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第3章 世界滅亡の日

第52話「あれあれあれ? おやおやおや?」

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「あれあれあれ? おやおやおや?」

「な、なんだよ?」

「珍しく否定しないんですね? てっきり『新婚旅行とかここぞとばかりに既成事実を作ろうとするんじゃありません』的なことを言われると思ったんですけど?」

「俺の物まね、地味にうまいな……」
 さすがエリカ、何をやってもそつなくこなしやがります。

「はっ! さてはついにトールもわたしの魅力に完オチしてしまったというわけですね? もうトールってばぁ、そうならそうと早く言ってくださいよぉ♪」

 エリカがくねくねと気持ち悪い動きで身をよじりながら、俺の太ももの上に座った。
 そのまましなだれかかるように体重を預けてくると、俺の胸元を人差し指でつんつんと突ついて甘えんぼしてくる。

「あのなぁ、エリカの魅力はもう十分すぎるほど伝わってるってば」

「えへへ、嬉しいです♪」

「でもまぁなんだな。ぶっちゃけると、エリカにはこれから世界を救ってもらうんだから気持ちよく事に臨んでもらおうかな、とか思わなくもないかな」

「な、なんて打算的な!? 酷いです、わたしは今トールに大いに失望しましたよ! 天国から地獄とはまさにこのことです!!」

「いやあ、何ごとにもモチベーションは大事かなって」

「残念ながら、わたしのモチベーションはおおいに低下しました。回復するためには新婚のキッスをしてください、耳元で愛の言葉をささやいてください。それと婚姻届けにも判子を押して欲しいですね、なんなら子供も作りましょう。家はやはり将来を見据えて一戸建てでしょうか。指輪どうします?」

「さすがに要望が多すぎるだろ……後ろの方はどれも論外だし、せめて前目のから1つにしてくれ」

「では──」
 エリカが口を開きかけたところで、

「なるほど、これは先にこれでもかと要望を出しておいてから、いくつか引っ込めることで妥協したように見せかけて、実際は一方的に相手の譲歩を引き出させる交渉テクニックの1つですね♡」

 横合いから中野さんが指摘すると、エリカはそっと俺から視線を逸らした。

「おいこら、お前の方がよっぽど打算的じゃねぇか……」

「いいえトール、打算的などという言葉を使うからいけないんです。例えば戦略的と言い換えればどうですか? ほら、一気に知的な感じがしてきませんか?」

「全然しないから。戦略的に恋愛するとか言われたらドン引きだから」

 俺はもっとピュアピュアな恋愛に憧れてるんだよ。

 最初はグループの友人って関係で始まるだろ?
 そこからイベントとか事件を通して関係が深まっていくとともに、気持ちも通じ合っていって。

 そして勇気を出してクリスマスデートに誘って告白して。
 聖夜のイルミネーションに祝福されながら2人は恋人同士になるんだ。
 そういうアオハルな恋をしてみたいんだよな。

 あ、はい。
 いい年してキモくてすみません。
 女の子という存在に夢を見ていますね、分かります。

 でも心の中でくらい、女の子に夢を見たっていいだろう?
 誰に迷惑かけるでもないんだからさ。

「だいたいキスくらい普通にちゅっちゅすればいいじゃないですか。アメリカなる国ではあいさつ代わりにちゅっちゅしているのだと、女神学院で習いましたよ?」

「残念ながら、ここはアメリカじゃなくて日本だからな。でもま、無事に超巨大隕石を回避できたら考えておくよ」

「ぶぅ、わたしは今したいのに……キスぅ、キスしたいですぅ! トールのいけずぅ! キスぅ! キスキスぅ!!」

「なに急に駄々っ子みたいになってんだよ。完全にキャラ違ってんだろ」

「あまりにトールが難攻不落なので、ちょっと別方向から攻めてみました。えへへ、てへぺろ」

「あのなぁ、俺は別にエリカのことが嫌ってわけじゃないんだよ。でも俺にも心の準備ってもんが必要なんだよ」

「心の準備ですか?」

「いきなり婚姻届けとか、指輪とか、家をどうするかとか。今まで女の子とろくにお付き合いもしたことない俺には、どれもこれも難易度が高すぎるんだ。その辺を察してくれると嬉しいかな」

「むふふ……なるほどそういうことですか。まったくもう、トールってばほんとヘタレなんですから。でもそれはそれで奥ゆかしくていいと思いますよ♪」

「ありがとなエリカ」

「じゃあとりあえず、ギュってするくらいならいいですよね?」

 そう言うとエリカは俺の返事も待たずに俺との距離をぐぐっとゼロ距離に詰めると、俺の腰に手を回しながら抱き着くようにくっついてきた。

 エリカのおおきくて柔らかい双丘が、俺の二の腕にぎゅむっと押し付けられる。

 や、柔らかい……!
 ものすごく柔らかいぞ!?

 知ってたけど、改めて再確認っていうか!

「え、あ、うん……ま、まぁこれくらいなら……」

 その包み込まれるようなふくよかで優しい感触に、しどろもどろになってしまう俺だった。

 とかなんとかそんな感じで。
 新婚旅行(とエリカが言い張る。しかし俺もまんざらではなかった)をしながら空の旅を満喫した俺たちは、種子島宇宙センターへと降りたった。

 それにしても大きな滑走路がなくても垂直離着で狭いスペースにピンポイントで着陸できるオスプレイって、革命的に便利な乗り物だよな。
 しかも変形がカッコいいし。

 やっぱり変形メカは男の子の永遠のロマンだぜ!
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