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第4章 ヒロインズ・バトル

第103話 魔竜顕現

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「そうさ、私は目を覚まさせてやらねばならないのだ! そのためならば! 私はこの身を世界に捧げてみせようじゃないか!」

「今どき、一人で姫騎士至上主義を叫んだところで世界は変わらねぇよ」
「変わるさ。行動を起こせば世界は変わる。私が変える!」

 目を見開いて己の歪んだ理想を高々と宣言した瞬間、ジラントの身体がドクンと波打った。
 いつの間にかその目は、まるで魔獣のように紅に染まっている。

「目が、紅い……?」

「そうさ、私は変える! たとえこの身が滅びようとも! この間違った世界を変えるのだ!」
「おまえ、一体なにを――」

「魔竜顕現」

 その言葉とともにジラントの身体から、膨大な闇の魔力が噴水のように噴き出した。
 勢いよく流れ落ちる滝が天地逆転したかのように、天に向かって吹きあがる闇色の魔力は、空高くまで上ると今度は一転、ドーム状の覆いとなって周囲を覆っていく。

「これは……結界か?」

 姫騎士デュエルで観客席とデュエル・スタジアムの間に展開する防御結界に似たような、中と外を遮断する強い断絶の魔力を、神騎士LV99の俺の感覚が鋭敏に感じ取る。

「わたしは……かえる……せかいを……かえる……いのちにかえても……せかいを……かえ――グルギャァァァァァッッ!」

 そして耳をつんざく咆哮が聞こえた時、天に向かって溢れ出る闇の魔力の根元に、

「な、ドラゴンだと!?」
 一体のドラゴンがいた。

「グルルルルルルルルルル……」

 俺の視線の先。
 地獄の底から這い出てくるような低い唸り声を上げているのは、漆黒の鱗に身を包んだ、2階建ての家くらいもある巨大なドラゴンだ。
 しかしそこにジラントの姿はない。

 あるべきものが存在せず、その代わりにありえない存在がいる。
 その答えは――。

「まさかあいつ、自らを生贄にして魔竜を召喚したってのかよ!?」

 召喚魔法は通常、自らの魔力を消費して疑似的な魔獣を作り出す。
 そしてその魔力量が大きければ大きいほど、魔獣の強さも上がる。

 しかし5体の大型魔獣を召喚したジラントには、魔力はそう多く残っていなかった。
 だから俺は既にたいした魔獣召喚は行えないと踏んでいた。

 しかしジラントは自らを生贄に――つまり姫騎士という魔力の塊を代償にして、最強の魔獣と称されるドラゴンを召喚したのだ!

「そこまで、するのかよ……そこまでして、お前は世界を変えたかったのかよ……そんなにこの世界が憎かったのかよ……」

 わずかに同情はするものの。

「だけどやっぱり俺は、ジラントの言い分を聞き入れることはできそうにないよ。前の世界と違って、この世界は俺に優しいんだ。何よりこの世界には、推しの子のアリエッタがいるからさ」

 俺の言葉が聞こえたからかどうかは知らないが、漆黒の竜が真紅の瞳を見開く。
 闇の魔力がどんどんと高まっていく。

 結界で閉じ込められているため、逃げることはできない。
 何の準備もせずにいきなりのドラゴン戦だが、やるしかない。

 と、そこへ俺の頼れる仲間たちが、魔獣を全て撃破し終えて集まってきた。
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