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第2章 朝5時にピンポン連打する金髪ネコ耳公務員さん
第31話 法務省外局・難民審査庁・難民審査局・異世界召喚課・特命担当官
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「わたくしの方が年下ですので、ヒナギクでよろしいですわよ。わたしもトールさんと呼ばせていただきますわ」
「じゃあ俺もヒナギクさんで」
「『さん』もいりませんわよ? わたくしのほうが年下なのですし」
「いいやヒナギクさんに『さん付け』はマストで必要だから。ここは俺的には譲れない絶対防衛ラインなんだ」
「はぁ、そうなのですわね?」
金髪ネコ耳メイド癒し系お姉さん=ヒナギクさんは、ちょっとよく分からなさそうな顔で頷いた。
でもこれはどうしても譲れないんだ。
たとえ俺の方が年上でも、ヒナギクさんは永遠のお姉さんキャラだから!
「それであの、えっと、法務省ってことはヒナギクさんはその、こ、こ、ここ、国家公務員なんだよな?」
その職業を呼称しようとして、俺はついどもってしまった。
だ、だって国家公務員だよ!?
勤め先が倒産して30代無職になった俺とは正反対の、親方日の丸で絶対に倒産しない、どこに出しても恥ずかしくない最強の身分にして最強の勝ち組。
それが国家公務員なんだよ!?
街コンとかで『俺、国家公務員なんだけどさ』って軽く言っただけで婚活女子が次々とアプローチしてくる(らしい@ネット婚活情報)最強ステータスの1つなんだよ!?
すごい。
羨ましい。
憧れる。
いいなぁ、俺もなりたい。
そういうことであるからして、俺がヒナギクさんと「さん付け」で呼ぶのもこれまた当然のことであった。
もちろん俺の知り合いに国家公務員というスーパーステータス持ちはいない。
ヒナギクさんが正真正銘、俺の初めての人である。
「まぁいきなりこんなこと言われても信じられませんわよね。お気持ちはお察しいたます」
「俺が素性に疑念を抱くのは、そっちもある程度織り込み済みってわけか」
さすが国家公務員、すごく頭がいいぞ!
「ですがわたくしの素性でしたら、今すぐに法務省に問い合わせていただいても構いませんわ。名刺のここのところが、わたくしの所属する部署の住所と電話番号になりますので」
ヒナギクさんは俺が受け取った名刺を覗き込みながら指差しして教えてくれた。
距離がグッと縮まったことで、ヒナギクさんのふんわり柔らかそうな髪が俺の頬をかすめる。
指先が少し触れ合って、大きな胸がふよんと俺の手の甲に触れた。
さらにはしっとりと甘くていい匂いまで漂ってくる。
パーソナルスペースの内側に自然と入ってくる、なんとも隙の多い絶妙な距離感!
くっ、間違いない!
この人は童貞を殺すお姉さんだ!
つい昨日まで童貞だった実質童貞の俺も殺されてしまいそうです!
ただでさえ国家公務員という最強の肩書を前に、ひれ伏す寸前だっていうのに。
俺は心まで強くあらなければならないのだ。
(耐えろ、耐えるんだ俺! ここは強く心を持つんだ! 全然ちっとも何でもない風を装うんだ!)
「あ、これね。ふへー、それにしても長い肩書だなぁ。聞いても全然分からなかったし、なんか漢字がずらっと並んでて見ているだけで気圧されそうなんだけどー」
「法務省外局・難民審査庁・難民審査局・異世界召喚課・特命担当官ですわ。なかなかカッコが良いでしょう? 実は結構気に入っておりますの」
包容力のある年上のお姉さんの魅力を全開に、ふんわりと優しそうに、だけどちょっと自慢げに微笑むヒナギクさん。
控えめに言ってものすごーく可愛かった。
だめだ、必死に感情をコントロールしようと思っているのに、大きく開いた胸元ととかあれこれ色んな所に、どうしようもなく女性の魅力を感じてしまうぞ……!
「確かに強くてカッコよくはあるかな――じゃなくてだな! なんでその法務省の人が、ミニスカメイド服を着て、うちに不法侵入しようとしてるんだよ?」
しかし俺は昨日の夜のエリカの寂しそうな姿を思い出してもう一度心を奮い立たせると、泣いて馬謖を斬る思いで必死に煩悩を追いやって思考を戻した。
(そうだ、思い出せ。俺だけがエリカを守れるんだってことを! 俺がやらずに誰がやる!)
「それはもちろん異世界召喚が行われて、この部屋に異世界からの来訪者がいるからですわ」
「や、やっぱりエリカのことを知っているのきゃ!」
さらっと核心に踏み込まれてしまった俺は、もう完全に動揺が隠しきれないでいた。
最後「知っているのか」と言おうとして「知っているのきゃ」って言っちゃったよ。
超恥ずかしい。
「それはもちろん知っておりますわ。法務省外局・難民審査庁・難民審査局・異世界召喚課・特命担当官ですもの」
しかしヒナギクさんは、俺の噛みっかみの情けない発言をさらっとスルーして流してくれた。
すごく優しいね、うん。
さすが国家公務員様だよ。
「じゃあ俺もヒナギクさんで」
「『さん』もいりませんわよ? わたくしのほうが年下なのですし」
「いいやヒナギクさんに『さん付け』はマストで必要だから。ここは俺的には譲れない絶対防衛ラインなんだ」
「はぁ、そうなのですわね?」
金髪ネコ耳メイド癒し系お姉さん=ヒナギクさんは、ちょっとよく分からなさそうな顔で頷いた。
でもこれはどうしても譲れないんだ。
たとえ俺の方が年上でも、ヒナギクさんは永遠のお姉さんキャラだから!
「それであの、えっと、法務省ってことはヒナギクさんはその、こ、こ、ここ、国家公務員なんだよな?」
その職業を呼称しようとして、俺はついどもってしまった。
だ、だって国家公務員だよ!?
勤め先が倒産して30代無職になった俺とは正反対の、親方日の丸で絶対に倒産しない、どこに出しても恥ずかしくない最強の身分にして最強の勝ち組。
それが国家公務員なんだよ!?
街コンとかで『俺、国家公務員なんだけどさ』って軽く言っただけで婚活女子が次々とアプローチしてくる(らしい@ネット婚活情報)最強ステータスの1つなんだよ!?
すごい。
羨ましい。
憧れる。
いいなぁ、俺もなりたい。
そういうことであるからして、俺がヒナギクさんと「さん付け」で呼ぶのもこれまた当然のことであった。
もちろん俺の知り合いに国家公務員というスーパーステータス持ちはいない。
ヒナギクさんが正真正銘、俺の初めての人である。
「まぁいきなりこんなこと言われても信じられませんわよね。お気持ちはお察しいたます」
「俺が素性に疑念を抱くのは、そっちもある程度織り込み済みってわけか」
さすが国家公務員、すごく頭がいいぞ!
「ですがわたくしの素性でしたら、今すぐに法務省に問い合わせていただいても構いませんわ。名刺のここのところが、わたくしの所属する部署の住所と電話番号になりますので」
ヒナギクさんは俺が受け取った名刺を覗き込みながら指差しして教えてくれた。
距離がグッと縮まったことで、ヒナギクさんのふんわり柔らかそうな髪が俺の頬をかすめる。
指先が少し触れ合って、大きな胸がふよんと俺の手の甲に触れた。
さらにはしっとりと甘くていい匂いまで漂ってくる。
パーソナルスペースの内側に自然と入ってくる、なんとも隙の多い絶妙な距離感!
くっ、間違いない!
この人は童貞を殺すお姉さんだ!
つい昨日まで童貞だった実質童貞の俺も殺されてしまいそうです!
ただでさえ国家公務員という最強の肩書を前に、ひれ伏す寸前だっていうのに。
俺は心まで強くあらなければならないのだ。
(耐えろ、耐えるんだ俺! ここは強く心を持つんだ! 全然ちっとも何でもない風を装うんだ!)
「あ、これね。ふへー、それにしても長い肩書だなぁ。聞いても全然分からなかったし、なんか漢字がずらっと並んでて見ているだけで気圧されそうなんだけどー」
「法務省外局・難民審査庁・難民審査局・異世界召喚課・特命担当官ですわ。なかなかカッコが良いでしょう? 実は結構気に入っておりますの」
包容力のある年上のお姉さんの魅力を全開に、ふんわりと優しそうに、だけどちょっと自慢げに微笑むヒナギクさん。
控えめに言ってものすごーく可愛かった。
だめだ、必死に感情をコントロールしようと思っているのに、大きく開いた胸元ととかあれこれ色んな所に、どうしようもなく女性の魅力を感じてしまうぞ……!
「確かに強くてカッコよくはあるかな――じゃなくてだな! なんでその法務省の人が、ミニスカメイド服を着て、うちに不法侵入しようとしてるんだよ?」
しかし俺は昨日の夜のエリカの寂しそうな姿を思い出してもう一度心を奮い立たせると、泣いて馬謖を斬る思いで必死に煩悩を追いやって思考を戻した。
(そうだ、思い出せ。俺だけがエリカを守れるんだってことを! 俺がやらずに誰がやる!)
「それはもちろん異世界召喚が行われて、この部屋に異世界からの来訪者がいるからですわ」
「や、やっぱりエリカのことを知っているのきゃ!」
さらっと核心に踏み込まれてしまった俺は、もう完全に動揺が隠しきれないでいた。
最後「知っているのか」と言おうとして「知っているのきゃ」って言っちゃったよ。
超恥ずかしい。
「それはもちろん知っておりますわ。法務省外局・難民審査庁・難民審査局・異世界召喚課・特命担当官ですもの」
しかしヒナギクさんは、俺の噛みっかみの情けない発言をさらっとスルーして流してくれた。
すごく優しいね、うん。
さすが国家公務員様だよ。
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