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第1章 朝5時にピンポン連打する異世界押しかけ妻
第17話 なんか疲れた……
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「うーん、そんなもんか?」
「わたしは世界を救った勇者様であるトールに尽くせるんですよ? わたしほどの幸運を持った人間は基幹世界『ディ・マリア』にはいませんよ」
「そうなのか」
「女神様の教えに従い、異世界転移の巫女としての力を一心に磨いてきたかいがあったいうものです」
「……そんなものなのか」
「そんなものなんです」
「……ならいいんだけどさ」
そうだよな。
日本語が堪能で外見もネイティブ日本人だから、勝手に俺がそんな風に思ってしまっただけで。
俺とエリカは住んでいた世界すら違うのだ。
根本的な常識や価値観からして全然違っているのも、当たり前なのかもしれなかった。
日本人の価値観を、そうでない相手に勝手かつ一方的に押し付けるのはいけないよな。
「もう、トールは細かいことばっかり気にする人ですねぇ」
「俺がって言うより、世界間の相互理解が不足しているのが原因かな?」
「ですがトールのそういう優しいところを、わたしはとても素敵だと思います」
「ははっ、ありがと」
ま、エリカ自身が気にしてないのなら、俺が勝手な思い込みを元にあれこれ気に病む必要はないだろう。
(はぁ、なんかもう今朝起きてから色んなことがあり過ぎて、考えること自体が疲れてきたな……)
実は会社が倒産した時、俺は無職になった辛さとか不安を落ち着かせるために、失業手当を貰いながらちょっとだけ夏休み気分でも味わって英気を養おうかなって、軽く思っていた。
だって言うのに、30代無職男性という社会的プレッシャーとか、この年で親に仕送りしてもらう申し訳なさは、それはもうものすごいものだった。
そこにきて異世界転移した美少女と結婚前提で同棲することになったのだ。
なんかもう精神的なアレやコレやで、働いていた時よりも疲れる気がするんだけど……。
何度も言うけど、俺はごくごく平凡な低所得者層の労働者だ(今は無職だけど)。
異世界転移する主人公みたいな隠されたすごい力も、何かをやり遂げる強い意志も、あらかじめ作者に答えを教えてもらっているとしか思えないチート解決能力も持ってはいない。
どうしたもんかと思っても、思っただけでは通帳残高は増えたりしないし、突然すごい力に目覚めたりもしないし、すぐに解決策が浮かんでくるわけでもない。
(知らなかった。30代の無職男性ってこんなにも大変だったんだな……)
精神的にどうそようもなく疲れ果ててしまった俺は、気分転換もかねてリモコンを掴むとポチっとテレビをつけた。
すると――!
「な、なんということでしょう! 急に黒い石板の中に小人さんが現れました! た、たたた大変です! はやく助けてあげないと!」
エリカがテレビを見た途端、指を差しながらあわあわ騒ぎ始めたのだ。
「わたしは世界を救った勇者様であるトールに尽くせるんですよ? わたしほどの幸運を持った人間は基幹世界『ディ・マリア』にはいませんよ」
「そうなのか」
「女神様の教えに従い、異世界転移の巫女としての力を一心に磨いてきたかいがあったいうものです」
「……そんなものなのか」
「そんなものなんです」
「……ならいいんだけどさ」
そうだよな。
日本語が堪能で外見もネイティブ日本人だから、勝手に俺がそんな風に思ってしまっただけで。
俺とエリカは住んでいた世界すら違うのだ。
根本的な常識や価値観からして全然違っているのも、当たり前なのかもしれなかった。
日本人の価値観を、そうでない相手に勝手かつ一方的に押し付けるのはいけないよな。
「もう、トールは細かいことばっかり気にする人ですねぇ」
「俺がって言うより、世界間の相互理解が不足しているのが原因かな?」
「ですがトールのそういう優しいところを、わたしはとても素敵だと思います」
「ははっ、ありがと」
ま、エリカ自身が気にしてないのなら、俺が勝手な思い込みを元にあれこれ気に病む必要はないだろう。
(はぁ、なんかもう今朝起きてから色んなことがあり過ぎて、考えること自体が疲れてきたな……)
実は会社が倒産した時、俺は無職になった辛さとか不安を落ち着かせるために、失業手当を貰いながらちょっとだけ夏休み気分でも味わって英気を養おうかなって、軽く思っていた。
だって言うのに、30代無職男性という社会的プレッシャーとか、この年で親に仕送りしてもらう申し訳なさは、それはもうものすごいものだった。
そこにきて異世界転移した美少女と結婚前提で同棲することになったのだ。
なんかもう精神的なアレやコレやで、働いていた時よりも疲れる気がするんだけど……。
何度も言うけど、俺はごくごく平凡な低所得者層の労働者だ(今は無職だけど)。
異世界転移する主人公みたいな隠されたすごい力も、何かをやり遂げる強い意志も、あらかじめ作者に答えを教えてもらっているとしか思えないチート解決能力も持ってはいない。
どうしたもんかと思っても、思っただけでは通帳残高は増えたりしないし、突然すごい力に目覚めたりもしないし、すぐに解決策が浮かんでくるわけでもない。
(知らなかった。30代の無職男性ってこんなにも大変だったんだな……)
精神的にどうそようもなく疲れ果ててしまった俺は、気分転換もかねてリモコンを掴むとポチっとテレビをつけた。
すると――!
「な、なんということでしょう! 急に黒い石板の中に小人さんが現れました! た、たたた大変です! はやく助けてあげないと!」
エリカがテレビを見た途端、指を差しながらあわあわ騒ぎ始めたのだ。
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