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第3章 世界滅亡の日
第63話 エピローグ
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翌日。
「当たりますように……えいや!」
くら寿司のガチャガチャ付き皿回収機「ビッくらポン」にお皿を入れ終えたエリカが、両手を顔の前で組んで祈るようにつぶやいた。
覇権アニメのメインヒロイン級美少女なエリカがやると、まるで神に祈りを捧げる聖母マリアのごとく神秘的だったんだけど。
もちろん実際のところはガチャの当たりを願っているだけという、神秘的とは対極的な極めて即物的な行為である。
(でもそのギャップもまた可愛いんだよなぁ。いやエリカはいつも可愛いんだけども)
などと考えているとビッくらポンの演出が始まり、エリカは見事に当たりを引きあてた。
「やりました! 今日2つ目の当たりです!」
ガチャのラインナップは数日前に行った時と変わっていなくて。
当たりを引くとプイプイと可愛く鳴くモルモットのボールチェーンマスコットが、ランダムで手に入る。
「おめでと、どいつが当たったんだ?」
「ピュアでホワイト可愛いシロモちゃんですね」
「えぇ……、こいつさっきも出たじゃないか、またダブりかよ? ちゃんと混ぜてるのかこれ?」
今日既に当てていた1つ目は、前に当たったのとは違うタイプのモルモットだったのだが。
それがまた立て続けに2つダブってしまったのだ。
「まぁまぁよいではありませんか。前のとは違うのがダブったので問題はありませんよ」
「エリカがそう言うんならいいけどさ」
「それにダブったおかげで、またこうやってトールとペアにできますし。はいこれ、トールの分ですよ♪ 可愛がってあげてくださいね♪」
エリカがボールチェーン付きマスコットを1つ俺に差し出しながら微笑む。
「サンキュー」
「前のが男の子で今回のは女の子なので、カップル感がありますよね。カップルペアモルです♪」
「そうだな」
ちなみにペアモルとはプレモルの親戚のアルコール飲料とかではなく。
エリカが考案したペアモルモットの略称である。
「おやおや? トールがとても素直なんですけど? いつもみたいに『いちいち既成事実を作ろうとするな』って言わないんですね?」
「まぁこれくらいは別にな」
「つまり、トールもついにわたしの魅力に完オチしたというわけですね!」
「うーん、完オチは……まだかな?」
「またまたそんなこと言って。もう何度もエッチした関係だというのに、トーンはほんと照れ屋さんなんですから♡」
「正直、あれは流れでつい……」
「なっ!? まさかやり捨てする気ですか!? 出会って3日でやり捨てとか、わたしとのことは遊びだったんですね、ヒドいです!」
「ちょ、お前! 事実を極限まで曲解したことを、お客さまでいっぱいのくら寿司で大声で言わないでくれよな!? 俺ちゃんと結婚を前提にしたお付き合いだって言ったじゃん!」
「えへへ、冗談です♪」
「しかもここって割と近所なんだぞ? 俺が社会的に抹殺されてしまうだろ?」
俺はエリカの顔を引き寄せると、小声で注意した。
「またまた、トールは大袈裟なんですから」
「それが大袈裟じゃないんだよ。そうでなくとも30過ぎ無職男性ってのはすごく弱い立場なんだから」
「と言いますと?」
「例えば平日に近所のスーパーにお昼ごはんを買いに行くだろ?」
「まぁ普通にありますよね」
「そしたら当たり前のように警官に呼び止められて『おにーさん、こんなお昼から住宅街で何してるの? あ、今は無職なんだ? このあいだまで働いてたの? ふーん、とりあえず身分証を見せて? 免許証か保険証持ってる?』って職務質問されちゃうんだぞ?」
もはやポリコレ(ポリスメン・コレクト)でしょこれ!
30過ぎの無職男性だって人間なんだから住宅街に住んでるし。
昼間にちょっとスーパーにご飯を買いに行くくらい、これはもう人として全然普通でしょ!?
30過ぎの無職男性の人権への配慮があまりにも足りていないと俺は思うんだ。
「へー、大変なんですね……あ、食後のティラミス頼んでもいいですか? ここのティラミスって、すごく美味しいんですよ」
「おまえ、全然大変だと思ってないだろ……」
――などという30代無職男性の悲しみはさておき。
エリカが来てから今日まで。
とてつもなく濃密な数日間だったけど。
これからはそんなこともなく、まったりと暮らしていけることだろう。
(なにせ預金が7億円もあるしな。俺はもはやただの無職30代ではない、資産家の30代無職なんだ!!)
エリカと過ごすこれからの人生は、きっと素晴らしいものになるに違いない。
―完―
最後までお読みいただきありがとうございました!
温かい応援とても励みになりました!
「当たりますように……えいや!」
くら寿司のガチャガチャ付き皿回収機「ビッくらポン」にお皿を入れ終えたエリカが、両手を顔の前で組んで祈るようにつぶやいた。
覇権アニメのメインヒロイン級美少女なエリカがやると、まるで神に祈りを捧げる聖母マリアのごとく神秘的だったんだけど。
もちろん実際のところはガチャの当たりを願っているだけという、神秘的とは対極的な極めて即物的な行為である。
(でもそのギャップもまた可愛いんだよなぁ。いやエリカはいつも可愛いんだけども)
などと考えているとビッくらポンの演出が始まり、エリカは見事に当たりを引きあてた。
「やりました! 今日2つ目の当たりです!」
ガチャのラインナップは数日前に行った時と変わっていなくて。
当たりを引くとプイプイと可愛く鳴くモルモットのボールチェーンマスコットが、ランダムで手に入る。
「おめでと、どいつが当たったんだ?」
「ピュアでホワイト可愛いシロモちゃんですね」
「えぇ……、こいつさっきも出たじゃないか、またダブりかよ? ちゃんと混ぜてるのかこれ?」
今日既に当てていた1つ目は、前に当たったのとは違うタイプのモルモットだったのだが。
それがまた立て続けに2つダブってしまったのだ。
「まぁまぁよいではありませんか。前のとは違うのがダブったので問題はありませんよ」
「エリカがそう言うんならいいけどさ」
「それにダブったおかげで、またこうやってトールとペアにできますし。はいこれ、トールの分ですよ♪ 可愛がってあげてくださいね♪」
エリカがボールチェーン付きマスコットを1つ俺に差し出しながら微笑む。
「サンキュー」
「前のが男の子で今回のは女の子なので、カップル感がありますよね。カップルペアモルです♪」
「そうだな」
ちなみにペアモルとはプレモルの親戚のアルコール飲料とかではなく。
エリカが考案したペアモルモットの略称である。
「おやおや? トールがとても素直なんですけど? いつもみたいに『いちいち既成事実を作ろうとするな』って言わないんですね?」
「まぁこれくらいは別にな」
「つまり、トールもついにわたしの魅力に完オチしたというわけですね!」
「うーん、完オチは……まだかな?」
「またまたそんなこと言って。もう何度もエッチした関係だというのに、トーンはほんと照れ屋さんなんですから♡」
「正直、あれは流れでつい……」
「なっ!? まさかやり捨てする気ですか!? 出会って3日でやり捨てとか、わたしとのことは遊びだったんですね、ヒドいです!」
「ちょ、お前! 事実を極限まで曲解したことを、お客さまでいっぱいのくら寿司で大声で言わないでくれよな!? 俺ちゃんと結婚を前提にしたお付き合いだって言ったじゃん!」
「えへへ、冗談です♪」
「しかもここって割と近所なんだぞ? 俺が社会的に抹殺されてしまうだろ?」
俺はエリカの顔を引き寄せると、小声で注意した。
「またまた、トールは大袈裟なんですから」
「それが大袈裟じゃないんだよ。そうでなくとも30過ぎ無職男性ってのはすごく弱い立場なんだから」
「と言いますと?」
「例えば平日に近所のスーパーにお昼ごはんを買いに行くだろ?」
「まぁ普通にありますよね」
「そしたら当たり前のように警官に呼び止められて『おにーさん、こんなお昼から住宅街で何してるの? あ、今は無職なんだ? このあいだまで働いてたの? ふーん、とりあえず身分証を見せて? 免許証か保険証持ってる?』って職務質問されちゃうんだぞ?」
もはやポリコレ(ポリスメン・コレクト)でしょこれ!
30過ぎの無職男性だって人間なんだから住宅街に住んでるし。
昼間にちょっとスーパーにご飯を買いに行くくらい、これはもう人として全然普通でしょ!?
30過ぎの無職男性の人権への配慮があまりにも足りていないと俺は思うんだ。
「へー、大変なんですね……あ、食後のティラミス頼んでもいいですか? ここのティラミスって、すごく美味しいんですよ」
「おまえ、全然大変だと思ってないだろ……」
――などという30代無職男性の悲しみはさておき。
エリカが来てから今日まで。
とてつもなく濃密な数日間だったけど。
これからはそんなこともなく、まったりと暮らしていけることだろう。
(なにせ預金が7億円もあるしな。俺はもはやただの無職30代ではない、資産家の30代無職なんだ!!)
エリカと過ごすこれからの人生は、きっと素晴らしいものになるに違いない。
―完―
最後までお読みいただきありがとうございました!
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