32 / 63
第2章 朝5時にピンポン連打する金髪ネコ耳公務員さん
第32話 武蔵丸の悲劇
しおりを挟む
「おいおい、それじゃ理由になってないだろ? 俺が聞きたいのは昨日の今日で、なんで国がもうエリカが召喚されたことをばっちり把握してるのかって事だ」
さすがに情報が速すぎる。
いやもう速いってレベルですらないだろ。
事前に連絡でも行っていない限りありえない。
事ここに至ってはもしかして俺の部屋が監視されてたりとか、そんな普通ではあり得ない可能性まで考えないといけないレベルだった。
しかも目的はエリカ、異世界からの訪問者ときた。
となれば最悪拘束されて人体実験、なんてこともあることもあるかもしれない。
恐ろしい推測だが、決して無いわけじゃないだろう。
そしてまだ会ったばかりとはいえ、異世界召喚されただけの普通の女の子――異世界召喚された時点で普通じゃないんだろうけど――とにかく、この世界に来たばかりのエリカをそんな目に合わせるわけにはいかない。
30代で突然無職になって右往左往する惨めな俺だってそれくらいは分かるんだ。
だったら俺のやるべきことは決まってるよな!
「法務省だかなんだか知らないけど、エリカを連れていくってんならここは通さねーぞ!」
覚悟を決めた俺はキリッとそう強く宣言すると、再び睨みつけるようにヒナギクさんを見据えた――!
「うーん、やはり勘違いをされているようですね。わたくしは法務省外局・難民審査庁・難民審査局・異世界召喚課・特命担当官です」
「さっきも聞いたよ。でもそれがどうしたってんだ?」
「つまりわたくしは異世界召喚が起こった時に、その召喚された方をサポートするお仕事をしているんですのよ」
…………え?
今なんて?
「え、異世界召喚された人のサポートをするお仕事……?」
「はい、そうですわ」
「日本政府の指示を受けて、異世界から来たエリカを拉致しようとしてるんじゃなくて?」
「拉致はれっきとした犯罪ですわ。こう見えてわたくしは法律を扱う法務省の人間です。カードキャプターさくらの最終回を録画したら何故か武蔵丸が映っていてムシャクシャしたとしても、犯罪だけは致しません」
ヒナギクさんは、男が見たら100人が100人全員胸キュンするような素敵な笑顔で言った。
なんとなくだけど、どうも嘘は言っていないようだ。
「っていうか通称『武蔵丸の悲劇』を知っているとか、あんたもエリカに負けず劣らず日本文化について詳しいね?」
そもそも金髪碧眼の外見からは想像もつかない程に日本語が堪能だし。
まあそれは今はいいや。
「もちろんしっかりと勉強しておりますので」
俺のツッコミに対して、優雅にほほ笑んで返すヒナギクさん。
実に絵になっている。
こんな状況じゃなかったら一目惚れすること間違いなしだ。
もちろん熟練かつ狡猾な詐欺師は人間心理のスペシャリストであり、素人がその嘘を見抜くのはほぼ不可能と言われている。
でも法務省のなんとかっていう漢字ばっかりのいかにもな部署だったり。
昨日の今日でもう異世界召喚のことを知っているということを加味すれば。
とりあえず信じてみる価値はあるじゃないかという気にはなっている俺だった。
しかしそれは同時にもう一つの疑問を生じさせる。
「じゃあどうやって異世界召喚されたってことを知ったんだよ?」
そうだ。
昨日起こったばかりのことを、完全に知り得た上でこんなに早くコンタクトを取ってくるなんて、さすがに手際が良すぎるからな。
どんな裏があるのやら、分かったもんじゃない。
さて、これにどう答えるか。
「禁則事項です♪」とテンプレ返答をするのか。
それとも腹を割ってその秘密を俺に話してくれるのか。
悪いがどんな態度を取るかで最終判断をさせてもらうぞ。
本心を明かせないというのなら悪いがここで帰ってもらう。
仮に本心じゃなくても、少なくとも俺が納得のできる回答を得られなければ、信頼関係なんてものは成り立たないからな。
さあ、どう出る?
俺を納得させてみせろ――!
アニメによくいる「お前の実力を見極めさせてもらうぞ!」系ライバルキャラのごとく、内心そんなことを考えていた俺にヒナギクさんは──、
「知った理由はもちろん連絡があったからですわ」
特に気負った様子もなくさらっと答えた。
「連絡って……誰からだよ?」
「当然エリカさんご本人からですわよ?」
「…………はい?」
返ってきた余りに想定外すぎる回答に、俺はぽかーんと口を開けて固まってしまった。
さすがに情報が速すぎる。
いやもう速いってレベルですらないだろ。
事前に連絡でも行っていない限りありえない。
事ここに至ってはもしかして俺の部屋が監視されてたりとか、そんな普通ではあり得ない可能性まで考えないといけないレベルだった。
しかも目的はエリカ、異世界からの訪問者ときた。
となれば最悪拘束されて人体実験、なんてこともあることもあるかもしれない。
恐ろしい推測だが、決して無いわけじゃないだろう。
そしてまだ会ったばかりとはいえ、異世界召喚されただけの普通の女の子――異世界召喚された時点で普通じゃないんだろうけど――とにかく、この世界に来たばかりのエリカをそんな目に合わせるわけにはいかない。
30代で突然無職になって右往左往する惨めな俺だってそれくらいは分かるんだ。
だったら俺のやるべきことは決まってるよな!
「法務省だかなんだか知らないけど、エリカを連れていくってんならここは通さねーぞ!」
覚悟を決めた俺はキリッとそう強く宣言すると、再び睨みつけるようにヒナギクさんを見据えた――!
「うーん、やはり勘違いをされているようですね。わたくしは法務省外局・難民審査庁・難民審査局・異世界召喚課・特命担当官です」
「さっきも聞いたよ。でもそれがどうしたってんだ?」
「つまりわたくしは異世界召喚が起こった時に、その召喚された方をサポートするお仕事をしているんですのよ」
…………え?
今なんて?
「え、異世界召喚された人のサポートをするお仕事……?」
「はい、そうですわ」
「日本政府の指示を受けて、異世界から来たエリカを拉致しようとしてるんじゃなくて?」
「拉致はれっきとした犯罪ですわ。こう見えてわたくしは法律を扱う法務省の人間です。カードキャプターさくらの最終回を録画したら何故か武蔵丸が映っていてムシャクシャしたとしても、犯罪だけは致しません」
ヒナギクさんは、男が見たら100人が100人全員胸キュンするような素敵な笑顔で言った。
なんとなくだけど、どうも嘘は言っていないようだ。
「っていうか通称『武蔵丸の悲劇』を知っているとか、あんたもエリカに負けず劣らず日本文化について詳しいね?」
そもそも金髪碧眼の外見からは想像もつかない程に日本語が堪能だし。
まあそれは今はいいや。
「もちろんしっかりと勉強しておりますので」
俺のツッコミに対して、優雅にほほ笑んで返すヒナギクさん。
実に絵になっている。
こんな状況じゃなかったら一目惚れすること間違いなしだ。
もちろん熟練かつ狡猾な詐欺師は人間心理のスペシャリストであり、素人がその嘘を見抜くのはほぼ不可能と言われている。
でも法務省のなんとかっていう漢字ばっかりのいかにもな部署だったり。
昨日の今日でもう異世界召喚のことを知っているということを加味すれば。
とりあえず信じてみる価値はあるじゃないかという気にはなっている俺だった。
しかしそれは同時にもう一つの疑問を生じさせる。
「じゃあどうやって異世界召喚されたってことを知ったんだよ?」
そうだ。
昨日起こったばかりのことを、完全に知り得た上でこんなに早くコンタクトを取ってくるなんて、さすがに手際が良すぎるからな。
どんな裏があるのやら、分かったもんじゃない。
さて、これにどう答えるか。
「禁則事項です♪」とテンプレ返答をするのか。
それとも腹を割ってその秘密を俺に話してくれるのか。
悪いがどんな態度を取るかで最終判断をさせてもらうぞ。
本心を明かせないというのなら悪いがここで帰ってもらう。
仮に本心じゃなくても、少なくとも俺が納得のできる回答を得られなければ、信頼関係なんてものは成り立たないからな。
さあ、どう出る?
俺を納得させてみせろ――!
アニメによくいる「お前の実力を見極めさせてもらうぞ!」系ライバルキャラのごとく、内心そんなことを考えていた俺にヒナギクさんは──、
「知った理由はもちろん連絡があったからですわ」
特に気負った様子もなくさらっと答えた。
「連絡って……誰からだよ?」
「当然エリカさんご本人からですわよ?」
「…………はい?」
返ってきた余りに想定外すぎる回答に、俺はぽかーんと口を開けて固まってしまった。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる