朝５時に、ピンポン鳴ったら、妻できた。 （えっちバージョン）

第３章 世界滅亡の日

第46話 ３６時間後に世界滅亡

「ええっと……今度出演するアニメかなにかの話？」
　俺はまだ寝ぼけた頭にムチ打って、なんとかそれっぽい結論を導き出す。

「いいえ、マジ話なんです」

「ええと……まぁなんだ。玄関で立ち話もなんだしとりあえず入ってよ」

　俺は中野さんを部屋の中に招き入れた。
　すると、

「はふ～～、今日もトールは朝早くから人気者ですねぇ……。それはそれとして、どちらかというとアニメよりも映画の内容っぽくないですか？」 

　眠そうな顔を隠そうともせずにぽわぽわした足取りでやって来たエリカが、俺をバックハグしながら耳元でささやいた。

　はふんっ！？

　吐息が耳にかかってビクリとしてしまう。
　さらに俺の背中に押し付けられたエリカのゆるふわなお胸が、ぎゅむっと形を変えた。
　
「た、確かにそうかもな。ドラマよりハリウッドの２時間映画って感じのが近い気がする」
　おっぱいの柔らかさに全集中しちゃいそうになりながら、頑張って冷静な振りをする俺、えらい。

「ふふっ、でしょう？」

　はう！？
　だから耳元でしゃべっちゃらめぇ……(>_<)

「それで映画がどうしたんだ？　中野さんのお勧めの映画でもやってるのか？　もしかして中野さんが日本語の声を当ててたり？　だったらすぐにでも観てみるけど」

　背中にくっついて俺の理性を溶かしにきていたいけないエリカを引きはがしつつ、俺は声優ファンの鏡のようなセリフを言ったんだけど、

「教祖様、これは映画じゃなくてリアルの話なんです」

　中野さんはこれ以上なく真面目な顔でそう言ってくるのだ。

「って言われてもなぁ？　リアルに３６時間後に世界が滅亡するとか言われても、なんていうかあまりに現実感がなさすぎるっていうか……」

「でも事実なんですよ。確かな情報筋から得た情報なんですもん」

「ちなみにその確かな情報筋ってのは？」

「環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』の幹部候補であり、在日米軍司令官を務めているファルケ・メッサー中将ですね」

「ブフゥあッ！」

　思わず吹いただろ！？
　在日米軍司令官って、日本にいる在日米軍のナンバーワンじゃねぇか！？

　そりゃ確かな情報筋だわ！
　米軍っていえば、世界の警察官とも言われる最強の軍隊だぞ！？
　もはや確かすぎて怖いレベルだよ！

　在日米軍のトップまでいるとか、環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』、マジでやばすぎだろ！？

「あ、これは一応オフレコでお願いしますね♡　メッサー中将が教団のメンバーであることはトップシークレットなんですよ♡　教祖様だから特別に教えましたけど♡」

「ああうん、もちろん分かってるよ。俺も在日米軍なんてところに睨まれたくはないからな」

　在日米軍とか、どう考えても３０過ぎ無職が太刀打ちできる相手じゃない。

　在日米軍ｖｓ３０過ぎ無職。
　右と左がアンバランスなんてもんじゃない。

　たとえどんな強力な主人公補正がかかったとしても、絶対に勝負にならないであろうことは明々白々だった。
　無理ゲーにもほどがある。

　とまぁそういう感じで、俺はイマイチ中野さんの話に本気になれなかったんだけど、

　ピンポーン。
　再びうちのインターホンが鳴って、今度はヒナギクさんがやってきた。

　まだ朝の５時過ぎだ。
　こんな時間に何の用でやってきたのか、今さら俺が問いかける必要もないだろう。

　事実、俺が何を言わなくても、

「おはようございます。あら、朝も早くから皆さんお揃いのようですわね。ということは、既に話は聞き及んでいると思っていいわけですわね？」

　なんてことをヒナギクさんの方から言ってきたのだから。

「つまりヒナギクさんは、この世界が３６時間後に滅亡するって話をしに来たってことでいいんだよな？」

　それでも俺が一応念を押すように尋ねると、

「やはりもうご存じでしたか。そしてここに中野さんがいるということは、情報源は環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』ですわね？　さすがの情報網といったところでしょうか」

　ヒナギクさんは少し苦笑しながら中野さんに視線を向ける。

「お褒めに預かり光栄です」
　そしてまんざらでもなさそうに頷く中野さん。

「えっと、その言い方だと日本政府も、環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』の情報網の全容を把握はしていないのか？」

「日本は強大な権限を与えられた独立した情報機関を持ちませんからね。アメリカ政府や米軍の深部にまで食い込んでいると言われる環太平洋・秘密宗教結社『アトランティック・サモン』相手に、情報戦で競っても勝ち目はありませんわ」

　軽く肩をすくめながら答えるヒナギクさん。

　ヒナギクさんは金髪美人のお姉さんなのでそれがすごく様になっていた。
　まるでハリウッド女優みたいだ。
　やばい、惚れそう。

　でも米軍の深部どころか、在日米軍トップまでメンバーなんだよなぁ。
　もし口を滑らせてしまったらマジで米軍に暗殺されそうだから、絶対に黙っていよう……。