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第4章 ヒロインズ・バトル

第117話 憎まれ役 ユリーナ

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「──っ!」

 コンプレックスでもあるエレナ会長と、ストレートに比較されたアリエッタが、何ごとか言い返そうとして、しかし言い返せずに言葉を飲み込む。

「エレナ会長はあなたと違って、カラミティ・インフェルノをコントロールできるのでしょう?」

「――っ!!」

「やれやれ、同じローゼンベルクでありながら、姉妹でこうも違うものですのね」
「お姉さまは……関係ない」

 アリエッタがのどから絞り出すようにつぶやく。
 しかしユリーナの口撃は止まらない。

「関係あるでしょう? ここにいるのが味噌っかすのあなたでなく、何でもできるエレナ会長だったら、カラミティ・インフェルノが使えたんですもの。なのにあなたがいたせいで、わたくしたちはともすれば全滅ですわ」

「ぐ……! この……! ……っ!」
 アリエッタが何度も言い返そうとして、やはり言い返せずに言葉を飲み込む。

「やれやれ。ここまで言われてもまだ臆病風に吹かれると言うのなら、もうこれ以上は結構です。とっとと後ろに下がっていてください。ユウタ様のお近くにいられると目障りですわ」

「――なっ!」

「それと、あなたを終生のライバルと言ったのは取り下げます。今のあなたには、わたくしが競う価値をこれっぽちも感じませんので。あなたのライバルなどと言ったら、わたくしの価値が下がってしまいます」

「このっ、さっきから言わせておけば……!」

「ああもう、そういうのも結構です。やる気がないのなら、黙って後ろに下がっていて下さいな。臆病者が視界に入ると、わたくしまで臆病風に吹かれてしまいそうですから」

「ユリーナ……!」
 アリエッタが怒りに満ちた声を上げる。

 しかしユリーナはもうアリエッタに取り合うことなく、今度は俺に向かって話し始めた。

「ユウタ様、そんな臆病者ではなく、ここはわたくしユリーナ・リリィホワイトにおまかせくださいませ」

「ユリーナ? 何か策でもあるのか?」

「わたくしがリリィホワイトの誇る絶対氷河の氷盾――アブソリュート・グレイシャー・フリージング・シールドを、ジラント・ドラゴンの周囲で、最大出力で発生させます。ジラント・ドラゴンの周囲に渦巻く闇の魔力にSSランク魔法の大魔力で干渉すれば、漆黒の蛇の力を少しはぐことができるはずです」

 そう言うと、ユリーナは手際よくSSランク魔法を発動して、ジラント・ドラゴンの周囲を囲むように分厚い氷の盾を設置した。

 ジラント・ドラゴンの周囲で渦を巻いていた闇の魔力が、ユリーナの魔力によって干渉されて綺麗に流れなくなる。

「おおっ!? 明らかに威力が落ちたぞ」

 聖剣エクスカリバーの光を喰らい尽くそうとしていた漆黒の蛇の浸食が止まり、光と闇が拮抗する。

「ローゼンベルクのカラミティ・インフェルノほどの破壊力はありませんが、我がリリィホワイトのアブソリュート・グレイシャー・フリージング・シールドもSSランク魔法。こうやって魔力干渉をさせるだけでも効果はあるというものですわ」

「ユリーナ、やるな」

「これくらい、たいしたことではありません。さぁユウタ様、次はどういたしましょう? なんでもご命令下さいな。ユウタ様の隣に立つべきは臆病者のローゼンベルクではなく、誇り高きリリィホワイトであることを、今からこのわたくし、ユリーナ・リリィホワイトが証明してみせましょう」

「私は……! ローゼンベルクは臆病者なんかじゃ――」

「あら、まだそんなところにいましたのアリエッタ・ローゼンベルク? わたくしは臆病者は下がれと言ったはずですけれど?」

「……」

「あなたには何も期待しておりませんが、仮にも名門ローゼンベルクの姫騎士ならば、せめてユウタ様とわたくしの足を引っ張るのだけは、やめていただけませんか?」

 ユリーナが呆れたように言った。
 が、しかし。
 俺はもういい加減、その意図に気付きつつあった。

 さっきからなんとなくユリーナの言葉に違和感があったのだが、今のセリフで確信した。
 散々『臆病者』と煽ったり、エレナ会長との比較をしてみたり、『ローゼンベルク』の名前をこれでもかとしつこく出したりと、ユリーナの意図はもはや明白だ。

 自分が憎まれ役を買ってでも、ローゼンベルクの姫騎士たちが代々受け継ぎ、特にアリエッタに顕著な激しい闘争心に、火を付けようとしているのだ。

 そして、ついに山は動いた。

「……て……れば」
「はい?」

「……黙って聞いていれば、臆病だの足を引っ張るだの、言いたい放題言ってくれるじゃないの!」

 アリエッタがキレた。
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