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第4章 ヒロインズ・バトル

第116話 臆病者 アリエッタ

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「誰が臆病者ですって?」

 アリエッタがムッとしたように、硬い口調でユリーナに言葉を返した。

「あなたに決まっているでしょう、アリエッタ・ローゼンベルク。まさか自覚がありませんの?」
「なんですって……!」

「ちょ、おい。2人とも、今はそんな言い争いをしてる場合じゃないだろ――」

 しかしユリーナは俺の言葉に聞く耳を持たず、小馬鹿にしたように言葉を続ける。

「勝つためのチャンスがありながら、挑戦することすらせずに諦める。まさかあなたがこんな情けない臆病者だったとは、思いもよりませんでしたわ」

「――っ! さっきから臆病者、臆病者って! カラミティ・インフェルノが暴走してみんなを巻き込んだら、取り返しがつかないじゃない! それこそみんな仲良く全滅よ。それくらい分かるでしょ!」

「ジラント・ドラゴンに勝てなければ、行きつく結果は同じですわ」

「そ、それはそうだけど……。でもカラミティ・インフェルノ以外にも方法があるかもしれないじゃない! 制御できるか分からないカラミティ・インフェルノを使うのは、あまりに危険すぎる賭けだわ」

「危険だから、賭けずにむざむざ負けを選ぶと?」

「そんなこと一言も言ってない! 違う方法もあるんじゃないかって言ってるの。じゃあなに、ユリーナは私と心中してもいいって言うわけ? 自分の生き死に他人に任せるなんて、リリィホワイトも落ちたものね」

 もう完全に売り言葉に買い言葉で、挑発するように言ったアリエッタ。

「わたくしはあなたとなら、心中しても構わないと思っておりますわよ」
「ぇ──」

 しかし全く予期しない言葉を返されたようで、アリエッタは呆気にとられたような声を上げた。

「あなたがやってダメなら諦めもつくというものですわ。いいえ、あなただからこそ賭けてもいいと思えたのです」

「きゅ、急になに言って――」

「ユウタ様も同じ気持ちのはずです。あなただからこそ禁呪の使用を提案したのです。あなたならできると。そしてわたくしも、この窮地を打開するにはそれしかないと思いましたの。いいえ、わたくしたち2人だけではありません。皆さんもそうですわよね?」

 ここで、今までアリエッタとバチバチにやり合っていたユリーナが、仲間たちに話を振った。

「そうそう、アリエッタならできるって!」
 いの一番にルナが明るく断言し、

「大丈夫、アリエッタなら絶対にやれるよ」
 リューネが優しく応援し、

「アリエッタさんならやれます。ね、お姉さまもそう思いますよね」
「むずかしー話はキララよく分かんなーい!( 〃▽〃)」

「お・ね・え・さ・ま? 1週間デザート抜きにしますよ? いいんですか?」
「よく分からないけど、キララもそう思う!( >Д<;)」

 クララとキララが同意する。

「と、いうことですわ。さて、これでもまだできないとおっしゃるのですか、アリエッタ・ローゼンベルク?」

 仲間たちからアリエッタに寄せられる信頼の声。

「それは……だって……」

 しかしそれでもアリエッタは決断できなかった。

 今になって、あの暴走の一件をもう少しケアしておけばよかったと後悔する。
 アリエッタの心に刻み込まれた失敗の記憶をほぐし、カラミティ・インフェルノの研究や練習を行って、自信をつけてもらうべきだったと痛感する。

 くそ、本当に今さらだな。

 今のアリエッタなら、コントロールできるはずなんだ。
 無理だと思っていたらそもそも提案なんかしない。

 なんとか、アリエッタの迷いを断ち切らないとだ。

 だが、どうすればいい?
 どうすればアリエッタの負の記憶を取り払うことができる?

「くそ、俺の方もそろそろ本気で維持限界だぞ……!」

 俺がペンドラゴン・アヴァランシュを維持しながら、なんとかアリエッタの背中を押すための言葉を探そうとしていると――、

「はぁ、事ここに至ってまだ決断できないとは。興ざめですわねアリエッタ・ローゼンベルク。せっかくわたくしが、のろまなあなたの背中を優しく押してあげようとしましたのに、それでもなお決断できないとは。本当に使えない人ですわ。何でもできるエレナ会長は大違いですわね」

 ここまでの熱っぽい言葉から一転、ユリーナが冷たい口調で呆れたように言った。

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