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第三章 アンナローゼの悪意
第28話 危機一髪の救援
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「ジェフリー王太子殿下!」
その猛々しい声を聞き、その勇猛なる顔を見たミリーナは恐怖から一転、泣きたくなるほど安心していた。
同時に、心が天まで届くほどにドキドキと弾んでいることにも気付いてしまう。
(まさかジェフリー王太子殿下が助けに来てくれるなんて――!)
「大丈夫かミリーナ、怪我はないか?」
「はい、すんでのところでまだ何もされてはおりませんでしたので」
「それは良かった。だがこんな目にあってたいそう辛かっただろう。まずはスカートをはいて。話はそれからだ」
ジェフリー王太子は部屋の片隅に放り捨てられていたミリーナのスカートと、あと下着も一緒に拾い上げると、ミリーナにそっと優しく手渡した。
ミリーナがいそいそと下着とスカートをはき直すと、ジェフリー王太子はその肩をそっと優しく抱き寄せる。
「君が無事でよかった」
「ありがとうございますジェフリー王太子殿下。ですが今日は朝から夜までずっと会議が続くと仰っておられたのではありませんか? なのにどうしてここに来ることができたのでしょうか?」
アンナローゼたちもそれを知っていたからこそ、今日という日を狙ってこの卑劣なる姦計をしかけてきたというのに。
「どうも嫌な胸騒ぎがしてね。少し休会をして君の様子を見に来たんだよ。するとどうだ、君とアンナローゼが人気のないところに向かう様子を見た者がいて、急いで追ってきたというわけさ。間一髪で間に合ったようでなによりだ」
優しげな瞳で、ミリーナの辛い心を労わるように温かい言の葉を紡ぐジェフリー王太子。
しかしジェフリー王太子はそこまで言うと、今度は打って変って鋭い視線をアンナローゼへと向けた。
「あ、えっと、これは、その……ミリーナさんとは、お、お話をしていたのですわ」
真冬の冷たい北風のような敵意のこもった鋭い視線を向けられて、アンナローゼはまだ何も聞かれていないというのに、しどろもどろになりながら言い訳を始める。
「とてもそうは見えなかったがな。聞くに堪えないような罵詈雑言が部屋の外まで聞こえていたぞ? それにその手に持っている下卑た物は一体なんだ?」
「あ、これはその……」
アンナローゼはハッとした顔をするとすぐにディルドを後ろ手に隠した。
もちろんそんなことをしても今さらもう遅い。
ジェフリー王太子はディルドを取り上げると、アンナローゼの目の前に突き付けた。
「これでミリーナに何をしようとした?」
「あ……えっと、う……あ……」
「どうした、言えないのか? 言えないのなら俺が代わりに言ってやろう。君はミリーナのスカートと下着をはぎとり、この卑猥なものでその純潔の証を花と散らそうとしたのだ!」
「わ、わたくしは……わたくしは……だって……だって……」
「アンナローゼ、君との婚約に関する話は全て白紙に戻ったと、この前大温室で伝えたはずだよな? そして俺はミリーナを妻に迎えるとも伝えたはず。つまり今回の一件はそれを恨んでの復讐というわけだな?」
ジェフリー王太子の視線がいっそう鋭くなり、声も険を帯びていく。
「……だって! だってわたくし納得できなかったんですもの! 貧乏男爵家の娘など、国内外にその名を知られるジェフリー王太子殿下にはとうてい釣り合わないではありませんか! ひいてはローエングリン王国そのものが軽んじられてしまうことは必至ですもの!」
もはや言い逃れは出来ないと悟ったアンナローゼはしかし、こともあろうに逆ギレをした。
自分の行いは愚かな間違いを正すための必要悪だったのだと、自分勝手な自己主張を喚き散らかす。
「ほぅ、釣り合いと言ったか?」
しかしジェフリー王太子は目を細めると、アンナローゼに向かって不敵に笑った。
その猛々しい声を聞き、その勇猛なる顔を見たミリーナは恐怖から一転、泣きたくなるほど安心していた。
同時に、心が天まで届くほどにドキドキと弾んでいることにも気付いてしまう。
(まさかジェフリー王太子殿下が助けに来てくれるなんて――!)
「大丈夫かミリーナ、怪我はないか?」
「はい、すんでのところでまだ何もされてはおりませんでしたので」
「それは良かった。だがこんな目にあってたいそう辛かっただろう。まずはスカートをはいて。話はそれからだ」
ジェフリー王太子は部屋の片隅に放り捨てられていたミリーナのスカートと、あと下着も一緒に拾い上げると、ミリーナにそっと優しく手渡した。
ミリーナがいそいそと下着とスカートをはき直すと、ジェフリー王太子はその肩をそっと優しく抱き寄せる。
「君が無事でよかった」
「ありがとうございますジェフリー王太子殿下。ですが今日は朝から夜までずっと会議が続くと仰っておられたのではありませんか? なのにどうしてここに来ることができたのでしょうか?」
アンナローゼたちもそれを知っていたからこそ、今日という日を狙ってこの卑劣なる姦計をしかけてきたというのに。
「どうも嫌な胸騒ぎがしてね。少し休会をして君の様子を見に来たんだよ。するとどうだ、君とアンナローゼが人気のないところに向かう様子を見た者がいて、急いで追ってきたというわけさ。間一髪で間に合ったようでなによりだ」
優しげな瞳で、ミリーナの辛い心を労わるように温かい言の葉を紡ぐジェフリー王太子。
しかしジェフリー王太子はそこまで言うと、今度は打って変って鋭い視線をアンナローゼへと向けた。
「あ、えっと、これは、その……ミリーナさんとは、お、お話をしていたのですわ」
真冬の冷たい北風のような敵意のこもった鋭い視線を向けられて、アンナローゼはまだ何も聞かれていないというのに、しどろもどろになりながら言い訳を始める。
「とてもそうは見えなかったがな。聞くに堪えないような罵詈雑言が部屋の外まで聞こえていたぞ? それにその手に持っている下卑た物は一体なんだ?」
「あ、これはその……」
アンナローゼはハッとした顔をするとすぐにディルドを後ろ手に隠した。
もちろんそんなことをしても今さらもう遅い。
ジェフリー王太子はディルドを取り上げると、アンナローゼの目の前に突き付けた。
「これでミリーナに何をしようとした?」
「あ……えっと、う……あ……」
「どうした、言えないのか? 言えないのなら俺が代わりに言ってやろう。君はミリーナのスカートと下着をはぎとり、この卑猥なものでその純潔の証を花と散らそうとしたのだ!」
「わ、わたくしは……わたくしは……だって……だって……」
「アンナローゼ、君との婚約に関する話は全て白紙に戻ったと、この前大温室で伝えたはずだよな? そして俺はミリーナを妻に迎えるとも伝えたはず。つまり今回の一件はそれを恨んでの復讐というわけだな?」
ジェフリー王太子の視線がいっそう鋭くなり、声も険を帯びていく。
「……だって! だってわたくし納得できなかったんですもの! 貧乏男爵家の娘など、国内外にその名を知られるジェフリー王太子殿下にはとうてい釣り合わないではありませんか! ひいてはローエングリン王国そのものが軽んじられてしまうことは必至ですもの!」
もはや言い逃れは出来ないと悟ったアンナローゼはしかし、こともあろうに逆ギレをした。
自分の行いは愚かな間違いを正すための必要悪だったのだと、自分勝手な自己主張を喚き散らかす。
「ほぅ、釣り合いと言ったか?」
しかしジェフリー王太子は目を細めると、アンナローゼに向かって不敵に笑った。
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