121 / 132
第4章 ヒロインズ・バトル
第119話 『推し』
しおりを挟む
ルナ、キララ、クララから魔力を奪い――少しいい方は悪いが――それをまとめて4人分の魔力として、俺に供給する。
いつもの完璧に制御された魔力回復と違って、魔力の流れがかなり不安定だが、普段よりも大きな魔力が、リューネから俺の中へと流れ込んで来ていた。
「ははっ。本当に、ここにいる仲間たちはすごい姫騎士ばっかりだよ。ってわけだから、俺も負けちゃいられないよな! いくぞ聖剣エクスカリバー! ここからもうひと踏ん張りだ! ペンドラゴン・アヴァランシュ! おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!」
俺はリューネ達のおかげでかなり回復した魔力を、再び聖剣エクスカリバーに猛然とつぎ込み始めた。
みんなの想いがこもった魔力を注がれた聖剣エクスカリバーが、今日一番の輝きを見せる!
そしてその間にも、アリエッタはローゼンベルクが誇る極大の破壊魔法を構築しつつあった。
「煉獄の焔天に集いし、漆黒の業火よ! 我が手に集え! 烈火を解き放ち、絶えなき災厄となりて、我が敵を焼き尽くすがいい!」
アリエッタが天に掲げた両手の上に、かつて魔王が使ったと言われる漆黒の地獄の業火が渦を巻き、その中心で漆黒の炎が何かの形──翼を持った鳥のような姿を取り始める。
明らかに、俺と決闘した時と比べて制御が上手くいっている!
いける――!
俺は勝利を確信しかけたのだが――しかし。
今まさに形を定めようとしていた黒き炎が、砂のお城に水がかかったみたいに、ぐにゃりと大きく形を崩した。
「ぐっ、このっ! ぐぅぅぅぅ!」
そしてここまでは凛々しい顔で魔法の構築を行っていたアリエッタの顔が一転、苦悶に歪む。
天に掲げた両手はピクピクと震えていて、荒ぶる魔力をなんとか制御しようと、渾身の力を込めているのが見て取れた。
これはまずいぞ。
あと一歩だったのに、また暴走しかけている!
くそっ、カラミティ・インフェルノって魔法は、どうやら相当なじゃじゃ馬のようだ!
もちろん手をこまねいてみているわけにはいかない。
俺はすかさずアリエッタを励ます声をかける。
「大丈夫だアリエッタ。アリエッタならできる。アリエッタ推しの俺が保証する! あと少しだ、いけるいける!」
アリエッタの思考ノイズにならないように、シンプルな言葉で簡潔に応援の気持ちを伝える。
「ユータ、前から思ってたんだけど、推しとか言われても意味がよく分かんないから!」
なっ!?
今さら!?
たしかに最初の頃に『推しとか言われてもよく分からない』みたいなことを言われたけど、その後はなにも言われなかったから、俺はてっきり理解してくれていたものだとばかり思っていたんだが!?
「くっ、これが世界間ギャップってやつか……!」
『推し』という日本の最先端の文化的概念は、どうにもこの世界では伝わってくれないようだ。
だがしかし、このままでは俺のアリエッタへの熱い想いが、アリエッタに正しく伝わらない。
俺の独りよがりで終わってしまう。
しかも完全に思考ノイズになってしまっている。
必死にカラミティ・インフェルノを制御しようとしているアリエッタの思考を、俺の言葉が妨害してしまっている。
俺の発した言葉が、敗着を引き寄せる可能性があった。
こんな伸るか反るかの勝負をかけた場面で、これはまずい。
今は皆の心を1つに合わせる時なのだ。
当然、俺とアリエッタの心も1つにならなければ、ジラント・ドラゴンには勝てはしない!
だから俺は『推し』という概念を、全世界で通じる最もシンプルかつストレートでダイレクトな言葉に置き換えることにした。
いつもの完璧に制御された魔力回復と違って、魔力の流れがかなり不安定だが、普段よりも大きな魔力が、リューネから俺の中へと流れ込んで来ていた。
「ははっ。本当に、ここにいる仲間たちはすごい姫騎士ばっかりだよ。ってわけだから、俺も負けちゃいられないよな! いくぞ聖剣エクスカリバー! ここからもうひと踏ん張りだ! ペンドラゴン・アヴァランシュ! おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!」
俺はリューネ達のおかげでかなり回復した魔力を、再び聖剣エクスカリバーに猛然とつぎ込み始めた。
みんなの想いがこもった魔力を注がれた聖剣エクスカリバーが、今日一番の輝きを見せる!
そしてその間にも、アリエッタはローゼンベルクが誇る極大の破壊魔法を構築しつつあった。
「煉獄の焔天に集いし、漆黒の業火よ! 我が手に集え! 烈火を解き放ち、絶えなき災厄となりて、我が敵を焼き尽くすがいい!」
アリエッタが天に掲げた両手の上に、かつて魔王が使ったと言われる漆黒の地獄の業火が渦を巻き、その中心で漆黒の炎が何かの形──翼を持った鳥のような姿を取り始める。
明らかに、俺と決闘した時と比べて制御が上手くいっている!
いける――!
俺は勝利を確信しかけたのだが――しかし。
今まさに形を定めようとしていた黒き炎が、砂のお城に水がかかったみたいに、ぐにゃりと大きく形を崩した。
「ぐっ、このっ! ぐぅぅぅぅ!」
そしてここまでは凛々しい顔で魔法の構築を行っていたアリエッタの顔が一転、苦悶に歪む。
天に掲げた両手はピクピクと震えていて、荒ぶる魔力をなんとか制御しようと、渾身の力を込めているのが見て取れた。
これはまずいぞ。
あと一歩だったのに、また暴走しかけている!
くそっ、カラミティ・インフェルノって魔法は、どうやら相当なじゃじゃ馬のようだ!
もちろん手をこまねいてみているわけにはいかない。
俺はすかさずアリエッタを励ます声をかける。
「大丈夫だアリエッタ。アリエッタならできる。アリエッタ推しの俺が保証する! あと少しだ、いけるいける!」
アリエッタの思考ノイズにならないように、シンプルな言葉で簡潔に応援の気持ちを伝える。
「ユータ、前から思ってたんだけど、推しとか言われても意味がよく分かんないから!」
なっ!?
今さら!?
たしかに最初の頃に『推しとか言われてもよく分からない』みたいなことを言われたけど、その後はなにも言われなかったから、俺はてっきり理解してくれていたものだとばかり思っていたんだが!?
「くっ、これが世界間ギャップってやつか……!」
『推し』という日本の最先端の文化的概念は、どうにもこの世界では伝わってくれないようだ。
だがしかし、このままでは俺のアリエッタへの熱い想いが、アリエッタに正しく伝わらない。
俺の独りよがりで終わってしまう。
しかも完全に思考ノイズになってしまっている。
必死にカラミティ・インフェルノを制御しようとしているアリエッタの思考を、俺の言葉が妨害してしまっている。
俺の発した言葉が、敗着を引き寄せる可能性があった。
こんな伸るか反るかの勝負をかけた場面で、これはまずい。
今は皆の心を1つに合わせる時なのだ。
当然、俺とアリエッタの心も1つにならなければ、ジラント・ドラゴンには勝てはしない!
だから俺は『推し』という概念を、全世界で通じる最もシンプルかつストレートでダイレクトな言葉に置き換えることにした。
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる