上 下
96 / 132
第4章 ヒロインズ・バトル

第94話 暴露系メイド姫騎士 キララ

しおりを挟む
「失礼ですわね。ブレイビア祭にわたくしが来てはいけないとおっしゃりたいのですか、アリエッタ・ローゼンベルク?」

 ユリーナが少しムッとしたように言い返す。

「そんなこと言ってないわよ。リリィホワイトは毎年、VIP席の中でも一番いい特別席を取っているでしょ。そっち行ってなさいって意味よ」

 おおっ、さすが名門リリィホワイトだ。
 VIP席の中でも一番いい特別席とか、姫騎士の中でも一番のお金持ちは伊達じゃないな。

「いえいえ、たまには庶民の視点からお祭りを楽しむのも一興かと思いまして。たまたま偶然、出てみたらユウタ様とばったり出会ってしまったというわけですわ。これもわたくしとユウタ様の、互いに引きつけ合う運命というものでしょうか」

 ユリーナがそれはもう素敵な笑みを浮かべながら、俺に視線を向ける。

「いやあの、さっきからナチュラルにスルーしてるけど、ユウタくんだけじゃなくてアタシやリューネもいるんだけどね……?」
 そんなユリーナに、ルナが思わずといった様子でつぶやいた。

 と、そこで、珍しく黙ったままだったキララがシュバっと右手を上げて話し始めた。

「あのねあのね! ユリーナ様はおにーさんとお祭りデートしたいんだって(*'ω'*) だからわざわざVIP席から出てきたんだよ!(^^♪」

「ちょ、キララ! いきなりなにを言っているのですか!」
 するとユリーナが慌てたようにキララを制止する。

「えっ?(。´・ω・) だって昨日の夜、ユリーナ様がお部屋でクララとお話してるのを聞いたよ?(*'ω'*) ねークララ、2人でお話してたよね?(*'ω'*)」

「さぁ、なんのことやら? 残念ながら記憶にありません。お姉さまの思い違いでは?」
「え?Σ(・ω・ノ)ノ! あれれ??('ω')」

 クララに笑顔で否定されて、キララが不思議そうな顔をしながら首を傾げる。

「きっと、お姉さまの勘違いでしょうね。お姉さまはそそっかしいですから」

「え~?(''Д'') だってだって、さっきだってキララがおにーさんをお祭りで見かけたって言ったら、2人とも『よくやった』って褒めてくれたでしょ?(*'▽')」

「お姉さま、少し静かにしていましょう。ユリーナ様とユウタ様のお話の時間を邪魔してはいけません」
「あ、そーだよね!(>_<) ごめんなさい、ユリーナ様!(>_<)」

 キララまったく悪気がなさそうに、てへぺろっと小さく舌を出した。

「わ、分かればよろしい」
 ユリーナはわずかに頬をひくつかせながらも、笑顔を崩さずに言った。

 真っ正直なキララの暴露情報。
 明らかにとぼけた態度のクララ。
 頬をひくつかせたユリーナ。

 つまりは「そういうこと」なんだろう。

 1年生タッグトーナメント以降、ユリーナは俺をユウタ様と呼んで露骨にアピールしてきているからな。
 お祭りを一緒に見たいと思っても不思議ではない。

「というわけですので、そこの庶民。ユウタ様の右腕をわたくしに譲りなさいな」
 ナチュラルに俺の右腕密着ポジションを譲らせようとするユリーナに、

「なんでアタシがユリーナに譲らないといけないのよ」
 ルナが俺の腕をギュッと強く抱きながら抗議の声を上げる。

「譲っていただければ200万お支払いいたしますわ」
「え、200万!? えっ、ええっ!?」

 しかし圧倒的なまでの資本主義の暴力に晒されてしまい、俺の右腕を抱くルナの手に、思わずと言ったようにさらにギュッと力が込められた。

「ユウタ様の右腕を抱く権利を譲っていただければ、200万お支払いいたします」
 ルナの反応を好機と見たのか、ユリーナが同じ言葉を繰り返す。

「に、200万……200万もあればブランドのコートも、ラグジュアリなアクセサリも、眺めるしかできなかったハイエンドなインテリアも、なんでも買えちゃう……ご、ごくり」

 のどを鳴らしたルナの身体が、さらにブルブルと震えはじめる。
 これは恐怖か?
 いいや歓喜だ。
 明らかにルナの心は揺れていた。
 それもイエスの方向へと揺れていた。

 前の100万から、今回さらに100万上乗せだもんな。
 俺がルナでもゴクリするよ。
 マジで金銭感覚が違い過ぎる。

「ルナ、あなたはそれでいいの?」
 そんなルナに、しかしアリエッタが子供に優しく教え諭すように言葉をかけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶
恋愛
うちの高校には聖女様と呼ばれる女性がいる。 名前は黒瀬詩織(くろせしおり) 容姿端麗、成績優秀、時間があればひとりで読書をしている孤高の文学少女。 そんな彼女に告白する男も少なくない。 しかし、そんな男共の告白は全て彼女にばっさりと切り捨てられていた。 高校生活の一年目が終わり。終業式の日に俺は半年間想いを寄せてきた彼女に告白した。 それは件の聖女様では無く、同じクラスの学級委員を共に行っていた藤崎朱里(ふじさきあかり)と言うバスケ部の明るい女の子。 男女問わず友達も多く、オタク趣味で陰キャ気味の俺にも優しくしてくれたことで、チョロイン宜しく惚れてしまった。 少しでも彼女にふさわしい男になろうと、半年前からバイトを始め、筋トレや早朝のランニングで身体を鍛えた。帰宅部だからと言って、だらしない身体では彼女に見向きもされない。 清潔感やオシャレにも気を配り、自分なりの男磨きを半年かけてやってきた。 告白に成功すれば薔薇色の春休み。 失敗すれば漆黒の春休み。 自分なりにやるだけのことはやってきたつもりだったが、成功するかは微妙だろうと思っていた。 たとえ振られても気持ちをスッキリさせよう。 それくらいの心持ちでいた。 返答に紆余曲折はあったものの、付き合うことになった俺と彼女。 こうして彼女持ちで始まった高校二年生。 甘々でイチャイチャな生活に胸を躍らせる俺。 だけど、まさかあんなことに巻き込まれるとは…… これは、愛と闇の(病みの)深い聖女様と、ちょっぴりヤキモチ妬きな俺の彼女が織り成す、修羅場ってるラブコメディ。

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

勇者に大切な人達を寝取られた結果、邪神が目覚めて人類が滅亡しました。

レオナール D
ファンタジー
大切な姉と妹、幼なじみが勇者の従者に選ばれた。その時から悪い予感はしていたのだ。 田舎の村に生まれ育った主人公には大切な女性達がいた。いつまでも一緒に暮らしていくのだと思っていた彼女らは、神託によって勇者の従者に選ばれて魔王討伐のために旅立っていった。 旅立っていった彼女達の無事を祈り続ける主人公だったが……魔王を倒して帰ってきた彼女達はすっかり変わっており、勇者に抱きついて媚びた笑みを浮かべていた。 青年が大切な人を勇者に奪われたとき、世界の破滅が幕を開く。 恐怖と狂気の怪物は絶望の底から生まれ落ちたのだった……!? ※カクヨムにも投稿しています。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...