」
地下通路に入ってすぐに、魔法銃を持った2名の警備兵――どう見ても普通の工場警備員ではない――と接敵する。
警備兵は銃口を向けると、まったく迷うことなく発砲してきた。
いかにも荒事に手慣れた裏社会の人間だ。
氷系の魔法が発動し、俺たちを氷漬けにして動きを阻害しようとするが、
「リジェクト!」
俺が一言、力ある言葉を唱えると、まるで時間を巻き戻したかのように、俺たちを捉えようとしていた氷の魔法が、霧散し消え去った。
「な!? 一瞬で魔法を無効化しただと!?」
「魔法無効化能力!? まさかイージスのエース、カケル・ムラサメか!」
「やれやれ、俺もすっかり有名人だな」
わずかに苦笑しながら、俺は得意の魔法格闘術で、2人の警備兵を一瞬で気絶させて制圧した。
パンチやキックに魔力を乗せて相手に打ち込むことで、魔法耐性の低い人間は内部の魔力反応に耐え切れずに、こうしていとも簡単に意識を失うのだ。
「さすがですねカケル。わたしたちの出番はありませんでした」
「大した相手でもなかったさ。さて、2人はこいつらをBチームに引き渡してくれ。その後、再突入だ。俺たちは先に進んでいる」
俺は部下の2人に指示を出す。
「「ラジャー」」
「先行する俺たちに追いつく必要はないぞ。ゆっくり安全に進んで来い」
「「ラジャー」」
部下の2人が、無力化して拘束した警備兵2人を連れて、地上へと戻っていく。
俺たちイージスは一応は政府の合法的な組織なので、むやみやたらと殺したりはしないし、犯罪者どもの人権にも「ある程度」は配慮しなくてはならない。
(そうは言っても常に荒事と隣り合わせなので、しょせんは「ある程度」というふんわりとした努力目標にすぎないのだが)
「任務を続行する。行くぞミリアリア」
「了解ですカケル」
部下2人と別れた俺とミリアリアは、突入作戦を続行する。
いくつも仕掛けられたトラップを突破しながら地下通路をしばらく行くと、謎の機器や薬品棚、そして小さな檻がいくつもある部屋へとやってきた。
どうやらここが目的地の地下の秘密研究所のようだ。
「俺たちが一番乗りか」
「そうみたいですね」
「想像よりも大きな研究施設だな。よくもまぁ、これだけの研究所をこっそりと作ったもんだ」
「ですが誰もいませんよ?」
ミリアリアの言う通り、中に人は誰もいない。
非道な人体実験を行う魔法研究者がいるはずなのだが。
「この施設に首謀者と思しき研究者が入ったのは確認しているんだ。いないはずはないんだが」
「逃げられたのでしょうか?」
「地上も地下も、出口は全部抑えていたはずなんだがな」
「まさか隠し通路ですか? 探しますか?」
「今から探しても手遅れだろうが、探さないわけにもいかないな。だが本格的に探すには人手がいる。俺たちは部屋を軽く調査しつつ、他のチームの到着を待とう」
「了解です」
「しかし室内に檻? 中はどれも空みたいだが……」
軽く捜索がてら薄暗い部屋の中を見ていくと、室内にもかかわらず大きな檻がいくつもあるのが目についた。
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