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【1の巻】
「無敗を誇る最強の剣術家が2人居合わせたとなれば、どちらが上かを決めたくなるは、これすなわち世の道理である――!」
なんか偉いお殿様がそんなことを言ったらしくて?
つまりは最強剣士を決める決闘をすることになったアタシ宮本武蔵は、小舟に乗ってガンリュー島(漢字がむずい)へとやってきていた。
まぁガチンコ勝負は嫌いじゃないから、それは別にいいんだけど?
ただほら場所がね、場所。
場所が問題なんだよね。
決闘のために用意された場所は、邪魔が入らないようにと陸から四百メートルほど離れたここガンリュー島(漢字マジむずい)なる小島だったんだけど、
「だったんだけどさ?」
このガンリュー島ってば、
「……なにここ? お団子屋さんも何にもないんだけど? これじゃお茶したくなってもできないじゃん。マジありえないんだけど」
邪魔が入らないとかそういう以前に、マジありえなくない?
ガチでただの無人島なんですけど……?
「はぁ……」
アタシは思わずため息をついた。
起伏すらほとんどなく真っ平らな無人島は、磯の香りと少し強めの海風だけが友達って感じで、なんかもうどうしようもなく物悲しいよ。
少なくとも「ちょっと散策でもしてみよ」って気にはならないかな。
しかもだよ?
細長い舟みたいな形をした小島なんだけど、反対の端が見渡せるくらいにちっちゃいんだよね。
振り返ると海を挟んだすぐ向こう側に、さっき船出した港町が見えるせいでなんかもう既に「帰ってお茶したいなー。あ、行きつけの茶屋の新作団子が出たって言ってたっけ?」的な気分になってしまっているアタシだった。
でも無理もないよね。
「ほんとなにもないなー、ここ。あーあ、マジだるいしさっさと勝って、帰ってお茶でもしよっと」
【2の巻】
そんななんにもないガンリュー島(もっと簡単な漢字にしろ、むしろ名前変えろ)には、一人の青年剣士が待ち受けていた。
――んだけれど、
「おのれ宮本武蔵! 貴様まさかこの大一番に遅刻するとは、さては臆したか! このうつけ者めが! 恥を、恥を知れ――!」
うーん、のっけからめっちゃプリプリしてたよ。
プリプリ左衛門って感じ?
「だって寝坊したし……」
「寝坊だとぉ!?」
「伊織が起こしてくれなかったんだよね」
「そんなことは知らんわ!」
「あ、ごめん。伊織ってのはアタシの養女なんだ。宮本伊織。スゴく可愛いくて良くできた子なんだけど、大事な時に限ってビミョーに抜けてるんだよね。でもそこがまた可愛いんだけど」
「誰もそんなことを聞いてはおらぬ!」
「あ、そうなの? とりま、そういうわけでアタシは寝坊したのである」
「なにが『寝坊したのである』だ! 言うに事欠いて寝坊、寝坊と! 貴様、朝くらい自分で起きぬか! だいたいその舐めた言葉遣いが武士の使う言葉か……!」
ふぅ、やれやれ。
やだなーもう。
ちょびーっと2時間遅刻したくらいでこの怒りようときたもんだ。
あれかな?
カルシウムが足りてないんじゃないかな?
骨ごとイケる小魚とか食べたほうがいいよ?
あ、気分を落ち着けるのには梅干しの種もいいって聞いたことがあるかも。
なんにせよ、あんましプリプリしてるとほんとにプリプリ左衛門って呼んじゃうぞ?
「無敗を誇る最強の剣術家が2人居合わせたとなれば、どちらが上かを決めたくなるは、これすなわち世の道理である――!」
なんか偉いお殿様がそんなことを言ったらしくて?
つまりは最強剣士を決める決闘をすることになったアタシ宮本武蔵は、小舟に乗ってガンリュー島(漢字がむずい)へとやってきていた。
まぁガチンコ勝負は嫌いじゃないから、それは別にいいんだけど?
ただほら場所がね、場所。
場所が問題なんだよね。
決闘のために用意された場所は、邪魔が入らないようにと陸から四百メートルほど離れたここガンリュー島(漢字マジむずい)なる小島だったんだけど、
「だったんだけどさ?」
このガンリュー島ってば、
「……なにここ? お団子屋さんも何にもないんだけど? これじゃお茶したくなってもできないじゃん。マジありえないんだけど」
邪魔が入らないとかそういう以前に、マジありえなくない?
ガチでただの無人島なんですけど……?
「はぁ……」
アタシは思わずため息をついた。
起伏すらほとんどなく真っ平らな無人島は、磯の香りと少し強めの海風だけが友達って感じで、なんかもうどうしようもなく物悲しいよ。
少なくとも「ちょっと散策でもしてみよ」って気にはならないかな。
しかもだよ?
細長い舟みたいな形をした小島なんだけど、反対の端が見渡せるくらいにちっちゃいんだよね。
振り返ると海を挟んだすぐ向こう側に、さっき船出した港町が見えるせいでなんかもう既に「帰ってお茶したいなー。あ、行きつけの茶屋の新作団子が出たって言ってたっけ?」的な気分になってしまっているアタシだった。
でも無理もないよね。
「ほんとなにもないなー、ここ。あーあ、マジだるいしさっさと勝って、帰ってお茶でもしよっと」
【2の巻】
そんななんにもないガンリュー島(もっと簡単な漢字にしろ、むしろ名前変えろ)には、一人の青年剣士が待ち受けていた。
――んだけれど、
「おのれ宮本武蔵! 貴様まさかこの大一番に遅刻するとは、さては臆したか! このうつけ者めが! 恥を、恥を知れ――!」
うーん、のっけからめっちゃプリプリしてたよ。
プリプリ左衛門って感じ?
「だって寝坊したし……」
「寝坊だとぉ!?」
「伊織が起こしてくれなかったんだよね」
「そんなことは知らんわ!」
「あ、ごめん。伊織ってのはアタシの養女なんだ。宮本伊織。スゴく可愛いくて良くできた子なんだけど、大事な時に限ってビミョーに抜けてるんだよね。でもそこがまた可愛いんだけど」
「誰もそんなことを聞いてはおらぬ!」
「あ、そうなの? とりま、そういうわけでアタシは寝坊したのである」
「なにが『寝坊したのである』だ! 言うに事欠いて寝坊、寝坊と! 貴様、朝くらい自分で起きぬか! だいたいその舐めた言葉遣いが武士の使う言葉か……!」
ふぅ、やれやれ。
やだなーもう。
ちょびーっと2時間遅刻したくらいでこの怒りようときたもんだ。
あれかな?
カルシウムが足りてないんじゃないかな?
骨ごとイケる小魚とか食べたほうがいいよ?
あ、気分を落ち着けるのには梅干しの種もいいって聞いたことがあるかも。
なんにせよ、あんましプリプリしてるとほんとにプリプリ左衛門って呼んじゃうぞ?
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