118 / 132
第4章 ヒロインズ・バトル
第116話 臆病者 アリエッタ
しおりを挟む
「誰が臆病者ですって?」
アリエッタがムッとしたように、硬い口調でユリーナに言葉を返した。
「あなたに決まっているでしょう、アリエッタ・ローゼンベルク。まさか自覚がありませんの?」
「なんですって……!」
「ちょ、おい。2人とも、今はそんな言い争いをしてる場合じゃないだろ――」
しかしユリーナは俺の言葉に聞く耳を持たず、小馬鹿にしたように言葉を続ける。
「勝つためのチャンスがありながら、挑戦することすらせずに諦める。まさかあなたがこんな情けない臆病者だったとは、思いもよりませんでしたわ」
「――っ! さっきから臆病者、臆病者って! カラミティ・インフェルノが暴走してみんなを巻き込んだら、取り返しがつかないじゃない! それこそみんな仲良く全滅よ。それくらい分かるでしょ!」
「ジラント・ドラゴンに勝てなければ、行きつく結果は同じですわ」
「そ、それはそうだけど……。でもカラミティ・インフェルノ以外にも方法があるかもしれないじゃない! 制御できるか分からないカラミティ・インフェルノを使うのは、あまりに危険すぎる賭けだわ」
「危険だから、賭けずにむざむざ負けを選ぶと?」
「そんなこと一言も言ってない! 違う方法もあるんじゃないかって言ってるの。じゃあなに、ユリーナは私と心中してもいいって言うわけ? 自分の生き死に他人に任せるなんて、リリィホワイトも落ちたものね」
もう完全に売り言葉に買い言葉で、挑発するように言ったアリエッタ。
「わたくしはあなたとなら、心中しても構わないと思っておりますわよ」
「ぇ──」
しかし全く予期しない言葉を返されたようで、アリエッタは呆気にとられたような声を上げた。
「あなたがやってダメなら諦めもつくというものですわ。いいえ、あなただからこそ賭けてもいいと思えたのです」
「きゅ、急になに言って――」
「ユウタ様も同じ気持ちのはずです。あなただからこそ禁呪の使用を提案したのです。あなたならできると。そしてわたくしも、この窮地を打開するにはそれしかないと思いましたの。いいえ、わたくしたち2人だけではありません。皆さんもそうですわよね?」
ここで、今までアリエッタとバチバチにやり合っていたユリーナが、仲間たちに話を振った。
「そうそう、アリエッタならできるって!」
いの一番にルナが明るく断言し、
「大丈夫、アリエッタなら絶対にやれるよ」
リューネが優しく応援し、
「アリエッタさんならやれます。ね、お姉さまもそう思いますよね」
「むずかしー話はキララよく分かんなーい!( 〃▽〃)」
「お・ね・え・さ・ま? 1週間デザート抜きにしますよ? いいんですか?」
「よく分からないけど、キララもそう思う!( >Д<;)」
クララとキララが同意する。
「と、いうことですわ。さて、これでもまだできないとおっしゃるのですか、アリエッタ・ローゼンベルク?」
仲間たちからアリエッタに寄せられる信頼の声。
「それは……だって……」
しかしそれでもアリエッタは決断できなかった。
今になって、あの暴走の一件をもう少しケアしておけばよかったと後悔する。
アリエッタの心に刻み込まれた失敗の記憶をほぐし、カラミティ・インフェルノの研究や練習を行って、自信をつけてもらうべきだったと痛感する。
くそ、本当に今さらだな。
今のアリエッタなら、コントロールできるはずなんだ。
無理だと思っていたらそもそも提案なんかしない。
なんとか、アリエッタの迷いを断ち切らないとだ。
だが、どうすればいい?
どうすればアリエッタの負の記憶を取り払うことができる?
「くそ、俺の方もそろそろ本気で維持限界だぞ……!」
俺がペンドラゴン・アヴァランシュを維持しながら、なんとかアリエッタの背中を押すための言葉を探そうとしていると――、
「はぁ、事ここに至ってまだ決断できないとは。興ざめですわねアリエッタ・ローゼンベルク。せっかくわたくしが、のろまなあなたの背中を優しく押してあげようとしましたのに、それでもなお決断できないとは。本当に使えない人ですわ。何でもできるエレナ会長は大違いですわね」
ここまでの熱っぽい言葉から一転、ユリーナが冷たい口調で呆れたように言った。
アリエッタがムッとしたように、硬い口調でユリーナに言葉を返した。
「あなたに決まっているでしょう、アリエッタ・ローゼンベルク。まさか自覚がありませんの?」
「なんですって……!」
「ちょ、おい。2人とも、今はそんな言い争いをしてる場合じゃないだろ――」
しかしユリーナは俺の言葉に聞く耳を持たず、小馬鹿にしたように言葉を続ける。
「勝つためのチャンスがありながら、挑戦することすらせずに諦める。まさかあなたがこんな情けない臆病者だったとは、思いもよりませんでしたわ」
「――っ! さっきから臆病者、臆病者って! カラミティ・インフェルノが暴走してみんなを巻き込んだら、取り返しがつかないじゃない! それこそみんな仲良く全滅よ。それくらい分かるでしょ!」
「ジラント・ドラゴンに勝てなければ、行きつく結果は同じですわ」
「そ、それはそうだけど……。でもカラミティ・インフェルノ以外にも方法があるかもしれないじゃない! 制御できるか分からないカラミティ・インフェルノを使うのは、あまりに危険すぎる賭けだわ」
「危険だから、賭けずにむざむざ負けを選ぶと?」
「そんなこと一言も言ってない! 違う方法もあるんじゃないかって言ってるの。じゃあなに、ユリーナは私と心中してもいいって言うわけ? 自分の生き死に他人に任せるなんて、リリィホワイトも落ちたものね」
もう完全に売り言葉に買い言葉で、挑発するように言ったアリエッタ。
「わたくしはあなたとなら、心中しても構わないと思っておりますわよ」
「ぇ──」
しかし全く予期しない言葉を返されたようで、アリエッタは呆気にとられたような声を上げた。
「あなたがやってダメなら諦めもつくというものですわ。いいえ、あなただからこそ賭けてもいいと思えたのです」
「きゅ、急になに言って――」
「ユウタ様も同じ気持ちのはずです。あなただからこそ禁呪の使用を提案したのです。あなたならできると。そしてわたくしも、この窮地を打開するにはそれしかないと思いましたの。いいえ、わたくしたち2人だけではありません。皆さんもそうですわよね?」
ここで、今までアリエッタとバチバチにやり合っていたユリーナが、仲間たちに話を振った。
「そうそう、アリエッタならできるって!」
いの一番にルナが明るく断言し、
「大丈夫、アリエッタなら絶対にやれるよ」
リューネが優しく応援し、
「アリエッタさんならやれます。ね、お姉さまもそう思いますよね」
「むずかしー話はキララよく分かんなーい!( 〃▽〃)」
「お・ね・え・さ・ま? 1週間デザート抜きにしますよ? いいんですか?」
「よく分からないけど、キララもそう思う!( >Д<;)」
クララとキララが同意する。
「と、いうことですわ。さて、これでもまだできないとおっしゃるのですか、アリエッタ・ローゼンベルク?」
仲間たちからアリエッタに寄せられる信頼の声。
「それは……だって……」
しかしそれでもアリエッタは決断できなかった。
今になって、あの暴走の一件をもう少しケアしておけばよかったと後悔する。
アリエッタの心に刻み込まれた失敗の記憶をほぐし、カラミティ・インフェルノの研究や練習を行って、自信をつけてもらうべきだったと痛感する。
くそ、本当に今さらだな。
今のアリエッタなら、コントロールできるはずなんだ。
無理だと思っていたらそもそも提案なんかしない。
なんとか、アリエッタの迷いを断ち切らないとだ。
だが、どうすればいい?
どうすればアリエッタの負の記憶を取り払うことができる?
「くそ、俺の方もそろそろ本気で維持限界だぞ……!」
俺がペンドラゴン・アヴァランシュを維持しながら、なんとかアリエッタの背中を押すための言葉を探そうとしていると――、
「はぁ、事ここに至ってまだ決断できないとは。興ざめですわねアリエッタ・ローゼンベルク。せっかくわたくしが、のろまなあなたの背中を優しく押してあげようとしましたのに、それでもなお決断できないとは。本当に使えない人ですわ。何でもできるエレナ会長は大違いですわね」
ここまでの熱っぽい言葉から一転、ユリーナが冷たい口調で呆れたように言った。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる